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今週のコラム 476回目 成功体験 手術⇒遠隔転移への挑戦

今日は、いきなり本文です。

このあと動画ライブ配信も(10時から)あるし、2025乳癌学会の抄録締め切りもあるし…

と、少々忙しいので早速本題です。

 

○ (初発時に)遠隔転移を伴う乳癌

 

初診時に

胸骨転移を伴うT4乳癌

 

 

 

リンパ節転移所見+

 

 

 

この症例は、7年以上前なので(私が江戸川赴任から約3年)比較的早期の症例と言えます。

♯このころは、まだ遠隔転移を伴う乳癌でも根治を狙える症例があることを実感として持ってはいなかったと思います。

ただ…

前医では『何をやっても仕方がないから、(luminal typeだから)ホルモン療法しかしない』と、(絶望にしか聞こえない)宣言をされて当院を受診しています。

♯この「何をやっても仕方がない」と投げ出された背景には「骨転移がある」というだけではなく、「皮膚浸潤をした(局所も)進行乳癌」だからかもしれません。

 

その当時、私が考えたのは(「根治が狙えるかもしれない」というよりも)以下のことでした。

1.乳癌は「取れる内に取ってしまわないと、(薬物療法が効かなくなってしまった時に)手術不能となり、「その腐臭や出血でQOLが大きく損なわれる」

cT4とはいえ、(現時点で)手術可能なのだから(期を逃さずに)手術すべき

 

2.この程度の骨転移ならば、bevacizumab/paclitaxelがかなりの奏効が期待できるのでは?

 

そして手術施行(先行) pT4b(skin invasion+), pN3(11/14)

♯この際に「きちんと」鎖骨下までリンパ節を取ったことが後々、意味があったと今では思っています。

術前画像の予想を超えて10個以上の転移が存在していました。

手術を「単にQOL目的」と考えると、「しばしば」郭清は適当(目に見えるものだけでいい)=どうせ再発するのだから

みたいな「一見正しそうだけど、実際には自分が楽をするため」の考え方が蔓延しています。(それに対して反論すると)『そもそも(遠隔転移を伴う)この手術に鎖骨下郭清まで行うことにエビデンスがあるのか?』と、訳知り顔で言われたりします。

 

この方は術後の抗癌剤も地元の病院(「ホルモン療法しかしない」と言われた病院)で断られたため、

bevacizumab/paclitaxel 3cycleを当院で通い切りました!

結構遠方で飛行機です。(これだけで「9往復」です)

 

皆さん、「えー、飛行機に乗ってまで!」って思いますか?

 

 

bevacizumab/paclitaxe後のPET

 

 

 

その後はホルモン療法のみ、実に7年以上 cCR continue

 

◎前医は、これが予見できただろうか?

「もしも」この患者さんが(そのまま)前医でホルモン療法だけやっていたら…

♯前医だけではなく遠隔転移の治療として

「楽な治療(ホルモン療法)」⇒(病状が悪化したら)⇒「治療の変更(この場合にはホルモン療法の変更、もしくはCDK4/6 inhibitorの追加)」⇒(更に悪くなったら)「抗癌剤しかありませんが、(もしも嫌なら)緩和治療にしますか?」

が定番となっています。

あくまでも「病状悪化」を前提とした治療。いわば「最初から諦めた治療」ということです。

私のような成功体験が無い限り、「何をやっても無駄、苦しめるだけで意味が無い」永遠にそこから抜け出せないのです。