[管理番号:5546]
性別:女性
年齢:24歳
こんばんは。
初めまして。
24歳○ヶ月の娘のことについて、質問させてください。
よろしくお願いします。
まず、経過をご説明します。
今年2月 左下乳房のしこり(いくらの粒ほどの大きさで動き触ると痛みがある)が気になり、3月に近くの乳がんクリニックを受診→マンモグラフィー、エコーの結果、石灰化は見られるが心配はないもの、しこりは良性の嚢胞であり水が溜まっている状態で若い人によくあるものだと言われる。
3月末 乳頭より本人が血性分泌物に気づき、別の「東海地方」の乳腺クリニックを予約するも3ヶ月待ちになる。
その時点で左右の乳房の大きさの違いが顕著に見られるのも心配
6月末 予約した乳腺クリニックを受診。
超音波検査は受けたもののマンモグラフィーは2月に他院で受けているため今しない方が良い(半年は空けた方が良い)と言われマンモグラフィーを9月に撮ることになる
9月初め 同乳腺クリニックにてマンモグラフィー、エコー。
結果 石灰化の広がりが気になる形をしていると言われ MRIとマンモトーム生検を
し、9月半ばに『非浸潤がん』の確定診断を受ける。
そのクリニックでは治療はできないため、紹介状を携えて ○○大学病院を翌日初受診
○○大学病院 初診にて、紹介状の資料を見る限りでは非浸潤がん、
範囲が広いため全摘は免れないとのこと。
その話の後、触診、エコー。
その際、エコーで左脇の下のリンパに気になるところがあると言われ細針を刺し細胞検査。
後日検査結果が出て、「脇の下の針を刺した箇所から転移陽性反応が出た、稀にしこりがないのに転移をしてしまっていることがある。
ということは、どこかに浸潤がんが潜んでいるのは間違いない」との主治医の説明に、目の前が真っ白になりました。
その後、「リンパに転移があるとなると抗ガン剤をしなければならない、あなた若いから手術より先に抗ガン剤をやった方が良いかもしれない」と言われ、何も考えられない状態だった私たちは、そうですか、、、というしかありませんでした。
ただ、何処かにあるだろう浸潤がん部分はその時点ではわからず、エコーにて怪しいと思われる部分をマンモトーム生検。
結果待ちです。
主治医は、「もしこの検査で浸潤がん部分が見つからないとサブタイプはわからないが、見つからない場合は非浸潤がんのサブタイプ(ホルモン受容体陰性)と同じと予想して抗ガン剤・HER2陽性の場合の治療をする」と言われ、主治医の勧めのまま術前化学治療に向けて後日骨シンチ検査をしました。
しかしながら、田澤先生のブログを拝見していたら、
*全摘は免れないならまずは全摘手術して病理結果を待ち、その結果を見てから術後化学療法でも良いのでは?
と思えてきました。
主治医の先生もご自分で、「化学療法は先にやっても後にやっても効果は同じ」とおっしゃっていたのにもかかわらず術前を勧めるのは何故?
若いと進行が早いから?
サブタイプを「予想して」治療というのも 後から考えたら引っかかってしかたありません。
更に、先に全摘を希望するなら骨シンチ検査は必要無かったのではないかと 今になって後悔し始めています。
長々と経過を書き連ねましたが、短い期間に 非浸潤がん→浸潤がん(リンパ転移)と診断が変化したため、ショックで思考が数日間 停止状態になっておりました。
でも、1週間以上経ってみると冷静になってきて色々疑問が浮かんできてしまい、田澤先生にお伺いしてみようと思った次第です。
ご多忙とは存じますが、以下の点について御回答いただけると幸いです。
*リンパ節の細胞診結果は信用できるものなのか。
*24歳という年齢は、術前化学療法を勧める意味のある若さなのか。
*しこりがないのに転移という状態はありえるのか。
*浸潤がんのサブタイプがわからないまま化学療法をすることは場合によってはありえるのか。
マンモトーム生検、その他の検査結果は10月(上旬)日に出て、その時に治療方針を主治医と話し合う予定です。
(主治医は術前化学療法をするつもりでいると思います。
話し合い、治療方針が納得いかなければセカンドオピニオンも考えています。
ただ手術がそれだけ遅れてしまうことが心配です)
ご判断いただくにはあまりに資料不足ではございましょうが、質問以外に、田澤先生の気になる部分があれば重ねてご指摘、ご意見伺いたく存じます。
娘は近く結婚します。
婚約者、家族ともども、まだ若い娘が乳がんになってしまったことはあまりにショックですが、全員で彼女をサポートする覚悟はあります。
最善の治療を選択して完治させてやりたいです。
御回答を、是非よろしくお願いいたします。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
乳癌の若年化が顕著であることは私自身の患者さんの年齢層の変化から日々、感じてはいますが
24歳で結婚を控えた状態での乳癌の診断、お気持ちお察しします。
今更仕方がないことですが…
★残念なこと①
2月の診療がまともであれば、(当然)診断されるべきものです。
世の中の乳腺外科医が100%の診断ができる日が来る事を(QandAを回答するたびに)願わずにはいられません。
★残念なこと②
『全く馬鹿げたこと』として、その大学病院で「再度マンモトームをしている」ことです。
何度も言いますが、「全く馬鹿げている」
すでに癌と確定診断がついているのだから、(術前に)「浸潤部分を無理やり探すために、再度マンモトーム」するなど、全くありえない!!
正しい診療は、質問者が良く理解しているように
(拡がりからして)「全摘は免れない」のだから、手術先行すべき⇒(その病理の)サブタイプによって「全身療法を考える」 全くシンプルな話です。
わざわざ「術前に浸潤癌と診断」する理由など全くない!!
「化学療法は(もし必要だとしても)術前でも術後でも変わらない」のだから、
(診断がついているのに、再度マンモトームをしてまで無理やり)浸潤癌を証明して「術前化学療法に持っていくことはナンセンス極まりない」(余程、術前化学療法好きなのでしょう)
☆★それらの残念なことは、ここまでにして、
「これからの事」を前向きに考えることが肝要です。
ご指摘したい事は誤った認識(主治医に、その責任の多くがあるようですが)がされていることです。
1.「リンパ節転移=抗癌剤」という認識自体が「大きな誤り」である
2.術前抗がん剤をする理由が全くない(無意味)
3.これから妊娠出産を考えるであろう24歳の女性に骨シンチが行われている。(全くセンスがない)
4.更に最も重要なのは、
腋窩リンパ節に転移を認めたからと言っても(理論上、微小浸潤は有る筈ですが)『あくまでも、腫瘍としては非浸潤癌が中心であり早期癌である』という認識が必要です。
それを(無駄に)骨シンチなどさせられて「私って、進行しているの??」みたいな精神状態にもってかれているとしたら、その主治医の責任は看過できないものです。
「範囲が広いため全摘は免れない」
⇒これは正しい。
だからそもそも「術前抗がん剤の適応など、全くない」のです。
「どこかに浸潤がんが潜んでいるのは間違いない」
⇒これも考え方としては正しい。(実際には、手術標本で隈なく探しても浸潤部分が見つからない事もありますが、その場合でも「微小浸潤癌」として扱います)
「リンパに転移があるとなると抗ガン剤をしなければならない」
⇒そもそもこの発想が「前時代的」であり、全くの誤りであることは、最近の「今週のコラム 98回目~100回目」を読むと解ります。
今週のコラム 98回目 ♯このグレーゾーンを「AとBに分ける」ためにOncotypeDXがあるのです。
今週のコラム 99回目 ★グレードは「参考程度」ということでいいですね?
今週のコラム 100回目! 「若いから」抗ガン剤をしましょう。は過ちなのです。
「あなた若いから手術より先に抗ガン剤をやった方が良いかもしれない」
⇒????
全く!!
何の根拠もない!!
大学病院の医師は本当に「術前化学療法好き」と非難されても仕方がありませんね。
「もしこの検査で浸潤がん部分が見つからないと」
⇒そもそも、わざわざ「マンモトームを2回おこなってまで浸潤癌」を見つける理由がありません。
「手術標本で確認すればいいだけ」の話です。
★無理やり「術前抗がん剤にもっていく」ために、(診断がついているのに)「何度もマンモトームされる」患者さんには大変迷惑な話です。
「主治医の勧めのまま術前化学治療に向けて後日骨シンチ検査をしました。」
⇒そもそも骨シンチを撮る事自体、センスがない!(微小浸潤があるのか?というレベルで骨転移があるかも、と想像する事自体、診療経験不足であり、患者さんの年齢を考えるべき)
「全摘は免れないならまずは全摘手術して病理結果を待ち、その結果を見てから術後化学療法でも良いのでは?と思えてきました。」
⇒100%正しい理解です。
ものごとは、そのように「シンプルに考えるべき」なのです。
「おっしゃっていたのにもかかわらず術前を勧めるのは何故?若いと進行が早いから?」
⇒大学病院の医師達は(手術手技に自信がないことも一因だと思いますが)「術前化学療法好き」なのです。
「先に全摘を希望するなら骨シンチ検査は必要無かったのではないかと 今になって後悔」
⇒過ぎた事は仕方がありませんが…
若い女性にとっての被爆の影響は、頭に入れるべきでしょう。(これからも、無駄な検査の提案をされた際には、勇気を持って断固として断るべきです)
「*リンパ節の細胞診結果は信用できるものなのか。」
⇒細胞診の偽陽性はかなり少ない(偽陰性は多いですが…)ことは事実です。
「*24歳という年齢は、術前化学療法を勧める意味のある若さなのか。」
⇒全く無意味
「*しこりがないのに転移という状態はありえるのか。」
⇒それは(前年ながら)あり得ます。
手術標本を隈なく探しても、(どうしても)浸潤を証明できないこともあります。
「*浸潤がんのサブタイプがわからないまま化学療法をすることは場合によってはありえるのか。」
⇒全くありえません。
「主治医は術前化学療法をするつもり」
⇒全くナンセンス。
「質問以外に、田澤先生の気になる部分があれば重ねてご指摘、ご意見」
⇒私が指摘したいのは…
想定されるステージはpT1mi~pT1a, pN1, pStage2A
あくまでも早期乳癌です。
必要以上にリンパ節転移にショックを受けない様にしましょう。(ましてや、抗癌剤が必須などナンセンス極まりない話なのです)
きちんと、やるべきこと(全摘して、手術標本で浸潤部分のサブタイプを確認して、それに応じた治療をする)をやる。 物事は至ってシンプルにできているのです。(其の主治医が複雑にしているだけです)
(参考までに)
リンパ節転移だけで(乳腺内には)術前に癌が見つからなかった症例(今思えば、前医で針生検を外していただけのように思いますが)で手術を最近しました。
手術標本では(前医で針生検で良性だった)部分に、非常に小さいながら癌が見つかり、そのサブタイプで全身療法を行う事となりました。
それでいいのです。
物事はありのままを受け入れること。
それが肝要なのです。
質問者様から 【質問2】
娘のことについて質問させてください
性別:女性
年齢:24歳
こんばんは。
以前24歳の娘のことで質問させていただいた者です。
その節は的確な回答を本当にありがとうございました。
その後、PET検査を打診されましたが田澤先生のお言葉をふまえて、勇気を持って断ることができました。
何も知らなければ出来なかったことですので、田澤先生のご意見をいただいていて良かったと思いました。
お礼を述べるために貴重な質問枠を戴くことを遠慮しておりましたが、
今回新たに質問させていただきたく、この場を借りて改めて御礼申し上げます。
まずは11月(中旬)日に左胸全摘手術先行となりましたことをご報告いたします。
腋窩リンパ節レベル2まで郭清しました。
病理の結果が出て、治療方針も提示されました。
データはいただけなかったのでざっとメモした内容です。
T4b or T1a (3mm)N1(3/21)
ER (0)
PgR(0)
HER2 3+
ki67 41%
grade3
T4b or T1aとなっているのは、病理では乳頭皮膚への浸潤がわずかに見られたそうで、しかしながら乳房内のガン細胞は大部分が非浸潤がん、
その中に極小さな浸潤がんが散らばっていたとのこと。
最大浸潤経としては3mmなのでそのような表記をされているようです。
また、リンパ節への転移は最大で17mmのものがあったそうです。
術後の治療としまして、HER2 陽性ということで、dd AC→ T+ハーセプチン、放射線治療25回を提示されました。
以下のことについて質問いたします。
dd ACはこのサイトで何度か目にして知っておりましたが、 ACより副作用がかなり強いと認識しております。
主治医は、「あなたの場合若いから、今後の生存率のことを考えてもっとも強力な治療をするべきだと思う」と言われました。
娘は確かに若く
体力もありますが、
①骨髄抑制のリスクを冒してでもやった方が良い治療ですか?
ACとdd ACの再発率の違いはどのくらいあるのでしょうか?
放射線治療25回は乳頭皮膚への浸潤が見られたことと、リンパ節が最大で17mmであったことから、胸壁と鎖骨下への照射を勧められましたが、
②この場合放射線治療をするべきなのでしょうか?
ようやく手術が終わりましたが、HER2 陽性のため化学療法必須と聞いて、娘たち夫婦(結婚いたしました)の新婚生活は抗ガン剤治療から始まることになります。
彼女たちの将来の夢は後回しになってしまいますが、その将来のために、必ず治療をやり遂げられるようまだまだサポートが必要だと覚悟を決めております。
ご回答を今後の治療の参考にさせていただきますので、よろしくお願い致します。
再質問管理番号:ななたは
再質問タイトル:術後の治療について
再質問管理番号:ななたは となっています。
スマートフォンからひらがな入力をしたのでしょうか。
内容から 管理番号 5546 に追加しました。
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
「①骨髄抑制のリスクを冒してでもやった方が良い治療ですか?」
⇒通常のACでいいでしょう。
「 ACとdd ACの再発率の違いはどのくらいあるのでしょうか?」
⇒ER陰性では効果があるという文献はありますが…
そもそも実績数が少なく、抗HER2療法自体が強力なので「敢えて、アンスラサイクリンで無理をする」必要は見当たりませんが…
「②この場合放射線治療をするべきなのでしょうか?」
⇒不要です。
乳頭部分は明らかに限局しているわけですから、臨床的にT4と扱う必要はありません。
リンパ節転移3個を(放射線照射の)根拠としているのかもしれませんし、(主治医が強調する)「若さ」かもしれませんが…
きちんと郭清しているのであれば、(4個以上でもないし)不要です。
「娘たち夫婦(結婚いたしました)の新婚生活は抗ガン剤治療から始まることになります。」
⇒私は(職業柄?)様々な患者さんを見てきました。
やはり、御主人が一生懸命に患者さんをサポートしていることは大きな強みだと感じています。
(新米)御夫婦にとって、更なる絆となることと思います。
質問者様から 【質問3】
乳頭皮膚への浸潤について
性別:女性
年齢:24歳
田澤先生こんにちは。
お世話になります。
毎回丁寧なご回答をありがとうございます。
先日診察時に説明された内容でわからないことがあったため、再々度の質問をお許しください。
(内容が重複していると感じられましたら申し訳ありません)
病理の結果、乳頭皮膚への浸潤が見られたということで、
「あなたの場合、しこりが無く浸潤部分も最大3mmと微小なのにリンパ節に3個も転移があり、しかもひとつは17mmにもなっていた。
このようなことはあまり経験がない。
乳頭にはリンパ管や血管が非常に豊富なため、乳頭皮膚への浸潤がリンパ節への転移を起こしたと考えざるを得ない。
病理の先生がわざわざ電話でこのケースはステージはどうしたらよいのか?と聞いて来たくらい珍しいです。
リンパ節転移3個ということと、乳頭皮膚への浸潤があるとなるとステージは3bとなり、進行がんという扱いになります」と言われました。
先日の田澤先生のご回答では、「乳頭は明らかに限局しているわけだからT4と扱う必要はありません」とコメントいただき乳頭皮膚への浸潤に関しては深く気にしないようにしていたのですが、娘のケースでは、非浸潤がんが乳管内を乳頭に向かって伸展して行く中で浸潤が始まり乳頭皮膚にも浸潤していたということで、それは浸潤部分がたまたま乳頭であっただけという理解でよろしいですか?
以前の田澤先生の他の方への回答の中に、「本物のT4となんちゃってT4は全く扱いが異なる」とのコメントを読みましたが、乳管内を伸展してきたがんが乳頭部分で浸潤していた場合でも後者のなんちゃってT4になり、ステージは皮膚浸潤が無かった場合のⅡaと変わらないと考えて良いのでしょうか?(乳頭皮膚への浸潤は、病理の結果わかったことで、術前に乳頭の症状を指摘されたことは一度もありません)
また、乳頭には血管やリンパ管が豊富と聞き、リンパ節転移があったのなら血行性転移もあるのでは、、との不安が大きいです。
リンパ節が17mmとなる時間経過を考えると血行性転移の可能性もありえますか?
来週から抗ガン剤治療、続いて数ヶ月後には抗HER2 療法が始まります。
できうる治療を完遂するしかないのは理解しているのですが、もともと非浸潤がんと診断されていたものが数ヶ月で進行がんとなるなんて信じられません。
お忙しいところ申し訳ありませんが、不安を払拭したく、田澤先生にご回答いただけると幸いです。
よろしくお願い致します。
田澤先生から 【回答3】
こんにちは。田澤です。
申し訳ありませんが…
私に対して「担当医がこう言った。ああ言った。」というのは全く響かない(無意味な)ことです。
「「あなたの場合、しこりが無く浸潤部分も最大3mmと微小なのにリンパ節に3個も転移があり、しかもひとつは17mmにもなっていた。このようなことはあまり経験がない。」
⇒??
担当医は「経験不足」かもしれませんが…
世の中には「原発不明癌」といって、「腋窩リンパ節転移」はあるが、(乳腺に)原発巣が見つからない事もいくらでもあります。(私自身、数えることもできません)
また、「浸潤径数ミリ」で「腋窩リンパ節転移」など最近の(私の)症例にもありました。
☆その担当医にとっては「珍しい」かもしれませんが…
私にとっては(有る程度経験豊富な医師達にとってもそうだと思いますが)、「全く珍しくも無い」ことです。
「それは浸潤部分がたまたま乳頭であっただけという理解でよろしいですか?」
⇒その通り。
「リンパ節が17mmとなる時間経過を考えると血行性転移の可能性もありえますか?」
⇒リンパ行性転移と血行性転移は全く別物です。
根拠がありません。