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今週のコラム 258回目 「出血の無い手術」について

今朝、起きて外へ出て『雨、降ってない!』

(夜が明けていないので)晴れているのか?は解りませんでしたが、「濡れないランニング」とても幸福でした。

ランナーにとって、雨は大敵。日曜日のオープニングとしてはテンション上がりました。

と、そのテンションで一気に書き上げた「渾身の」コラム(そこまでか??)

そのきっかけは「掲示板」での

北のフネ says: 2020年10月6日 at 14:24 」 腋窩再発癒着の画像を見て感じたことは、『出血が無い!』ということでした

 

『手術は、出血に始まり出血に終わる』

手術の神様が(かつて)そう言ったとか言わなかったとか…

手術時間が長くなる元凶は「出血」だし、(術後の)患者さんの状態を決めるのも「出血」なのです。

勿論、術後ドレーンが入るのも(リンパ漏もありますが)理由は、「出血(を外で出すため)」なのです。

 

乳腺は、(このように)大胸筋の上に乗っています。

 

 

 

乳腺は横から見ると、このように大胸筋の上に乗っていて、

更に、皮膚が被さっています。

 

全ての組織は血管から血流を受けています。

 

 

 

皮膚への血流

大きな血管から枝が伸びて皮膚に血液が供給されます。

★ 皮膚を切ると出血するのは「このため」です。(無ければ腐ります)

 

乳腺への血流

皮膚だけでなく、(当然)乳腺へも血管が枝を出します。

 

裏側(大胸筋を貫いて)からも細い血管が乳腺に血流をもたらします。

 

 

乳腺は「皮膚の血管からも」血流を受けています。

★ 乳腺は「血流豊富な」組織(乳腺は「臓器」とは呼びません)なのです。

 

つまり、乳腺を剥がす(摘出する)ということは、これらの血管を切離することです。

★例えば、(血管を無視して)力任せに「むしり取れば」これらの血管から大量出血となります。

 

〇 それでは実際は、どうなのか?

 

解りやすくするために…

この部分を拡大しましょう。

 

 

血管から、乳腺への枝(細い血管)

更に拡大しましょう。

 

 

 

実際の枝

(太い)血管からの枝は途中で(更に)枝分かれして

複数の細い血管となり乳腺に入っていきます。

 

実際の血管は「膜」に包まれて、更に(そこに)脂肪がついていて

 

 

 

更に、このように「膜」は縮んでいます。

★ 血管も「くしゃっ」としているのです。

 

 

 

 

ここからが「腕の」見せ処です。

上手い外科医は、左手で上手にこの膜を引っ張り

★ 但し「引っ張り加減が強すぎると」細い枝が千切れて出血するので「加減」が重要

 

 

このように切っていきます。

ここまでは(血管が無いので)電気メスでスムーズに切れます。

 

 

 

 

ここ(青矢印)は血管なので(電気メスではなく)確実に糸で結紮します。

 

 

 

 

血管を過ぎたら、また電気メスで切ります。

このように(血管の無いところは)電気メスで「素早く」そして

血管は「確実に」結紮します。

★ これが「スピーディー」かつ「確実(出血が無い)」コツなのです。

 

〇 左手が上手く使えない「下手な」外科医は

 

 

 

この膜を「きれいに」張ることができずに

切っていきます。

血管の無いところはいいのですが…

 

このような血管の部分では

(膜が伸びていないために)「ごちゃっと」した血管群に

「まともに」電気メスで切り込んで「出血」してしまうのです。

 

 

★ これでは、(術中)いたる場面で「出血」しては「止血」する操作の繰り返しで手術は「長時間」となり、「出血量」も多くなり、(最終的に)止血しきれない部分からの出血の貯留を外へ出すために「ドレーンのお世話」になるのです。

 

〇 切り取り線

私が東〇公〇病院の平〇医師から学んだ印象的な言葉に「切り取り線」があります。

『切り取り線を切ればいいんだよ』

切り取り線は最初からあるわけではありません。このように常に左手に緊張感を持って「膜を(細かい血管が千切れない程度に)引っ張ることで、(外科医自身が)作る「line」なのです。

そう、この「line」が「切り取り腺」なのです。