術後の経過観察
このQandAでも、時々(いろいろな質問の最後に)
『主治医は、1年に1回の超音波しかしないと言います。それでいいのでしょうか?術後の定期検査について教えてください。』
おそらく(6500を超えたQandAの歴史の中で)100回以上は答えてきた「この質問」に明確な回答は無いのです。
そこに「明確なガイドラインができない」背景
1 ステージ
患者さんひとりひとりについて)病状(ステージ)が全く異なる。
ステージが違う患者さんたちに、検査を「一律」にするのもおかしいですよね?
2 治療
術後行っている治療により、そもそも「通院頻度」が異なる。
ホルモン療法は3か月処方なので「3か月に1回通院している」患者さんと、その必要のない患者さんでは受診頻度が同じではない。
3 医師の考え方
(自分が学んできた)先輩医師のやり方を当然の如く「正しい方法」と認識しながら医師は成長します。(所謂「刷り込み」です)
そのうえで、(その医師独自の)経験から「この位の検査が妥当か」と(それぞれの医師個人個人で)独自の?進化を遂げるのです。
4 医師の質
これは、(大学病院やある種の大病院では)若く「これから学ぶ」医師たちも多く、それらの医師が「自分勝手なやり方」をしていると、(その病院の)医療がめちゃくちゃになってしまいます。
そこで、それらの病院では「その施設の医師に一律に守らせるガイドライン(マニュアル)」を作成しています。
マニュアルを守らせていれば「とんでもない失敗は起こらない筈」だからです。(自由にさせていたら「医療事故などシャレにならない事態」もあり得ます。経験談)
♯ 経験豊富な医師が、それらの医師が行う診療をすべて監視できないから詳細なマニュアルを作り守らせる。(学校の先生が生徒たちに守らせる小中学校の校則のようなものです)
☆言い換えれば「バイトだらけのチェーン店の(マニュアル命の)店員の質」と「修行を積んだ、ひとりひとりが責任をもっている職人の質」の違いと言えます。(どちらに詳細なマニュアルが必要なのかは明らかでしょう)
ここまでで、「術後の定期検査はどうすればいいのですか?」
には、「絶対的な回答」が無いことがお判りいただけたことでしょう。
それでは、私はどうしているのか?
視点1 病状(ステージ)
「非浸潤癌」は1年に1回(患者さんの強い希望があれば半年に1回としています)
非浸潤癌では薬物療法も、採血(腫瘍マーカーも含め)取りません。
視点2 通院(ホルモン療法をしているか、どうか?)
「浸潤癌」の場合には単純に
・ホルモン療法をしている場合
(3か月処方なので)「3か月に1回」通院なので診察エコーは3か月毎
採血腫瘍マーカーは基本的に(通院の)2回に1回(半年毎)
マンモグラフィーは1年に1回
・ホルモン療法をしていない場合
(3か月毎に通院する必要がない為)半年に1回の診察エコーと採血腫瘍マーカー
視点3 私の考え
局所の診察は「半年に1回」で十分(医師自身のエコーが必要です)
採血マーカーは(バランスを考え)「半年に1回」(ただし、不安の強い人は3か月でもOK)
正直(私がエコーしているので)マンモは必須とは思っていませんが「予期せぬ石灰化」のために2年に1回はやったほうが無難(ガイドラインで1年に1回となっているので、できるだけそのようにはしています)
それでは(他院で)「術後の診察は1年間しません」とされている患者さんが、それにより不運をこうむっってしまった実例
♯繰り返しますが、術後の定期検査に「絶対的なガイドライン(法律)」が無い以上、その医療機関の「手落ち」とはならないのです。
その医療機関独自の「定期診療」システムがあり、それを非難することはできません。
以下の実例は、あくまでも「こういうこともある」ので、患者さん自身が気をつけるべきこととなるのです。
実例1
1年間診察は一切しないとして、いきなり「レベル3までのリンパ節転移が出現」したケース
レベルⅠ:小胸筋より外側
レベルⅡ:小胸筋の裏
レベルⅢ:小胸筋の内側
大胸筋(オレンジ)/小胸筋(茶色)
実例2
8か月前のCTでは転移所見無(手術による反応性?)→突然「腋窩静脈を極度に狭窄するくらいの」リンパ節転移の出現
この所見では「転移」とは判断できません。
転移性リンパ節(レベル1)により腋窩静脈が著明に狭窄している。
☆この2症例で私が(個人的に)感じるのは…
最低限、「半年に1回のエコーをしていれば、こんな事態は避けられたのではないか?」そう思うのです。
♯ 術後の定期健診にガイドラインは存在せず、これらの医療機関に不備があるというわけではありません。(あくまでも個人的感想です)