暑い土曜日、サウナスーツでランニング
糖質ゼロが喉に染み渡る!
セブンの「コムタンクッパ」と「クロワッサンサンド」
○ 本文
きっかけは、12134 『トリプルネガティブ 術前化学療法の効果について』
気になった点
1.手術先行にできないか交渉しましたが(担当医は術前抗がん剤を譲らない)
2.鎖骨下リンパ節は手術できない(太い血管が近くなので危ないのでできない)
3.腋窩リンパ節、2箇所(針生検でclassⅢa)
⇒(メールでは針生検となっていますが)classなので細胞診の記載ミスでしょう。
転移リンパ節を細胞診してclassⅢしか出せない様では…(手術も、「その程度が知れる」ように思います)
◎そして、質問者の最大の疑問
鎖骨下リンパ節郭清はそんなに難しいリスクの高い手術なのでしょうか?
まず、根本にある「何故、鎖骨下郭清は難しい(できる医師が殆どいない)のか?」
これについて詳説を試みます。
(以下)
何故、鎖骨下郭清が出来ない医師ばかりなのか?
これには明確な理由があります。
本来、手術手技の習得には2 stepが必要です。
step 1. (指導医の)助手として「指導医の手術を見る」 つまり「見て」手順を覚える。
step 2. (指導医の厳重な監視のもと つまり指導医が「助手」として前立ちし、同じ視野を共有し必要に応じて(危ない操作と判断したら)口で言うよりも先に「手を出す」
このstep 2が、(実際の現場の)手術手技の継承と言えます。
例えるなら「車の教習所」が似ています。
一緒の車の(助手席に乗り込み)運転が危ない(事故になりそう)と思ったら(口と同時に?)勝手にブレーキ踏みます。
まさに、指導医は術者が致命的なミスを犯す前のタイミングで制止をかけなくてはいけないわけです。
外科医として1人前になるステップとして必ず通ってきた道です。
胃切除であろうと大腸、乳房切除、全て「指導医が(術者と)同じ視野を得る」ことにより、(致命的な事故が起こる前に)ブレーキを踏めるのです。(教習所の教官のように)
ただ、このstep 2ができない手技があります。
それが「鎖骨下(レベル3リンパ節)郭清」なのです。
最大の要因は、「指導医が術者と視野を共有できない」ことにあります。
何故か? それは「狭い」からです。
教習所の教官も(もしも自分の側のフロントガラスにブラインドがかかっていたら)危ない場合にブレーキをかけれずに大事故となることでしょう。
そんな(自分のフロントガラスにブラインドがかかっている)教習者に乗り込む教官はいないでしょう。(命がいくつあっても足りない!)
鎖骨下郭清とはまさに、これ(視野が狭いので術者に見えていても助手には見えない)なのです。
しかも、厄介なことにそこは「大血管(腋窩ー鎖骨下静脈」の傍」なのです。
★皆さんが、その指導医の気持ちになって想像してみてください。
(目の前の)未熟な術者が(自分の見えないところで)ぎこちない動きをしている。
「あっ!」その術者の過ちを止める間もなく大血管から大量の出血が…
↑
これが「指導医も同じ視野」での手術であれば…
(指導医から見て)「これは、(このままいくと)大血管を損傷するぞ!」というタイミングを見て、(無論そうなる前に)さっと『そこは危ないぞ、駄目駄目。まだまだ危なっかしいから、ここは私が行うから(次のために)よく見ておいてね』と、術者交代(これは指導医と若い医師とではよくあるケースです)
お解りでしょうか?
指導医と(学ぶ)術者とが同じ視野を取れないことが「鎖骨下郭清の伝承を妨げた」のです。
かくいう私も上記①のステップは(幸いなことに)指導医の上手な手術を見ることはできましたが、その当時私は鎖骨下郭清をさせてもらえませんでした。(つまり②はしていません)
その後経験を積み、11年前、江戸川病院に赴任してから(かつての指導医の手技を思い出しながら)鎖骨下郭清を始めたのです。(最初は緊張が極度だったのは言うまでもありません。)
ただし、私にとって幸いなことに(この乳がんプラザを介して)全国から「鎖骨下郭清はできない」と言われた患者さん達を(「手術相談メール」やセカンドオピニオンを通して)鎖骨下郭清することとなったので、(間違いなく、鎖骨下郭清件数は日本一と思います)私にとって現在は「極めて簡単な手術」となりました。
♯そういう私でさえ、その手技を現在、助手に来ている「大学病院からの派遣医師」にさせているかというと、(これだけ手技に自信のある私でさえ)全くさせていません。
私が期待しているのは、助手で来ている大学病院の医師達が(大学では一度も見たことができない)「私の鎖骨下郭清を見る(これは江戸川病院でしかできない最大のチャンスと言えます」
そして、いつの日か彼らが(それぞれの)施設のトップとなった際に「私の手技を思い出しながら」トライして欲しい。
彼ら以外に、鎖骨下郭清を「見ることもできない」乳腺外科医に 「やることを期待」など到底できないのだから。
長ーい前置きとなりましたが、ここからは「動画生配信の症例」となります。
ある症例
初診時の画像所見
レベル1 (大胸筋より外)結構大きい。
同症例のレベル2(小胸筋の裏)
転移所見です。
本来ここのリンパ節は画像では殆ど見えない
レベル3にも転移があります。
CTでdetectable=metastasis
郭清手技
レベル1郭清
レベル2郭清
小胸筋の裏を郭清するのだから、当然
(大胸筋だけでなく)小胸筋も同意に挙上します。
通常行われている「腋窩郭清」はこの郭清のことをいいます。
この図でしめしたように、実際にはレベル2の奥は取れません。
私から言わせると「なんちゃって郭清」ですね。
鎖骨下(レベル3)郭清
レベル3を郭清するには
♯ 正確にはレベル2の奥:つまり3に近い側も、これでないと郭清できません
このように、「小胸筋を(テーピングして)手前に引っ張り出す」ことが必要となります。
小胸筋を引っ張り出すことで、(小胸筋の奥にあり、小胸筋が邪魔で見えなかった)レベル3が視野に入ってくるのです。
小胸筋にテーピングをかけ「引っ張り出すには」この大血管から数本でている枝を処理しなくてはいけません。
↑
処理せずに無理やり引っ張ったら…
大血管からの枝が「引きちぎれて…」(想像したくありません)
★この大血管からの処理(特に小胸筋の奥)が「狭い」視野で、かつ「遠い(奥)」なので、この鎖骨下郭清の壁となっているのです。
ところで、さっきの患者さんはどうなったか?
術前抗がん剤され、「一見、鎖骨下リンパ節は(画像上)消失」し(そもそも、その医師には最初から鎖骨下郭清が出来なかったと思うけど)腋窩郭清しています。
↑
上記図「レベル2郭清」で示したように、あくまでも「大胸筋と小胸筋を引っ張り挙げて、見える範囲のリンパ節」だけを郭清したのです。
ところが…
鎖骨下(レベル3)再発です。
問題提起
その医師が(なんちゃって)腋窩郭清ではなく、鎖骨下郭清できていたら、こんなこと(鎖骨下再発)にはならなかった筈です。
手術手技に問題があることが原因なのに、それを「鎖骨窩再発は手術できないから遠隔再発と同じ」といい、挙句の果てに「だから余命は(経験上)3年くらいだ」などと担当医から言われたとしたら(実話)
それを私が看過するわけにはいかないのです。
この強い衝動が、(じきに始まる)本日の「動画生配信の原動力」と言えます。