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今週のコラム 170回目 化学療法閉経後に月経が復活した場合にはLH-RHagonistを併用したほうが(予後が)いいことはSOFT試験 で証明されています。

今日は、暖かいですね。

先週は木曜日出勤前に車の屋根に雪が貼りついていて(積もっている程ではなかったけど)驚いたけど、2月に入ってここ東京はそれからは暖かくなってます。

暖かくなって、陽も高くなってきて気分が上がってきている今日この頃です。

 

 

ここ暫くこのコラムでは「乳癌診療の基本1-8」として診療の基本を紹介してきました。

これを見ていただけることで、「乳癌です」と告知された後に『何をどうすればいいのか?』という迷路から解放され、その後の主治医からの説明にも冷静に対応できることと期待しています。

さて、今回はそんな「乳癌診療の基本」から離れて、「QandAを回答していて、網羅的に解説しておいた方がいいな」と感じたことを取り上げます。(よくある質問に対して『今週のコラム〇〇をご参照ください』とできるメリットがあるのです)

 

それでは、本文に入ります。

QandA 2019/1/27③「不正出血について」を回答していて、以下の解説を行うことにしました。

1.化学療法閉経

2.閉経

3.ホルモン療法

 

1.化学療法閉経

・化学療法閉経とは

抗がん剤により卵巣が機能不全となり、結果として生理が止まる現象です。

・原因となる薬剤は

術前術後に使用する抗がん剤ではエンドキサンやタキサンにより引き起こされます。

・症状は

シンプルに考えましょう。

卵巣機能が『急速に』低下するのだから、(急速な閉経状態=エストロゲン欠乏状態)「のぼせ、ほっとフラッシュ、イライラ、関節痛」などです。

♯ 通常の(自然)閉経とは異なり、エストロゲン欠乏が「急速に」低下するので上記症状が強く出る場合が多い

♯ 年齢にも大きく影響を受ける。(もともと卵巣機能低下が進んでいる40代後半の方と、全く卵巣が元気な30代の方では後者の方がより「急激な」影響となる)

また、初回投与後は(卵巣機能が急激に不安定となるので)生理の量が「かえって多い、期間が長い」などとなります。(その後、急速に止まります)

・時期は(抗がん剤投与すると、すぐ起こるの?)

「すぐ」ではありません。

これも、年齢によって大きく影響を受けますが、(例えばTCなら)2回目投与後にはほぼ全例で月経停止となります。

 

2.閉経

「閉経とは最終月経から1年以上経っていること」が条件となります。

よく、『最近は、2,3か月に1回少量だから、(私は)閉経だと思います。』と、おっしゃる患者さんがいらっしゃいますが、それは閉経ではなく「更年期」です。

 

3.ホルモン療法

基本

閉経前(35歳≧)タモキシフェン+LH-RHagonist

閉経前(35歳<)タモキシフェン

閉経後     アロマターゼ阻害剤

 

『化学療法閉経の場合には、(通常の閉経後と同じように)アロマターゼ阻害剤でいいの?』

 

 

 

 

 

『全く、違います。

時々そのようにしている医師を(QandAで)見かけますが、それは誤りです。

化学療法閉経は(通常でいえば)「更年期に近い状況」と考えます。

実際に、暫くすると(卵巣機能が復活し)月経が再開することがよくあります。注 1 )

まずは、タモキシフェンとすべきです。(最低でも1年以上タモキシフェンとし、その後血中E2を測定したうえで「極めて慎重に」アロマターゼ阻害剤へと変更すべきなのです。』

注 1 )化学療法閉経からの回復は、当然ながら『もともとの卵巣の元気さ=年齢が参考となります』が大きく影響します。

あくまでも(化学療法のregimenにもよりますが)TCでいうと私の印象ではザックリと

30歳代:殆ど回復する(半年~1年)

40歳代前半:半数以上で回復する(1年~)

40歳代後半:回復しない方が多い

♯ 無論、「卵巣の元気さは年齢だけでは測れない」ことはご理解ください。

 

 

『(化学療法閉経後に)タモキシフェン治療中だったのだけど、不正出血があったの。どうしたらいい? 子宮体癌を心配したほうがよい?』

 

 

 

 

『卵巣が復活してきている可能性が高いため、LH-RHagonist併用を開始したほうがいいでしょう。(慌てる必要はありませんが・)

化学療法閉経後に月経が復活した場合にはLH-RHagonistを併用したほうが(予後が)いいことはSOFT試験 注 2 )で証明されています。

子宮体癌が原因である可能性はゼロではありませんが、(確率的には)殆どありません。婦人科でチェックしてもらえば安心です。』

 

注 2 )SABCS 2014で発表された、閉経前ホルモン受容体陽性3047症例のLH-RHagonist併用の意義についての臨床試験

「35歳未満」及び「化学療法閉経から回復した患者さん」には、その有効性が証明されたエビデンスの高い試験である。