Site Overlay

今週のコラム 374回目 鎖骨下リンパ節再発 vol. 3 いざ、手術へ

謹賀新年

DSC_0689

 

年末に届きました! ジビエのELEZOです。

 

 

DSC_0691

 

パテアンクルート 福籠

熊、蝦夷鹿、フォアグラなど とても地味深くそして旨い!

 

 

DSC_0693

 

そんな大晦日の昼ごはん

塩ラーメン、トースト、そしてパテアンクルート

何とも「多国籍感」溢れる風景

個性派揃いたちに宮崎のスパークリングも負けていません!

 

 

○ 本文

ある月曜日

ルーティーンの20kmへ向けて走り出す、真夜中。

走りに集中しなくてはいけないと思いながらも、つい今日これからの手術のことに思いは馳せる。

絶対に負けられない戦いがある。

どこかで聞いた言葉だ。(前回のワールドカップ?)

 

再発手術

自分の技量と情熱が試される時と言える。

(ここで、ちょっと脱線)話は若き消化器外科医だったころに戻る。

当時、まだ大腸癌が胃癌を抜く前だったと思う。(昔ながらの塩辛い和食から脂っこい洋食への変化は癌種の発生率に確実に影響しました)胃癌がやはり多かった。

そして胃癌再発…

これらは通常消化管内容の通過障害(所謂 ileus)を伴う。

そして手術に踏み切っても… ほぼ「手術不能」状態。

唯一できるのはバイパス手術(つまり消化管内容が腫瘍再発部分をバイパスして通過できるようにするものだ)

術後、再び食事が摂れることに喜ぶ患者さんに笑顔を向けながら、いずれ再発病巣がバイパスも飲みこんでいくまでの「束の間の楽園」であることに外科医の限界を感じていた日々。

それらの日々は若き外科医の中に「取れる事(手術可能)」と「取れないこと(手術不能)」の決定的な差(言うなれば、患者さんの運命の明暗)を生むことを肌で感じ、時に患者さんの運命が自分の手にあることに押しつぶされます。

自分(の手術手技)が、もう少し上手ければあの患者さんは助かったのでは?

若き外科医は一度は悩みます。

 

時は流れ、専門を乳腺外科としてから思い出すのは…

先輩の零した悲痛な叫び『何で、取れないんだ!』

その患者さんは、もともと早期乳癌でリンパ節転移なし。(詳細は忘れたが)術後療法も殆どしていない。

定期診察で、まさかの「腋窩再発」

その当時(今とは違って)皆、本物の外科医だった。

「何とか取ってやる!」外科医として再発を取りきれるのかが運命を決するとの認識のもと、その手術は始まった。

だが、しかし…

(冒頭の)『何で、取れないんだ!』

その当時、助手として手術に入っていた私にとって、「腋窩再発」は初めての光景だった。

まだまだ未熟な私の目から見ても、(怖い、怖い)青大将様(腋窩静脈)との位置関係が全く分からない(つまり十分安全な視野が確保できない)

どうにもならず、闇雲に手を出すと(そこから)出血する。あわや青大将に孔が…

先輩は外科医としての情熱を持って挑んだが、遂に撤退を余儀なくされたのです。

手術不能、(手術に踏み切っての)撤退。

それは(消化器外科だった)あのころの風景と重なります。

(バイパス手術で)束の間、食べられるようになった患者さん。

『また、吐いちゃうんです。 お腹が張って食べられません。手術して良くなったと思ったのに、先生どうしてですか?』

 

そして月曜日の朝に戻ります。

今日は腋窩鎖骨下再発手術の日。

ランニングから戻り、外来でのエコー画像を見なおします。

 

1.鎖骨に平行に見た画像

 

 

 

 

 

2. 鎖骨に直行してみた画像

 

 

 

 

 

 

 

エコー画像を見ながら、私はあと数時間で実際に目にするであろう(術野の)光景を想像します。

そしてアプローチを考えます。

「小胸筋を下から圧迫して、腋窩静脈に覆い被さり視野を塞いでいるリンパ節。視野をとるためには最初から、(このリンパ節に被さっている部分の)小胸筋をリンパ節ごと切除していくべきだな。」

 

 

 

 

 

 

 

まさに、こういうことです。(リンパ節は小胸筋に節外浸潤している可能性もあるので、リンパ節に接している部分を合併切除するのには、その意味でも合理性があると言えます)

 

○ そして手術が始まります。

患者さんから許可をとり、手術風景を動画に撮りながら手術は始まりました。

あの頃の先輩とは私は違う。

乳がんプラザを通して全国からの腋窩再発の手術を手掛けてきたおかげで、今や私にとっては通常の乳癌の手術に近い感覚でこの再発手術に臨めるようになったのです。

1.皮切

これは直前まで少々悩みました。

通常は腋窩切開(つまり脇の下)として腋窩リンパ節外側(レベルⅠ)から腋窩に入り、そのまま奥へ進み(腋窩リンパ節内側)つまり小胸筋裏側のリンパ節(レベルⅡ)へと郭清を進めるアプローチをとります。

ただ、今回は鎖骨下切開を選択しました。

その理由

①腋窩外側(レベルⅠ)は初回手術時に郭清してあり(実際にそこにはエコーでもリンパ節は無い)そちら方面を切開する必要性がないこと

②同様に、そちら方向には瘢痕が強いと予想され(そこを郭清する必要が無い分)無駄な操作となってしまう。

③肝心の再発リンパ節は主体はレベルⅡそして郭清範囲としては(その更に奥の)レベルⅢまでとなるので、より最短距離での皮節(鎖骨下切開は、レベルⅡ及びⅢが最短距離となる)を選択

 

2.アプローチ

まずは視野を確保しながら(目的の)再発リンパ節へのアプローチです。

再発手術の注意点がまずここに存在します。

特にこの患者さんのように(センチネルリンパ節生検だけではなく)初回手術で腋窩郭清も行っている場合には、目的のリンパ節に到達するまでに(初回手術時にできた)癒着による瘢痕が時に障壁となります。

皮膚を切開し、出てきた大胸筋を切開し(その裏の)小胸筋表面に到達しました。

ここまでは術前に想定していた通り極めてスムーズ。 ただ…

 

3.再発リンパ節の(腋窩静脈からの)剥離

まず、感じたのは再発リンパ節が想像以上に腋窩静脈に強固に癒着して、そしてそれに覆いかぶさり腋窩静脈が見えないこと。

(再発でない)通常の腋窩鎖骨下郭清であれば、リンパ節は手前に引っ張り(その間にある小血管など)を結紮すれば容易に採れてきます。

ただ、今回は再発リンパ節が(予想以上に)腋窩静脈に癒着して(長期間の圧迫により腋窩静脈の壁と節外浸潤したリンパ節の癌細胞が結合組織を介在して長い距離一塊となっているからです)リンパ節をただ引っ張ってもビクともしません。

ほんの2-3年前の私であれば(この状況に)絶望し、撤退していたことでしょう。

ただ、ここ2-3年での経験が私に一筋の光明を与えていました。

まともに正面突破はできない。だけど必ず両サイドがある。

最初は永遠に長く思えても、少しずつ(ここが大事です。欲張ってベリっとやると血管の壁もベリっと…)外していく。

時間は幾らかかってもいい。両サイドから少しずつ…

 

 

再発リンパ節は完全に正面から腋窩静脈に被さっています。

しかも、その部分は強固に癒着していて「引っ張っても外れる」ことはありません。

 

 

 

 

両サイドから、少しずつ(mm単位で)外していきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、その時は遂に来ました!

両サイドから外し始めて、この操作だけで1時間以上(測っていませんが、おそらく…)の集中した時間。ついにその時は来たのです。

 

 

 

 

4.そして腋窩静脈から外れて、ついに摘出!

皮切、そしてアプローチまでのスピード感。

(に、比べて)極端な位の亀スピード。

動画撮影している管理者には永遠のような長さに感じられたに違いない!

なにせ、10分で数ミリの世界。これ動画?静止画じゃね?(の世界と言えます)

しかし、その時は来たのです。