土曜日はいい天気!
久しぶりの屋上です。 風もなかった!
○ 本文
先週は新電子カルテへの切り替えがあり、外来は揺れに揺れました(大混乱)
2月~3月にかけての手術患者さんの指示入力は旧電子カルテでしたので、それらを新電子カルテへ入力し直しという少々大変な(日本語として矛盾?)作業がありこのコラムも久しぶりに週明けとなってしまいました。
ようやく月曜日朝に、それらが終了して急遽記載している次第です。
○ トリプルネガティブの術前化学療法について
今回は、これをテーマに挙げます。
(言い訳ですが)時間が余りないので(本日の手術開始時間までに30分! 現在8:30)ざーと記載します。
このテーマを選んだのは以下のQAに回答していて、違和感を感じたのがキッカケです。
管理番号 10896 「 浸潤性乳がん・抗がん剤」 より(以下、抜粋)
大学病院へ紹介状をもらい伺ったのですが、術前抗がん剤を強く薦められています。
術前でも術後でも、生存率は変わらない、と言われました。
だったら、しこりが小さなうちに取ってほしいと言ったのですが「標準治療だから」ということでした。
この方は腫瘍径13mmの早期乳癌、(この大きさでは)勿論このまま温存できるので本来「術前抗がん剤をゴリ押し」する理由は無い筈です。
まぁ、皆さんご存知の通り以前から(トリネガは、病理結果はどうあれ術後に抗ガン剤が必要なのだから)「術前にやってしまえ!」的な空気はありましたが、「トリネガでは術前抗がん剤が標準治療だ!」とまで言い切るまでではありませんでした。
それが、何故「術前抗がん剤が標準治療だ!」とまでその医師が言い切ってしまったのか?
pembrolizumabの術前術後補助療法への適応拡大が「微妙に」影響しているかもしれません。(今週のコラム 364回目参照)
つまり(再発治療以外で)pembrolizumabを使用するには、術前から使用するしかないわけです。
但し、ここには2つの問題点があります。
1.適応条件として(トリネガで)cT2もしくはcN1以上
2.(anthracycline やtaxaneのような)通常の抗がん剤とは異なりpembrolizumabは免疫チェックポイント阻害剤であり、想定以上の有害事象(しかも不可逆的である可能性もあり)に対する覚悟が必要
10896の患者さんは、そもそもcT1,cN0だから適応外ですが、たとえ適応内の患者さんに対してであっても、上記2のような懸念があります。
再発治療のような(それをやらなければ)太刀打ちできない治療ではなく、あくまでも(再発しないかもしれない)再発率を低くするためだけに(患者さんのQOLを考えれば)安易に勧められない治療であることは明白だと思います。
私のpembrolizumabに対するスタンスは「患者さん自身が、(有害事象は覚悟の上で)とにかく少しでも再発率を下げたい」という強い意志があることが条件だと考えています。
pembrolizumabが(再発以外では)術前化学療法のみに適応が通ったからといっても、(それをいいことに)トリネガ=術前化学療法の標準治療 とまで拡大解釈をすることは誤りなのです。