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ホルモン療法と妊孕性温存

[管理番号:6753]
性別:女性
年齢:36歳
病名:両側乳がん
症状:

田澤先生、初めて質問させていただきます。

治療方針を決めなくてはならず、その期限が迫っているため、同様の問い合わせも多いかと思いますが、
先生のご意見を伺いたく宜しくお願い申し上げます。

35歳で両側乳がんの診断を受けました。
MRIなどの検査で石灰化の広がりが広範囲の為、
2018年6月に皮下乳腺全摘出手術を受け、センチネルリンパ節検査、両胸にエキスパンダーが入っています。

独身ですが、将来妊娠、出産を希望しています。

病理検査が出る前、36歳1カ月で卵子凍結(6個)をしました。
(アロマターゼ阻害剤を使用しました)(pill-レトロゾールhMG-antago recFSH150+cetrotide-hCG500-採卵)
病理検査結果は以下の通りです。

右胸
浸潤癌 一般型 乳頭腺管癌
リンパ節転移なし 0/3
ER (+) PgR(+)
Her2 2+ 陰性
脈管浸襲 なし
浸潤径0.8センチ
核異型度 1

左胸
非浸潤癌
リンパ節転移なし 0/5
ER (+) PgR(+)
Her2 2+ 追加検査未実施
脈管浸襲 なし
浸潤径0センチ
核異型度 1
局所療法、薬物療法 ともに未治療予定

右側浸潤癌であったため、タモキシフェン5年間の服用を勧められています。

①将来妊娠、出産を希望していますが、年齢から五年後の妊娠力低下を懸念しています。

 未治療を選んだ場合のリスクは高いでしょうか?

②ホルモン療法の休薬期間を設けるポジティブ試験は有効でしょうか?
その際に、五年間治療を受けた時との再発、転移リスク低減率は変わってくるのでしょうか?また、最大で二年間の休薬期に流産などで出産が叶わなかった場合、試験から外れて妊活期間を延長することは可能でしょうか?

③採卵して6個という数に不安があります。
受精卵より卵子は不安定である、しかし現時点では卵子のみから質を調べて成功率を測ることは不可能と説明されました。
再度採卵
手術をする必要があるでしょうか?ホルモン陽性タイプの乳がんなので、何度も排卵促進することに不安があります。
(婦人科担当医からは再採卵は勧めないと言われてしまいました。)

 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。

「右側浸潤癌であったため、タモキシフェン5年間の服用を勧められています。」
→妊娠出産後でいいでしょう。(8mmの浸潤癌なのだから過剰な心配は止めましょう)

「①将来妊娠、出産を希望していますが、年齢から五年後の妊娠力低下を懸念」
「未治療を選んだ場合のリスクは高いでしょうか? 」

→8mmの浸潤癌なのだからリスクはかなり低い。

 当然、「妊娠出産授乳」→(その後)タモキシフェン5年とすればいいのです。

「試験から外れて妊活期間を延長することは可能でしょうか? 」
→そもそも…

 妊娠出産はリスクを高めないのだから、妊娠出産を先行させてもいいのです。

「再度採卵手術をする必要があるでしょうか?」
→妊娠の成功率を(産婦人科医でない)私がコメントする立場ではありません。

「ホルモン陽性タイプの乳がんなので、何度も排卵促進することに不安」
→私は構わないと思います。(不妊治療がリスクを高めるというエビデンスはないのです)

 (参考に)
 乳癌診療ガイドライン 疫学診断編 2018年版のp83に「以上のことから、
不妊治療における排卵誘発は乳癌発症リスクを増加させないと考えられる」と記載があります。