小林麻央さんが亡くなりました。
その若さゆえ、尚のこと残されたご家族の悲しみを考えると胸が締め付けられます。
残された我々が、それぞれの立場で考え、教訓とすることこそが故人の願いではないか。そう思います。
ご冥福をお祈りします。
そんな中、一緒に取材を受けた患者さんの言葉に、「その与えた影響の大きさ」を肌で感じました。
それにしても…
(普通に外来受診した際に)突然、テレビカメラが現れて「取材を受けてくれませんか?」
この全く突然の取材に、快くご協力いただけた患者さん達に感謝いたします。
★私自身、その前の晩(金曜日のことです)にテレビ局から突然電話がかかってきて「明日取材できませんか?」
驚くとともに「報道は生き物」と、納得するものではありました。
放送が日曜日(サンデーステーション)だから「土曜日の市川外来だけがチャンス」だったのです。
取材の対象者が「(前医の診療に疑問をもち)当院を受診された患者さん」というものだったので、
「明日の外来に、たまたまそのような対象者がいるかな?」
もしも、いらっしゃったとしても(前々から声をかけていたのなら、ともなく)「突然では、そのような対象者が、取材協力してくれるものだろうか?」と(テレビスタッフと共に)大いに不安だったのでした。
FMから流れたshort story
「ウェイター君。注文を頼むよ。ええと、石みたいに硬い卵と、紙みたいに薄っぺらのベーコン。それに焦げかかったトースト、薄くて泥みたいなコーヒーを頼むよ。」
「お客様。当店にはその様なメニューはございません。」
「あれっ。おかしいな。昨日はあったんだが。」
○前回の続き
まずは実際の標本(乳房全摘)を供覧しましょう。
赤く印を入れたところに腫瘍(癌)があるわけですが、真上の皮膚も一緒に取っているので腫瘍は表面からは解りません。
乳腺組織の上には「衣のように」脂肪が覆っており、中央部にはその上の皮膚も一緒に切除されているのがわかります。
中央の乳頭部と腫瘍の真上の部分は皮膚をつけて摘出しています。
♯乳頭部は皮膚近くまで乳腺が迫っているので「その部分に乳腺を残さないため」であり、
腫瘍の真上の皮膚を切除するのは「皮膚側に腫瘍を残さないため」です。
それ以外の部位は皮膚は切除しない(皮膚から剥がすのです)
♯皮膚は取り過ぎると、皮膚が足りなくなるので大部分は残すのです。
これに割を入れます。
スライスすると、このようになります。
このように、(乳腺の中にできた)腫瘍は
「皮膚側」は皮下脂肪及び(その上の)皮膚に覆われており、
「深部側(大胸筋面)」には乳腺(裏)脂肪で覆われており、
☆「皮膚側」にも「深部側」にも『断端が確保されている』ことが解りますね?
◎手術の際の剥がし方
1.腫瘍が乳腺内にとどまっている場合
上図の「青いライン」で切れば、深部断端は確保されることは解ります。
拡大すると「腫瘍の裏面~切除ライン(青ライン)」までが深部断端なのです。
乳腺(裏)脂肪まで切除すれば十分だということが解りますね。
これを(慣れない術者が)上図のように切ると(これを「乳腺に切り込んでいる」と称します)、深部断端陽性となってしまいます。
♯4908の方のように、「非浸潤癌=癌が乳腺内に留まっている」場合では、このように「乳腺に切り込まない」限り、深部断端が陽性となるはずが無いことが視覚的に解ります。
2.腫瘍が乳腺(裏)脂肪を超えて大胸筋に浸潤している場合
腫瘍がこのように(裏面の)脂肪に浸潤、突破し更にその奥にある大胸筋にまで浸潤していても、
下図のように、腫瘍の部分で大胸筋まで切り込むように切除すれば良いのです。(大胸筋を全部切除する必要はありません)
☆慣れた術者だと、(勿論事前の画像所見も参考にはしますが)剥がしている際の「指先の感覚」で「剥がしている面に腫瘍が近い事を感じて、大胸筋を削って切除したりする」わけです。
この「ちょっとした」指先の感覚が、後々の「大胸筋再発(大胸筋転移ではありません)」を防ぐことになるのです。
★このようにすれば、全摘で深部側断端が陽性となることはないのです。