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今週のコラム 169回目 乳癌診療基本8 ポイントは「アレルギー」「筋肉痛」「全身倦怠(だるさ)」

大坂なおみ選手 祝、全豪優勝!

凄い。世界ランク1位ですね。

幕を開けた「大坂時代」

あのナブラチロワやグラフの全盛期を彷彿させるような、凄い選手になりそうです。

 

 

〇翌週、TC(初回)当日

 

『いよいよ、抗がん剤ですね。緊張して一睡もできませんでした。こんな体調で大丈夫?』

 

 

 

 

『えっ! 万全ではない? それは困ります。 なんて、嘘です。勿論、大丈夫です。抗がん剤に「万全の体調」など必要ありません。

それでは、実際に処方しながら説明します。 この(電子カルテの)画面をご覧ください。

前回お渡ししたプリントは見ておきましたか?』

 

 

『穴が開くほど見ました。実際に穴は開いてませんが(笑)』

 

 

 

 

『そのくらいの(気持ちの)余裕が大事です(笑)

それでは、説明しますね。

まず、嘔気ですがこれは殆どありません。

しかし、「あっては困る」のでAprepitant 注21 )を処方します。』

注21 )Aprepitant  商品名「イメンド」

この薬剤が「抗がん剤による吐気」を劇的に変えました。

強力な制吐剤

保険適応上「3日間」に厳密に日数制限があります。

 

 

『そこが1番心配だったんだー。

よかった。

それと、(私、箱根だから)家まで電車で3時間以上かかるのが少し心配だわ。』

 

 

 

『大丈夫ですよ。それで十分です。

実際に副作用がでるのは(今日は火曜日だから)木曜日の夕方以降です。

今日、明日は全く問題ありません。

それでは、説明続けます。

ポイントは「アレルギー」「筋肉痛」「全身倦怠(だるさ)」です。』

 

 

『なるほど! そういう風にシンプルに理解すればいいのね?』

 

 

 

 

『そういうことです。

まずは、「アレルギー」ですが、ドセタキセルに特有のアレルギー反応が出る可能性があります。

具体的には(喉の粘膜が浮腫んで)「喉が詰まる感じ」として自覚する方がいらっしゃいます。また薬疹(痒みと発疹)も出る可能性があります。』

 

 

『その対処が、ここに書いてあるステロイドなのね?』

 

 

 

 

『その通りです。

具体的には、デカドロンを2週間投与します。

これは予防投与なので、症状が無くても飲み切ってください。

また、ステロイドは胃粘膜を荒らすので、胃薬も併用します。注 22 )

それでも薬疹がでることがあるので、その時のためにフェキソフェナジンを処方しています。(所謂、アレグラです)』

注 22 )デカドロン(steroid)とランソプラゾール(PPI; Proton pump inhibitor 胃薬):を2週間投与しています。

 

 

『それと、「筋肉痛」と「だるさ」ね?』

 

 

 

 

『そうです。

「全身倦怠感」には「休息」しか対処法はありません。

「痛み」について、これも「対処療法」となります。

具体的には鎮痛剤での対処です。』

 

 

『鎮痛剤って、術後に退院処方でもらった、えーと「ジクロフェナク」ね?

余り痛くなかったから、殆ど残っているわ。』

 

 

 

『その通りです。それでは今回は処方しません。

それと、基本的に抗がん剤は「消化管の動きを抑制」します。

具体的に言うと「胃がもたれる。腸がもたれる=お腹が張る/便秘気味となる」などです。

ただし、これらの症状はanthracycline系よりは軽度です。

具体的には3種類の薬剤 注23 )を処方します。 1週間のみきりでいいでしょう。

まずは、ここまで大丈夫ですか?』

注23 )ナウゼリン/プロマック/ビオスリー 胃薬と整腸剤

 

 

『ここまでは、よくわかりました。』

 

 

 

 

『抗がん剤には「骨髄抑制」があります。

白血球低下による「免疫力低下」と理解してください。

これは一過性なので必ず回復します。(その回復までの期間が3週間だから「3週間サイクル」となっているのです。』

 

 

『どう、気をつければいいの? 対処法は?』

 

 

 

 

『まず、(抗がん剤投与後)10日~2週間の間に(白血球が低下するので)その時期に注意することが重要です。(ちなみに、この時期に脱毛も始まります)

具体的に言うと…

その時期には「うがい、手洗い」を心がけてください。(抵抗力が弱って)病原菌が侵入するとしたら、やはり「喉」なのです。

(もしも「喉のイガイガ」などに気付いたら)早めに抗生剤 注24 )を飲むことです。 それらを使えば、普通に対処できます。』

 

注24 )ニューキノロンであるグレースビットを当院では処方しています。

 

 

『(それらで対処しても)それでも、高熱が出た場合には?

私、箱根だから(遠くて)心配だわ。』

 

 

 

『解熱剤であるカロナールを処方しておきますので、早めに内服してください。

実際には、それで全く問題ありません。

「宛名無の」紹介状をお渡ししていますので、(どうしても)心配な場合には、それをもって(地元の病院などを)受診することはできます。

ただし、実際にそれを使われた例は殆ど無いのが現状です。

安心して治療を開始しましょう。』