○ まず、11年前(2014)書いた以下の文章(私の若い写真と共にある)を以下のように変更します。 管理者さん、変更宜しくお願いします。
(変更前)
乳がん治療は進歩が著しい分野であり、高い専門性を必要とします。
私は乳がん手術を2000件以上行っており、正確な手技により短時間で出血の少ない手術を行っております。年間のべ1万人以上の外来診療を10年以上行ってきましたので、あらゆる乳腺疾患に経験が豊富です。
診断から治療、術後の診療まで(放射線科医や腫瘍内科医と緊密に連絡を取りながら)私が責任を持って一貫して行います。
豊富な乳房再建の経験をいかし、形成外科と共同で乳房再建も行います。
↓
(変更後)
乳癌診療は「診断」「手術」術後に行う「薬物療法」まで診療の幅が広く、全ての領域で高い技術を必要とします。
無駄な経過観察はせずに、組織診断(針生検、吸引式針生検、ステレオガイド下マンモトーム生検)を得意とし、迅速に診断し治療を行います。
手術は、ここ江戸川病院に赴任してからの11年間だけで3000件を超えトータルすると5000件を超えています。短時間で無出血に拘りドレーンは11年間一度も入れていません。
鎖骨下リンパ節や鎖骨上リンパ節は再発も含め、手術経験が豊富で絶対の自信を持ってます。
また肉芽腫性乳腺炎や葉状腫瘍など癌以外の診療も最後の砦という意識で行っています。
術後や再発後の薬物療法の症例数も非常に多く、放射線科医や腫瘍内科医と連携して行っています。
江戸川病院へ赴任して、はや11年過ぎて…
(自分なりにですが)成長しているんだなぁ。と感慨深いかぎりです。
○ 本文
究極の乳腺外科医、「究極の外科医」とは
手術時間が早い
①無駄な操作がなく、最短距離でアプローチすること
②出血させない
⇒出血は、(それを止めるための余分な動作を必要とするため)手術時間が無駄に長くなる最大の原因とも言えます。
手術時間の速さは、(時間的にも体力的にも)余裕が出るので、
この余裕 “¹ が「慎重にすべき操作を、より慎重に対処できる」要因となります。
♯1.解りやすい例が「乳房切除+腋窩鎖骨下郭清、 及び鎖骨上郭清」
症例
前医でのPET画像
腫瘍は皮膚に達しています。
外側にあるlevelⅠ~Ⅲ(小胸筋内側の位置)まで集積(転移所見)を認めます。
SC(鎖骨上リンパ節)①
SC②
上記SCよりも上外側に集積が見えるのがPC(posterior cervical lymph node)後頚部リンパ節です。
これらをエコーでみると
PETで皮膚に達しているように見えますが、実際にはこのように真皮浸潤(cT4は皮膚浸潤でも、真皮ではなく表皮浸潤となります)
表皮を裏打ちしているのが真皮
赤は(小胸筋裏なので)所謂level Ⅱ
それより内側(奥)にある白いリンパ節がlevelⅢ
それがSCです。
腋窩鎖骨下(Ax~Ic, levelⅠ~Ⅲ)とは異なり”浅い(皮膚に近い)ことがこのエコー像でも解ります。
この僧帽筋に接する部位がPC(赤で提示)です
PC転移がある場合には、(黄色く示した)SCは通常よりも、かなり「外側」まで腫大していることが多い。
鎖骨上どころか、鎖骨下郭清ができる乳腺外科医が殆どいない現状(だからこそ、地元で鎖骨下は手術しない、できないと言われて当院で手術となるわけですが)では、この術式を(そもそも)こなせるのは私以外いないと思いますが私がこの手技を綺麗にできる要因は実はその「早さ」にあるのです。
「乳房切除+腋窩鎖骨下郭清」を1時間半程度で終わらせられると、その後の鎖骨上郭清の際に『ぎょっ! これは結構大変そうだ!』となっても(時間的、体力的余裕から)十分な「慎重な操作が可能」となる ″² のです。
♯2 先日の「リアル大門」と言っていただいた方の場合も「鎖骨上郭清(+後頚部リンパ節郭清)」が、かなりの難関でしたが(まさしく、ぎょっ!)時間的(体力的にも)余裕があったので、(慎重な操作を必要とする場面が多数ありました “³ がcompleteできたのです。
術前の私のイメージ
私は先に示したエコーをしたうえで、この位のイメージを持っていました。
オレンジがSC、緑がPC
重要なのは頸動静脈から離れていて、更に鎖骨に隠れていないこと。
しかし実際は…
このように頸動静脈とは離れていましたが、赤く示した(これもSCですが)リンパ節が鎖骨の裏まで大きくなっており全貌を直視下できなかったのです。
しかも、これらのリンパ節は(術前エコー時の予想では「疎ら」に思えたのですが、実際には「一枚岩みたいに癒着」していて、最初は「とっかかり」がつかめない。
この状況が前述の『ぎょっ! これは結構大変そうだ!』と感じたのです。
もしも、ここで「time up」(時間的にも体力的にも)に近かったら「これは無理、手術不能」と逃げたのかもしれません。
しかし前述したように、まだまだ余裕があり、かつ(これが今では一番のよりどころですが)「過去の成功体験」が私を勇気づけるのです。
一見、「どこから手をつければ…」状態でも「極めて慎重な一歩」が次に可能な操作を生み、其の操作をすると、更に… まさに『強固なリンパ節も、この蟻の一穴で崩壊できる』
今回も、私に更なる「成功体験」を与えて頂きました。
(患者さんにも直接言いましたが)感謝するのは寧ろ私の方です。
♯3 鎖骨上郭清ではリンパ節が小さいうちはまだいいのですが、大きくなると「どんどん」大血管(頸動静脈や鎖骨下静脈)に接してきて「時に」それらを圧迫するまでになります。
鎖骨上リンパ節で一番神経を使う場面は鎖骨下静脈から外す時です。
鎖骨下静脈は鎖骨の裏にあり直視下に捉えることができないからです。
直視下できないもの(しかも大血管)から外す場合には「安易に」行うと枝が引きちぎれて(場合によっては鎖骨下静脈そのものが一部割けて)大出血のリスクと隣り合わせと言えます。