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今週のコラム 98回目 ♯このグレーゾーンを「AとBに分ける」ためにOncotypeDXがあるのです。

台風ですね。(この時期は仕方がないとはいえ…)

せっかくの「3連休」が台無し。(日本経済にも打撃がありそうですね。「旅行のキャンセル」とか、「外出控え」など)

 

私はというと。

「貯まっていた仕事を片付け、(更に)先の仕事までやってしまう」とても貴重な休日となっています。

ただ、私にとっての台風は…

「雨の中、走るの不快だな。」そういうことです。

 

FMから流れたshort story

「これは、これは、教授。 広くてとても立派なキャンパスですね。」

「そうです。我が校の自慢のキャンパスです。」

「この(素晴らしい)キャンパスでは、どのくらいの学生が勉強しているのでしょうか?」

「えー、そうですね。良く見積もっても全体の一割というところでしょう。」

 

前回のコラムで「OncotypeDXについて情報提供を受けていた」とお話しましたが、内容的には「検証(データベースを基にして、その正しさについて)」と「最新情報」でした。

ますます「その存在感を増しつつある」OncotypeDXについて、このコラムで取り上げる事としました。

3部作?位になりそうですが、この機会に理解を深めましょう。

 

OncotypeDX(序章)

 

治療法の選択

歴史的背景

1.リンパ節転移「有」か「無」か?の時代

私が医師になった20年以上前には乳がんの治療は非常に単純なものでした。

そもそも乳がんの患者数が(今から比べると)感覚的には1/10位のものであり、

「乳腺外科医」などというものは存在せず、一般外科医が(胃や大腸を手術するように)「今日は乳がんの手術だね。珍しいね。」的な感じでした。

当然、術後の薬物療法は単純なもので「リンパ節転移陰性ならタモキシフェン、陽性ならケモ(化学療法)」でした。

私の古い記憶では(リンパ節転移のある患者さんには)、病理結果も出ていない(術後2日目に)CMF(懐かしい!)の点滴をしていました。

 

2.レセプター+リンパ節転移を組み合わせる時代

この頃(15年くらい前かな?)になると、(より専門性が要求されるようになり)治療方針決定が(一般外科医にとっては)負担となってくるようになり、(患者数の増加もあり)乳腺外科医が誕生することになります。

♯ただ、そうは言っても(殆どの)乳腺外科医は(他の外科医から乳癌患者を一手に引き受けるが)あくまでも診療の中心は消化器などの一般外科でした。(乳がん患者は今ほど多くはなく、乳腺だけで飯が食えるなど誰も考えていなかったのです)

このころは「病理因子」と呼ばれる「腫瘍径」とか「リンパ節転移の個数」「脈管侵襲(未だにこれを気にする乳腺外科医は多いですね?)」「組織学的グレード」などを複雑に絡みあわせて治療方針が決まったのです。

○現在、サブタイプの時代となっても、この当時の呪縛から逃れられない乳腺外科医が多い事は、QandAでよく見かける通りです。

 

3.サブタイプの時代

時代はすすみ、基礎研究の方からintrinsic subtypeという概念が登場します。(これについては、「トップページ」の「乳がんの分類」をご参照ください)

癌というのは(乳がんに限らず)「遺伝子変異が原因」です。

その治療法に「遺伝子発現レベル」からアプローチするものです。

☆これは、ルミナールタイプ(ホルモン療法が効くタイプ)を『抗癌剤が効くタイプBと全く無効なタイプA』に(遺伝子発現レベルを基に)分けることになりました。

ただ、ここで問題が生じます。

この「intrinsic subtype」はマイクロアレイを用いた分類であり、(研究室レベルのもので)一般診療には到底使えないのです。

「どうやったら、(マイクロアレイを用いずに)一般診療でルミナールAとBにわけられるのか?」

 

そこで白羽の矢がたったのが「Ki67」です。

♯細胞は「休止期にある細胞」と「細胞分裂期にある細胞」に分かれます。

この「細胞分裂期にある細胞」を(免疫染色で)染めるのがKi67なのです。

Ki67=100%とは「全ての(癌)細胞が細胞分裂期にある」ということを意味し、逆にKi67=0%だと「全ての(癌)細胞が休止期(分裂していない)にある」となります。

 

○化学療法のターゲット

話は少し逸れますが…

抗癌剤は細胞増殖を障害することで効果を発揮します。

具体的に言えば

アンスラサイクリンなら「RNAやDNAの合成阻害」

タキサンなら「細胞分裂阻害」

 

つまり、「盛んに増殖する癌細胞には抗癌剤は効くけど、増殖が鈍い癌細胞には抗癌剤は効きにくいのでは?」

当然、皆が考えることです。(話は、そう単純ではないのですが…)

 

☆こうして「細胞分裂期の割合=Ki67=抗癌剤の効き易さ」となったのです。

Cut off値 最初期にはKi67=14までをA、それより上がBとされていました。

ただ、この値は「あまりにも低すぎる」ことは明白であり、

私が(数多くのOncotypeDXの結果を基に)分けると

Ki67 ≦20   A

20 < Ki67 < 40 グレーゾーン

だと、思います。

このグレーゾーンを「AとBに分ける」ためにOncotypeDXがあるのです

OnotypeDXとは。

16個の腫瘍関連遺伝子の発現をRT-PCRで定量化し、数値化したものがRecurrence Score(RS)です。これは5個の参照遺伝子(reference gene)を用いてサンプル間の遺伝子発現のバラつきを補正しています。

 

 

 

 

 

 

 

 

RS = 0.47 x HER2 group score – 0.34 x Estrogen group score + 1.04 x proliferation group score + 0.10 x invasion group score +0.05 x CD68 – 0.08 x GSTM1 – 0.07 x BAG1