[管理番号:7395]
性別:女性
年齢:41歳
病名:右浸潤性乳管癌 硬癌
症状:
はじめまして。
よろしくお願いいたします。
健康診断で要検査になり、3月に医療機関で針生検を受けた病理結果です。
3時5mm
右乳房からのCNB3本
どのコアにも浸潤性に増殖する乳管癌を認めます。
神経周囲浸潤も認めます。
Nuclear atypia:2
Mitotic counto:1(3/10HPF)
Nuclear grado:1(2+1-3)
ER Allred score 5+3=8
PgR Allred score 5+3=8
HER-2 score 1+
ki-67 16.9%
医師からはステージ1、ルミナールA、部分切除で大丈夫。
術後は放射線25回照射、ホルモン療法と説明がありました。
4月の術後の病理結果です。
右乳癌(3時5mm、US上乳管拡張あり、?T1bN0M0、stage1)に対して乳房部分切除+センチネルリンパ生検施行
最大浸潤径6×4mm(non-invasive乳管内進展巣:55×40mm)
pT1b,f+,Ly0,v0,duct spreading+,margin positive.pStageⅠA
検体78×65×15mm
最大6mmまでの浸潤性乳管癌の所見を5か所に認める。
同部では核腫大を示す異形細胞が索状胞巣を形成し増生している。
間質の線維化を認める。
scirrhous typeの所見。
脂肪識への浸潤あり。
脈管侵襲なし。
浸潤部周囲の乳管内にcomedo壊死を伴う〇状胞巣の増殖や低乳頭状を広範に認め連続している。
乳房内病変は切断面に露出しており断端陽性と考える(#3,5,13,14)
Histlogical grede Ⅰ
tubule formation score2
nuclear atypia score2
mitotic counts score1
センチネルリンパ説に転移なし SLN(OSNA,0/2),LevelⅠ(0/1)
●断端陽性となり、腫瘍が5個所もありとてもショックいます。
医師から
は、放射線を5回追加するか、追加切除するか聞かれました。
取り残しは不安なので、追加切除を希望しました。
初回手術時に結構な範囲を切除しているので、今回追加切除をすれば、残せる部分が少ないと言うことで、全摘(単純乳房切除)となりました。
①術前検査でMRI検査を行いませんでした。
6mmの浸潤癌以外に、4個所非浸潤癌がありましが、MRI検査を施行していれば、浸潤の広範が判明し、最初から全摘を受けていた可能性はありますか。
②先生なら放射線の追加または追加切除のどちらをすすめますか。
③来週に全摘手術予定ですか、全摘の場合でも断端陽性の可能性はありますか。
④断端陽性になる確率は1割程度と他のサイトでみました。
めずらしいことなのですか。
⑤腫瘍が複数あり、とても悪そうな気がしています。
腫瘍の数に関係なく、ステージ1、ルミナールAの診断で良いのですか。
また、術後の病理ではKi67の数値は不明ですが、針生検時のKi67値の16.9%はそのまま変わりはないのでしょうか。
医師は16.9%は心配ないから、ルミナールAで全摘後は放射線療法なしで、タモキシフェンを勧められました。
先生でしたら、どのような治療を勧めますか。
●子供がまだ小さく、遠隔転移は避けたいと思っています。
今のうちに出来る治療は受けたいと思っています。
ルミナールAの中に予後不良が2割いると他のサイトでみました。
その原
因はFbxo22タンパクの発現が低い患者だと書かれていまし(2018,11)
⑥bxo22タンパクの発現を調べるにはオンコタイプDXなのでしょうか。
自分はルミナールAではなくでBなのではないか,化学療法を受けなくてもよいのか,ルミナールAだとしても、タモキシフェンが効果が得られないのではないか,と不安です。
●初回の手術の時は前向になれたのに、再手術となり振り出しに戻ったような感じで、いろいろと不安や疑問がでてしまいました。
お忙しいことろも申し訳ございませんが、どうかご教示お願いいたします。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
全摘となった原因は「浸潤が複数」ということではなく「非浸潤癌の拡がりが(予想
以上に)広かった」ということのようです。
「6mmの浸潤癌以外に、4個所非浸潤癌があり」
→勘違いされているようです。
55mmの非浸潤癌の拡がりの中に「5カ所」の(多発)浸潤があったという意味です。
イメージとしては…
(昔懐かしい)団子三兄弟ならぬ「団子五兄弟」のようなものです。(団子の櫛の部分が非浸潤癌で、ところどころに団子のように乳管内から浸潤している)
「MRI検査を施行していれば、浸潤の広範が判明」
→勘違いですね。
浸潤が広範ではなく、「非浸潤癌(櫛の部分=乳管内の拡がり)が広かった」ということです。
「最初から全摘を受けていた可能性はありますか。」
→MRIでは「非浸潤癌の拡がりも捉えられた」可能性はあります。(ただし、しばしばMRIで非浸潤癌の拡がりが捉えられないことがあります=所詮、顕微鏡的な拡がりだから限界はあるのです)
「②先生なら放射線の追加または追加切除のどちらをすすめますか。」
→複数個所で断端陽性(「#3,5,13,14」という記載より)のようなので追加切除が安全のように思います。
「③来週に全摘手術予定ですか、全摘の場合でも断端陽性の可能性はありますか。」
→乳腺に切り込まなければ、それはありえません。(非浸潤癌は乳腺内に留まっているので) 『今週のコラム 86回目 このようにすれば、全摘で深部側断端が陽性となることはないのです』を参照してください。
「④断端陽性になる確率は1割程度と他のサイトでみました。めずらしいことなのですか。」
→施設によって違うと思いますが…
それ以下でないと「安心して温存」は勧められないと思います。
「⑤腫瘍が複数あり、とても悪そうな気」
→100%無関係
「腫瘍の数に関係なく、ステージ1」
→勿論!
「最大浸潤径は足し算ではない」のです。
「ルミナールAの診断で良いのですか。」
→そもそも…
ステージとサブタイプは100%無関係
「また、術後の病理ではKi67の数値は不明ですが、針生検時のKi67値の16.9%はそのまま変わりはないのでしょうか。」
→「完全に一致する」ことは、まずないでしょう。(確率的に)
Ki67は(針生検ではなく)病変全体で見た方がいいと思いますが…(針生検が病変全体を代表しているとは限らないから)
実際に「針生検でしかKi67を測定しない施設」もあります。
★逆に、当院のように「針生検ではKi67を測定しない」施設もあります。(両方で測定する施設もあります。 これは保険上、どうかな?)
「先生でしたら、どのような治療を勧めますか。」
→手術標本で(Ki67が)その値なら、全く(主治医と)同意見です。
「⑥bxo22タンパクの発現を調べるにはオンコタイプDXなのでしょうか。」
→違います。(全くアプローチが異なります)
「自分はルミナールAではなくでBなのではないか,化学療法を受けなくてもよいのか,ルミナールAだとしても、タモキシフェンが効果が得られないのではないか,と不安」
→本当に不安なら・
OncotypeDXを受けましょう(現時点で最もエビデンスのある検査です)
質問者様から 【質問2 】
全摘後の断端陽性?
性別:女性
年齢:41歳
病名:浸潤性乳管癌(右)
症状:部分切除後の全摘出
田澤先生
前回の質問ではありがとうございました。
再度よろしくお願いいたします。
初回手術時、断端陽性のため、その後、乳房全摘出の手術を終えその病理の結果が出ました。
組織学的には手術瘢痕部では繊維化と異物型多核巨細胞浸潤を認める。
2×2mmの範囲に浸潤性乳管癌の所見を認める(#15)
核腫大を示す異型細胞が索状胞巣を形成し増生している。
scirrhous typeの像。
脂肪識に浸潤している。
その周囲の乳管に篩状
に腫瘍細胞の増殖を認める。
#6,10,23では乳管内進展が見られるが、
外科的断端から0.5mm~1.5mmの部位に腫瘍が見られますので、ご留意ください。
病変は繊維性瘢痕に接近し、既往と類似の組織像を示しており、遺残として矛盾のない所見。
切除断面は断端陰性。
Histlogical grede Ⅰ
tubule formation score2
nuclear atypia score2
mitotic counts score1
●初回手術時には最大浸潤6mmの腫瘍の他に4個所浸潤が見つかり(大きさは不明)、今回手術でも2mmの腫瘍がみつかりました。
全摘を選択して良かったと思っています。
ただ、病理後の結果はまた不安な結果ばかりです。
①手術瘢痕部では繊維化と異物型多核巨細胞浸潤とありますが、どんな細胞ですか?前回の断端露出によってこのような細胞が出ててしまったのかと思いましたが、主治医は手術の瘢痕部にはみんなある、今回切り取ったから大丈夫と言っています。
瘢痕部にはみんなにこの細胞があるのですか?命を脅かす細胞ではないのですか?
②2mmの腫瘍がありましたが、この大きさはエコーには写らないのですか?MRIを撮影していれば確認出来たのでしょうか。
MRI撮影で拡がりを確認していないことが今だに納得いきません。
主治医はエコーでもMRIでも2mmの大きさは難しとのことでした。
でしたら、乳癌の腫瘍は何mmから発見することが出来るのですか。
③最大浸潤径6mmの腫瘍以外の5つの腫瘍はki67やER値など測っていないようですが、他の腫瘍は測らなくても良いのでしょうか。
④外科的断端から0.5mm~1.5mmの部位に腫瘍が見られますので、ご留意ください。
とあります。
今回一番心配している部分です。
全摘をしたのに、腫瘍から0.5mmしか距離がないなんて。
初回の部分切除の際は前日にエコーをしながらマーキングをしましたが、2回目の全摘出の際はエコーはせずに主治医が病室でマーキングをしました。
こんな結果になり、どうしてこんな腫瘍に接近しているのか、全摘なのに再発が怖いです。
主治医に乳腺からもう少し離して切除するのではないですか。
再発の可能性は。
再発の場合、乳房はないから何再発か。
皮膚転移になるのか。
再手術の必要性はあるのか聞きました。
離しては切るんだけど・・・、乳腺の足が伸びていたりすることもあるし、再発の可能性はほぼないと思う。
乳腺もほぼ取ったし、何も心配するとはない。
放射線もやらないし、再手術もしない。
この後はタモキシフェンとリュープリンと言われました。
この場合5mm以内なので断端陽性ではないのでしょうか。
.6mm内側を切除していたら、また断端露出だったのですか。
再発する可能性はどうでしょうか。
再手術はしなくて良いのでしょうか。
全摘は乳腺をすべて取りきるのではないのですか。
何をご留意ください、なのでしょうか。
⑤悪性度は高くはないと主治医から言われています。
なのに6か所に腫瘍があり、どのような性質の癌なのでしょうか。
とても心配です。
⑦リュープリンは閉経前と悪性度によって必要になる。
次回の診察までにどうするか考えてきてと、今回はタモキシフェンを処方されました。
35歳以上なので必要はなくて良いでしょうか。
初回手術時の6mmの腫瘍に対してのKi67値は現在測定依頼中です。
2度手術をし不安が強く、病理の結果で更に不安になり、もやもやしたままタモキシフェンを飲むことが悲しいです。
この場でこうして先生にお伺いできることが唯一の救いです。
お忙しいことろも申し訳ございませんが、どうかご教示お願いいたします。
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
「①手術瘢痕部では繊維化と異物型多核巨細胞浸潤とありますが、どんな細胞ですか?」
→手術の瘢痕部は肉芽となりますが、それを構成する細胞でです。
100%普通のことです。
「②2mmの腫瘍がありましたが、この大きさはエコーには写らないのですか?MRIを撮影していれば確認出来たのでしょうか。」
→そもそも、この2mmは病変の中心ではなく、乳管内に広がった顕微鏡的な拡がりの中で浸潤を起こしていたと想像されます。
つまり、画像で捉えることのできない「顕微鏡的な浸潤」と解釈できます。
「③最大浸潤径6mmの腫瘍以外の5つの腫瘍はki67やER値など測っていないようですが、他の腫瘍は測らなくても良いのでしょうか。」
→大きい腫瘍が2か所なら(しかも、全く別部位なら)それぞれを測定することもありますが、
浸潤径も小さいので1か所(最大径)で十分です。
「④外科的断端から0.5mm~1.5mmの部位に腫瘍が見られます」「この場合5mm以内なので断端陽性ではないのでしょうか。」
→それは「温存術」の場合の基準です。
全摘の場合は取りきれていればいいのです。
「6か所に腫瘍があり、どのような性質の癌なのでしょうか。」
→冷静になりましょう。
6カ所の浸潤とは、たんに乳管内を拡がるなかで、(そのところどころで)複数個所、浸潤を起こしたというだけの話です。
悪性度とは、無関係です。
「35歳以上なので必要はなくて良いでしょうか。」
→不要です。
質問者様から 【質問3 】
今週のコラム193回目について
性別:女性
年齢:41歳
病名:右浸潤性乳管癌 硬癌
症状:
田澤先生
前回の質問ではありがとうございました。
再度よろしくお願いいたします。
前回の質問で
「外科的断端から0.5mm~1.5mmの部位に…」
全摘の場合は取り切れていれば良いとのお答えでしたが、今後局所再発はなく安心して良いと思ってよろしいでしょうか?
また、「今週のコラム193回目」の内容で教えてください。
「今週のコラム 193回目 順番としてはEC x 4 → DTX x 4 → PMRT となります」
注41) FFですが、私の初回手術時の病理の結果に『間質の線維化を認める』、2回目の手術の病理結果にも『手術瘢痕部には線維化と…』とありますが、これがFFのことなのでしょうか?その場合、骨転移や肺転移などのリスクが高くなるのでしょうか?
注43) 神経周囲浸潤ですが、私の生検の際の病理の結果にあります。
他のサイトでみても情報があまりなく良くわかりません。
こちらのQ&Aでみても他の質問者の病理結果にこの結果は見受けられません。
神経周囲浸潤をしていると遠隔転移率があげるのでしょうか?
どのくらい重要な予後因子ですか?
めずらしい浸潤なのですか?
今後の治療はタモキシフェン単独になりますが、私の10年生存率はどのくらいになりますか? 先生どうかご教示よろしくお願いいたします。
田澤先生から 【回答3】
こんにちは。田澤です。
「「外科的断端から0.5mm~1.5mmの部位に…」全摘の場合は取り切れていれば良いとのお答えでしたが、今後局所再発はなく安心して良いと思ってよろしいでしょうか?」
⇒その通り。(そのための全摘ですよ)
「これがFFのことなのでしょうか?」
⇒違います。
「神経周囲浸潤をしていると遠隔転移率があげるのでしょうか?」
⇒その可能性がある程度の所見です。
「どのくらい重要な予後因子ですか?」
⇒病理医以外に気にしている医師はいません(乳腺外科医はきにしていません)
「めずらしい浸潤なのですか?」
⇒そうではないようです。
「今後の治療はタモキシフェン単独になりますが、私の10年生存率はどのくらいになりますか? 先生どうかご教示よろしくお願いいたします。」
⇒それを知りたかったら…
OncotypeDXしましょう。(手術標本でKi67を測定していないのでルミナールAと言い切ることは困難なので)