皆さん、こんにちは。
御迷惑をおかけしていた「システムメンテナンス」も先週木曜日に終りました。
御協力ありがとうございました。
処理速度が10倍となったので、より快適な環境となりました。(私の能力が10倍となるわけではないので、件数制限は引き続き行います。念の為)
○シマウマとライオンと人間という「小話」
ある日、シマウマとライオンと人間が焚き火にあたっていました。
シマウマが言いました。
「僕はいつも、ライオンが襲ってこないかとビクビクしている。その点、ライオンのあんたには怖いものなどないのだろ?」
すると、ライオンは言いました。
「そんな事はないよ。ライフルを持って我々を追いかける人間が怖くて怖くて仕方がないんだ。ところで人間のあんたには怖いものなどないだろう?」
そこで人間は言いました。
「人間の言葉を話している君達の事が怖い」
日常診療において「これは困ったもんだ」と感じることは多々あります。
検診の場では(最終判定:「要精査」や「経過観察」などの指示は医師が行うにしても)検査技師さんが、所見を入力しています。
(以前にもコメントしましたが)乳腺に異常がないのに「腋窩に異常があると考えること自体ナンセンス」なのです。
それでも検査技師さんたちは(それが仕事だから仕方が無いとも言えますが)乳腺に異常が無いのに「(明らかに正常な)腋窩リンパ節の大きさを計測」しています。(全く無意味!)
(無意味ながら)「測定するだけなら無害」とも言えますが、たまに『腋窩リンパ節腫大』と所見を記載してくることがあります。(そうなると「無害」と看過することもできなくなります)
◎私にかぎらず(ある程度診療経験豊富な)乳腺外科医なら、「腋窩リンパ節の大きさは無意味」であることを(経験的に)知っています。
どういう事かというと…
腋窩リンパ節は、その「大きさ」も「数」も個人差が大きく、「△mm以上が異常である」という基準など全くないのです。
♯実際に正常なリンパ節は5mmでも5cm(大袈裟に行っているわけではありません)でもありうるのです。
重要なのは、その構造(リンパ門が存在するような正常構造を2層性と表現)なのです。
つまり「2層性が保たれたリンパ節」は(例えそれが5cmでも)我々から見れば「正常」の一言で終わり(全く気にしません)
しかし、「技師さん」にとっては(△mm以上を腫大とするような)基準が存在しているのか不明ですが(全くばかばかしい)明らかな正常リンパ節も リンパ節腫大などと表現してしまうのです。(もしもガイドラインがある?としたら、技師さんにではなく、寧ろそのガイドラインの方に罪があると言えます)
◎2層性
左の「正常リンパ節」は(右の2つとは異なり)『真中が白く抜けている』ことが解りますね?これを「2層性」といいます。
それに対し、右2つの「転移性リンパ節」は『真っ黒=2層性の消失』と表現します。
つい先日、検診エコーの結果票に記載されていた「両側腋窩リンパ節腫大」という所見
「どれどれ」とエコー像を見てみましたが…
「何だこりゃ?」全くの正常所見でした。(1%も異常はありません…)
これを「腋窩リンパ節腫大」と記載された検診結果を見て、検診受診者が心配し悩んだとしたら…
何とも可哀想で、見ていられません。
と、思っていたら、また「左腋窩リンパ節腫大」という「検診所見の記載」を見かけたので、その超音波を見てみましたが…
(やっぱり)どこから、どう見ても「正常リンパ節」です。(大変困ったものです。)
本当の「腋窩リンパ節腫大」を示します。
○腋窩リンパ節については、以上のように「2層性の消失」だけで判断できれば簡単でいいのですが…
実際は「2層性の消失」の前に、「皮質の肥厚」や「反応性腫大(アトピー性皮膚炎など)」などがあり判断困難なことがあります。
1.皮質の肥厚の場合は、(乳腺に腫瘍を認めなければ)殆ど無視していいし、(逆に)「乳腺に癌を疑う所見がある」場合には「腋窩リンパ節転移の疑い~可能性あり」と評価します。
2.反応性腫大の場合には(乳腺に腫瘍がなければ)これも殆ど無視ですが、アトピー性皮膚炎などの場合には「両側性(左右差なし)」なので容易に判断できます。
♯たとえば、右に(癌を疑う)腫瘍が存在していても「左右差のないリンパ節腫大」ならば、全く無視です。(皮膚から顔を出して、浸出液が出ているような、局所進行乳癌でないかぎり反対側腋窩リンパ節に転移するなどありえないのです)
☆次回は、更なる上級編として(技師さんのコメントとして)「腋窩リンパ節腫大があるから細胞針を推奨する」となっていた例について紹介します。