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今週のコラム 168回目 乳癌診療の基本 7 taxane単独regimenであるTCは、anthracyclene単独regimenであるAC/ECよりも効果が高いことが示されている。(SABCS 2007)

みなさん。こんにちは。

東京は天気が良くていいのですが、乾燥が凄いですね。

我が家では、ダイキンの業務用加湿器でガンガン加湿しています。

 

今週はセンター試験でしたね?

共通1次、最後の世代として(雪の降る中)試験を受けたことを思い出しました。

会場は新潟大学(だったと思います)、翌日に新聞で発表される回答で自己採点して「喜んだり、がっかり」したり…

試験と言えば…

自動二輪や車など運転免許の卒業試験(実技試験は、筆記試験にはない独特の緊張感がありました。)、大学の卒業試験(医学部は「卒論」なるものは存在せず、「卒試」なのです)や医師国家試験、乳腺専門医試験…

いろいろな試験をしてきたなー。

ただ、「他人との競争」という意味では大学入試が最後だったことに気付きました。

それ以降の試験は、(相対的評価ではなく)「絶対的評価(基準を満たせば全員だって合格できる)」だったのです。

 

 

〇病理説明から4週後

 

『OncotypeDXどうでした?』

 

 

 

 

 

『まずは、おかけください。

AさんのRSは35です。 この(結果の)冊子はお渡しします。

ホルモン療法単独(Tam Alonの表記)で10年再発率は18%

化学療法併用(Tam + Chemoの表記)で10年再発率は8%  つまり、(化学療法による)上乗せは10%という結果 注18 )です。』

 

注18 ) このグラフはNSABP B-20試験の651症例での臨床研究により得られたものです。適応範囲はstage Ⅰor Ⅱ(n0)ER+で5y  treatment by Tamoxifen

 

このグラフを見るとRS(横軸)が大きくなればなるほど、TamとTam + Chemoの差が開いていくことが読み取れます。

また、RSが高くてもChemoをすることで再発率が10%程度に抑えられる(ChemoすることでRSが高くても予後は変わらない)ことも読み取れます。

 

 

 

 

『あー。残念。高リスクで、上乗せも10%あるから、私抗がん剤します。

(抗がん剤することで)再発率8%というのは魅力だわ。迷ったりしません。』

 

 

 

 

『冷静な判断です。 私も賛成します。

レジメンはTC 注19 )です。

3週間に1回の点滴で4回となります。』

 

 

注19 )TC  Taxane(タキサン)の頭文字TとCyclophosphamide(サイクロフォスファマイド:エンドキサン)の頭文字C

TaxaneとしてはDTX:docetaxelを用い、Cyclophosphamideとの2剤併用

standard regimenであるanthracycline+taxaneとの直接比較は無い。

 

taxane単独regimenであるTCは、anthracyclene単独regimenであるAC/ECよりも効果が高いことが示されている。(SABCS 2007)

 

 

 

 

術後の化学療法の考え方

 

術前術後に使う抗がん剤としては「アンスラサイクリン(E、A)」と「タキサン(DTX,PTX)]があります。

Gold standardとしては、この療法を用いる「アンスラサイクリン+タキサン」でしたので過去には「術後の抗がん剤=アンスラサイクリン+タキサン」だったのです。

 

ただし、(心疾患の多い欧米を中心として)『心毒性のあるアンスラサイクリンを避けることはできないか?』という流れができます。(つまり、「タキサン単独」です)

そこで「アンスラサイクリン系レジメンであるAC」と「タキサン系レジメンであるTC(TはDTXのことです)」の直接比較が行われました。

 これは有名な試験でありTC>ACが証明されたのです。(上記SABCS 2007で発表された)

 

と、いうことで

①トリプルネガティブや(ルミナールタイプでも)high risk

 →きっちり抗がん剤を行いたい→アンスラサイクリン+タキサン(EC+DTXなど)

 

②ルミナールタイプ(B)

 →TC

 

 

『いつから開始できますか?

やるとなったら、早めにやってしまいたいわ。

一番早いのはいつ?』

 

 

 

『今でしょ。 それは冗談です(笑) 実際は(薬剤の準備の都合上)早くて来週からになります。

月と金は手術日なので(火曜日、水曜日、木曜日)のうちから選ぶこととなります。

それでは来週の火曜日からではどうですか?

それと、初回は採血不要ですが、2回目からは毎回採血します。注 20 )

注 20 )2回目からは(前回行った)抗がん剤による骨髄抑制で白血球が低下して、それが(3週間して)回復したことを確認する必要があるため。

 

 

 

『抗がん剤って、副作用が心配だわ。

髪の毛抜けたり、吐いたり。私にもできるかしら?

ところで、入院必要?』

 

 

 

『心配要りませんよ。 入院はしません。外来で行います。

副作用については、このプリントをお渡しするので次回までに読んでおいてください。

具体的な(副作用を抑える)支持薬については、次回実際に処方しながら説明します。

まー、ザックリ言えばポイントは

①吐気は殆どない

②当日翌日は殆ど副作用がなく、副作用出現は「翌々日の夕方以降」

③(翌々日の夕方~3日間程度)全身の筋肉痛とだるさ

④10日~14日間で白血球が下がり、感染のリスクが出るので(その時期は)早めの抗生剤とうがいで対処する。

⑤(④の時期より)脱毛が始まる。

⑥(④の時期に)白血球低下を底上げするために(抗がん剤点滴)翌日にPegfilgrastim(ジーラスタ)の皮下注射をしてもらう

⑦後半(点滴3回目以降)には蓄積作用として「痺れと浮腫み」が出てくる。』

 

★次回は、いよいよAさんがTCを受けます。