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乳癌手術のブログ 2020/10/17 早期発見促進委員会

昨日の掲示板

「早期発見促進委員会」

乳癌診療には、幾つかの「ステージ」があります。(乳癌の病期のことではなく)

1.乳癌かもしれないと思ったとき

検診で「要精査」となったり、しこりを「自覚」したりして最初に「ドキッ」としたときです。

2.乳癌が確定したとき

治療法を提示されたときなど、最初に「この治療法でいいのか?この病院でいいのか?」と自分自身の選択肢に気付く

3.術後補助療法や定期診察について疑問に思ったとき

手術も終わり、一安心したのも束の間「術後補助療法(ホルモン療法や抗がん剤)」自体の不安や、「再発」の不安

4.(残念にも)再発してしまったとき

QAでは、上記あらゆる場面の方からQがあります。

(当たり前と言えば、当たり前のことですが)このステージが進むにつれて皆さんの(乳癌への)知識は増していきます。

1の段階では(殆ど)知識のないままに(検診機関に)言われるままに、そこで検査してその結果に何の疑問もないままの方も多いと思います。

2となると、(多くの方が)慌てて情報を収集します。(この段階で乳プラに出会う人も少なくないと思います)

(2までは何の疑問もなかった方でも)手術や診療に不安(不満?)が生まれて、ここで慌てて情報収集を行う方も一定数いらっしゃいます。(3)

4となると、(標準治療がないだけに)「果たして、これでいいのか?」不安もあり情報収集がmaxとなり、ここで改めて乳プラに向き合う方もいらっしゃいます。(それまでに、乳プラ閲覧歴があった方も含め)

 

★やはり重要なのは、(まだまだ知識の少ない段階での)1で乳プラにたどり着く事。(そのために「早期発見促進委員会」と思っています)

 

昨日の「たつのおとしご」さんからの書き込み

たつのおとしご says:    2020年10月16日 at 06:38

レベル3郭清、知れば知るほど、怖くなってきてしまって、自分が、習熟していない医師から、この手術を受けることを想像すると、背筋が凍ります…呑気に全身麻酔で寝てる場合ではありません
この狭い視野のなか、腋窩静脈を損傷したらと思うと、目眩がします
血管外科を呼ばないといけない事態になるなら、この手術自体、どの施設でもできる手術ではなくなりますし、そもそも、術前のエコーで、レベル3 を評価できない施設で、安全に手術できるとも思えず…

 

本当に怖い話です。

その病院は「全く」レベルⅢ郭清(鎖骨下郭清)していない施設なのです。(その病院に勤務していた医師から「レベルⅢ郭清したのを見たこともない」と聞いていたので間違いありません)

それでいて、(今回は)術中に「レベルⅢのサンプリングをしよう」となったようです。

♯ サンプリングとは、「そこのリンパ節を綺麗に取りきる(郭清)」ではなく、「そこのリンパ節の一部を(検査のために)採取する」という意味です。

普段から、レベルⅢを郭清しない医師が(レベルⅢを)直視下の視野を作れるとは思えないので…

おそらく大胸筋及び小胸筋を無理やり奥へ押し込んで「何とか」レベルⅢリンパ節を、「無理やり」覗き込んで(一部)採取しようとしたのでしょう。(この辺りの詳細までは聞く事は能わず)

★ レベルⅢリンパ節の奥に隠れている(実際は膜一枚で接しています)青大将様(腋窩静脈)に孔が開いた!(のでしょう)

視野が(血液で)真っ赤になり、(その場の)全員が(青大将顔負けの)真っ青になったのは想像に難くありません。(もしも、自分が当事者なら心臓がバクバクだったと思います。幸いそんな経験はありませんが)

そんな状況では止血もできないので、(大学病院なので血管外科があったのが幸いでした)血管外科を呼んで(おそらく)腋窩静脈をクリッピングした上で縫合してもらったようです。

 

★★ (大)血管損傷

これは、外科医であれば(どんな領域でも)常に意識しています。

消化器外科の領域でも傍大動脈リンパ節の郭清などでは、大血管周囲の操作となります。

通常の開腹操作なら、直視下の視野なので出血したら「すぐに対処」できるので問題ありません。

ただ、これが鏡視下手術となると話は別。

一瞬にして視野は真っ赤となり止血不能です。(無論慌てて、開腹に切り替えますが「時間との闘い」で緊迫します)

研修医時代、(当時まだ「黎明期(れいめいき)」であった)鏡視下副腎腫瘍摘出の手術があり、そこで大量出血して病院中の職員から血液を集めて一命をとりとめたという事がありました。(大学から「偉い」先生が来て執刀した手術でした)

「視野が狭いことは、本当に怖い」25年以上も前の経験ですが、その恐怖の記憶は衰えないのです。

 

乳腺の手術

通常のレベル2までの郭清であれば、(視野もいいので)安心感があります。

これが、レベル3となると「たちまち」視野が狭く危険を伴うのです。

普段は「術前抗がん剤+術後の放射線」でレベルⅢ郭清を避けている医師も、(例えば)照射後の再発(照射は同部位に2回はかけられません)などがあった際には、「避けてはいられない」こともあると思います。

ただ、このQAにもしばしば出てくるように「手術は不能だから(放射線もできないし)抗がん剤します」と、どこまでも「逃げる」乳腺外科医が殆ど。

こんな実状では乳癌学会も「レベル3まで転移を疑う場合はレベル3まで郭清すべき」などとガイドラインに推奨できないのです。

指導医の世代から(レベル3郭清の技術が失われてしまうと)彼らに指導される「若き医師達」に、その技術が伝承されることはありません。

(乳管造影のように)レベル3郭清は「失われた技術」となり、それで不利益を被る患者さんも一定数いらっしゃいます。

〇 これが「一定数」ではなく「多く」であったら大問題となるのでしょうが…

私の役割は「腋窩鎖骨下再発でも手術はできるんですよ」と、この乳プラにたどり着いてもらうように努力すること。