やはり、寒い!
屋上へ出るのは断念。2回の室内からベランダ越しに空を眺めています。
治一郎、強し。
頂き物ばかりで恐縮ですが、最高の一時。
○ 本文
問題点が多すぎる!
と、思いました。
今週のコラム 371回目で問題提起した「SCとICの誤診」
これ自体通常は考えられないような大問題ですが、実はここに至る過程の中にも(私から見て)問題点が山積みとなっているのです。
経過
トリプルネガティブ乳癌、腋窩リンパ節転移陽性との診断
ここで、術前抗がん剤となっています①
更に、その担当医は抗がん剤を行う「前」も「途中」も「後(つまり術前)」も自らエコーをしていない!②
そして(術前抗がん剤後に)手術 全摘+腋窩郭清が行われています。
「術後」
その担当医に何度か「検査してくれるように」要望するも『必要無い』の一点張り③
検査のないまま1年半後、ようやく行った検査はPET そこで「鎖骨上リンパ節再発」と診断されたのです。④
問題点① 術前抗がん剤
・術前抗がん剤を勧められた理由
⇒患者さん自身に聞きましたが、(術前抗がん剤を勧められた)理由としてはトリプルネガティブだと治療は手術と抗がん剤となる。『抗がん剤をして小さくしてから手術しましょう』と、言われたそうです。
★ただ、結局全摘手術となっているので「小さくしてから」の手術には全く意味はなかったことになります。
腫瘍が小さくても、大きいままでも乳腺を全摘するのだから、全く関係ない!
★★それよりも(私が勘ぐってしまうのは)担当医自身が手術が楽にするための術前抗がん剤では?
現状だと腫れているリンパ節全てを手術で摘出しなくてはならない。
⇒『それは、大変だ! なんとか(抗がん剤でリンパ節を小さくして)見えるリンパ節だけを取るだけにしよう!』
そんな、担当医の本音が聞こえてきませんか?
問題点② 担当医が自らエコーをしないこと
実際に担当医がエコーをしていない(技師のレポートだけを読んでいた)ことを確認しています。
これが(最終的に)腋窩鎖骨下再発を招いた元凶とも言えます。
担当医は(自身でエコーしていないので)リンパ節転移の状況を(自ら)把握していない
★抗がん剤前のリンパ節転移の状況(画像上、レベル1までの転移なのか?レベル2まで? レベル3まで転移が疑われる?)は非常に重要です。
⇒何故なら、術前抗がん剤する前の時点での腫大したリンパ節は(たとえ術前抗がん剤で小さくなったとしても)手術でそこまで取らなくてはいけないのです。
それは何故?
抗癌剤で小さくなったら、(手術で)取らなくてもいいじゃん!(その方が手術も楽だし…)
謎雄君。
それは決して「やってはいけない」ことなんだよ。
何故なら(抗がん剤で)小さくなる=(その小さくなったリンパ節の中には)癌細胞が完全に消失した とは断言できないのだよ。
★(術前抗がん剤で)小さくなった=(転移したリンパ節内の)癌細胞の多くは死滅した。
上記は正しい、だけど少しでも残存していればその癌細胞は数か月~数年かけて増大する。これが局所(リンパ節)再発の本体なんだ。(特に術前抗がん剤後に起こりやすいのは、まさに「小さくなったリンパ節は取らなくていいだろう」が元凶なのです)
問題点③ 検査を希望されても「大丈夫、大丈夫」と、1年半後検査(PET)をして「鎖骨上リンパ節再発の診断」
全然「大丈夫」ちゃうやん!
患者さんの言う通りに検査(例えば半年に1回の超音波など)していれば、もっと早く見つかっていたのは間違いないよね?
よくQAで回答しているように…
確かに術後の定期検査にはガイドラインもスタンダードもありません。
その意味では「1年半、検査をしなかった」こと自体は責められないことかもしれません。
但し、それは「あくまでも、患者さん自身の(検査して欲しいなどの)要望がない場合」だと私は理解しています。
今回のように患者さん側から「検査して欲しい」と再三言われているのに「大丈夫」と言って断ること自体おかしい!
実際に(腋窩、鎖骨下、鎖骨上など体表の)リンパ節再発などは画像診断(PETでなく超音波で十分です)でないと解りようがない
★皆さん、再発=腫瘍マーカー上昇と思っている方も多いようですが、これらの体表のリンパ節再発は「画像の方が明らかに先」です。
つまり、その担当医が「腫瘍マーカーが正常だから、リンパ節再発は無いよ」と発言したとしたら、それは大いなる誤りなのです。
★★ 結果として患者さんの要望通り、せめて半年に1回くらい超音波していれば… それが今回の正直な感想です。
○経過観察(にガイドラインはありませんが)には、ステージは考慮すべきです。
たとえば、「非浸潤癌で全摘」のようなケース(根治です)では1年に1回の定期健診でいいでしょう。
⇒実際に江戸川でも1年としています。
しかし今回のケースでは「リンパ節転移を伴う乳癌(抗がん剤前のステージは未だに不明ですが)」だったわけですから、(私の感覚では)「半年に1回の超音波+マーカー採血」が妥当でしょう。
実際、同様のケースの患者さんの中には「半年は不安だから3か月希望します」と、言われれば「3か月」としているケースはザラにあります。
○患者さんに「大丈夫」と、言っておきながら「大丈夫ではなかった!」という事態
これは医師としては「しまった! 申し訳ない!!」という非常事態なのです。
相手は病気(癌)だから、再発事態を未然に防ぐことはできないかもしれません(それを防ごうとするのが「術後補助療法」ですが)
ただ、患者さんから「検査してほしい」⇒医師「必要無い、大丈夫」⇒実は「再発していた=大丈夫ではなかった」という事態だけは全力で避けなくてはならないのです。
そのために患者さんから希望があれば(あまりに突拍子もないものでない限り)それに応えるのが本来の医師のあるべき姿と考えます。
今回の担当医には、上記が著しく欠けている。患者さんが(そのことに)大いに不満に感じていることは極めて妥当だと思います。
問題点④ 1年半検査を断り続けての「鎖骨上リンパ節再発」 しかもそれが「鎖骨下リンパ節再発だった!」というおまけつき(おまけと呼ぶには余りにもお粗末であり、患者さんには極めて不利益ですが…)
鎖骨上リンパ節(SC)と鎖骨下リンパ節(IC)の位置の違いについては「今週のコラム 370回目」を是非ご参照ください。
後日、その放射線科医の方はその誤りを認め謝罪したとかしないとか…
ただ、その担当医には私が診察してその返事(報告書)に、『紹介状には鎖骨「上」リンパ節再発とあり患者様にもそのように伝えているようですが、実際は鎖骨「下」リンパ節再発でしたよ。当院での手術をご希望されましたので予定しました』に記載して送りましたが、理解しているかな?
『だって、放射線科医がPET画像の読影で鎖骨「上」ってレポートしてるもん。悪いのは私じゃないもん!』って、なってないかな?
あなたの言い訳が聞きたいのではなくて、(私が欲しいのは)患者さんへの謝罪の気持ちですよ。
さて、次回はいよいよ舞台は江戸川へ