〇 本文
今週のコラム520回目より抜粋
(以下、抜粋)
①オリゴ転移でCRとなった場合、その約1/4の症例が再発せずに生存している MD Anderson Cancer Center phase2 Cancer, 2005: 104(6):1158-71
♯この報告はなんと2005であり、(その時点での)20年生存はなんと1985当時の薬物療法だった(今からなんと40年前!)わけです。
②オリゴ転移の20年無再発生存が27.4% 東京慈恵医大での1980-2010までの30年の患者さんのデータ

まず、oligometastasisから考えてみよう。

うーん。
「oligo」自体は、ギリシャ語の「少ない」に由来する言葉だよね。
「5個以内」とか、曖昧な定義だけど…

この「曖昧さ」が寧ろ、「Key」とも言える。
つまり「oligometastasis=治癒する可能性を有する状態」と考えてみたらどうだろう。
それは「時代(薬剤の進歩)によって変わる」と言えないだろうか?

なるほど!
話が見えてきたよ。
そもそも「oligometastasisが治癒する可能性のある転移」と解釈すると、その「oligo」の程度が薬剤の進歩によって、どんどん「広くなる」ということだね。

謎雄君。
今日も「キレキレ」だね。
薬物療法の進化(抗がん剤の効果)は目覚ましく、私が医者になった当時(30年前)はanthracycline onlyの時代だったのがtaxaneの登場で「2大巨頭」の時代の幕開けとなった。
ただ、そこから続く薬剤が(私の記憶の中でも)vinorelvine, gemcitabine, capecitabine, eribulin …
なかなか、それを超えるどころか「続く」薬剤の登場がなく(日本経済でいう「失われた30年」に相当する)暗黒の時代(ちょっと大げさですが…)が続いた
♯唯一の例外がtrastuzumabの登場から、継続的に進化し遂にgame changerであるtrastuzumab deruxtecanまでたどり着いたHER2 typeである。 (ほかのsubtypeが「まごまご」している間に)一人ぶっちぎった感があります。
その後、bevacizumab の登場が間違いなく「腫瘍量への扉」を開けました。目に見えて小さくなる腫瘍、それは新たなる時代の幕開けとなりました。
bevacizumabが「量」への扉であるならば、CDK 4/6 inhibitorの登場は(その長期維持)「時間」への扉と言えます。
そして現在(anti HER2 drugである)trastuzumab deruxtecanの登場を待つように、同じderuxtecan族であるdatopotamab deruxtecan、そして切り札となりうるsacituzumab govitecanに続いています。

と、いうことは…
具体的には、「治癒しうる遠隔転移=oligometastasis」の範囲が広がり、『それって、(一昔前までは)oligoといえなかったけど、今じゃーoligo扱いしていいんじゃね?』ってことだよね。

そう、その通り。
冒頭に挙げた文献が、(anthracycline taxaneしかなかった時代の)oligometastasisの話だから、今じゃー「もっと全然大きなものまで治癒しうる」時代と言える。
と、「oligometastasis」の話をだしたのには訳があります。
来る11月23日に全米を震わせるであろう「なのは」さんのケースを見てみよう。
「経緯」については当日「生の声」を聴いてもらうとして、まずは(前医での局麻手術、因みに術後無治療での)2年半後の「腋窩再発」が最初でした。
腋窩鎖骨下再発
腋窩リンパ節(level Ⅰ) 5個以上
ここから当院へ転院 202〇 腋窩鎖骨下郭清術
しかし1年もしないうちに「鎖骨上」再発
PETではmultiple metastasisでした。
鎖骨上リンパ節 PET US
胸壁再発 PET US
所謂「局所」再発 前医での手術が局麻手術(しかも照射無)でした。
右胸膜 胸椎の右側肋骨付近の「緑色」わかりますか?
かなり「小さい」
大動脈弓「下」
これも小さい部類ですね
これは右「肺門」
小さい
これが「肝」転移です。 PET MRI
♯ PET所見も、それほど強いuptakeではないし、MRIでみても「結構」小さいですよね?

たしかに、複数個所あって「数え挙げると」ちょっと厄介に思えるけど、
でもvolume的にいうと結構「小さく」ね?

そう、そこが一つのポイント
まさにoligometastasisなのでは? ♯
♯ 転移を見たときに、(その担当医が)それを「oligometastasisではないか?(つまり、治癒が望めるのでは?)」と感じられるかどうかが、その患者さんの運命を変える時代なのでは??
〇それでは、この事態にどう立ち向かったか?
「負けざる者」勝負はここからなのです。(次回へ続く…) これから江戸川病院は計画停電です…

鎖骨下リンパ節(leve Ⅲ) 8mm




