[管理番号:2417]
性別:女性
年齢:56歳
はじめまして。
乳癌告知後、こちらのQ&Aを拝見、大変わかりやすい解説で毎日チェックしていました。
いよいよ術後の治療方針を決めることになり、抗がん剤をすべきかどうか迷っています。
下記に経過と術後病理結果を記載しますので、先生ならどういう治療を勧められるか、教えていただけないでしょうか?
記
(経過)
56歳 女性 既往症(昨年11月より血圧の薬 アムロジビンOD服用中)
昨年12月○日人間ドックのエコーにより要精密検査となり、12月○○日針生検にて左乳癌と診断を受け、1月○○日左乳房部分切除術。
センチネルリンパ節生検実施。
(術後病理結果)
充実腺管癌
リンパ節 転移 陰性(0/4)
浸潤径11㎜×11㎜ ステージⅠ
組織学的異型度グレードⅢ
脈管侵襲 あり(血管かリンパ管どちらか不明)
なしKi67 52.3%
ホルモン感受性あり ERスコア3b(50%以上)、 PgR
陰性0% ルミナールB
HER2 1+ FISH法 陰性
断端 陰性
(病理の方で、特殊ガンのアポクリン癌も疑われて、検査されたようですが、そちらの方は陰性とのことでした。
トリプルネガティブに近いでしょうか?)
主治医の先生は「グレードⅢ」や「Ki67 52.3%」だから(=ルミナールBだから)、術後の治療は、抗ガン剤TC4クール、放射線、ホルモン療法5年を勧めますとおっしゃっています。
もし、TCが絶対いやだということであれば、経口抗ガン剤のUFTを2年間、放射線、ホルモン療法5年でも・・・言われ、次週にはどちらか結論を出すように言われました。
気になるのが組織学的異形度グレードⅢ、Ki67
52.3%、脈管侵襲あり、PgR 陰性です。
せっかくドックで早く見つけてもらったのに、顔つきの数字、増殖能の数字にショックを受けました。
主治医の先生は脈管侵襲について、あまり問題ではないと言われたのですが、気になります。
また、ホルモン感受性もエストロゲンのみ陽性で、高度ホルモン反応性とはいえ不完全ホルモン反応性に近いようなことをおっしゃってました。
ホルモン治療は効果あるのかも心配です。
今後の治療は、私としては、仕事を続けたいので、副作用(脱毛)の少ないUFTで2年間と放射線、ホルモン治療、を考えていたのですが、「異型度グレードⅢ、Ki52.3%だからTCが効果があるのでは・・・?」と家族に言われ、迷ってしまい、思い切って先生ならどう判断されるか質問する事にした次第です。
どうぞよろしくお願いいたします。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
pT1c(11mm), pN0, pStageⅠ, luminal, HGⅢ
十分な早期乳癌です。
「術後の治療は、抗ガン剤TC4クール、放射線、ホルモン療法5年を勧めますとおっしゃっています。」
⇒私も担当医と同意見です。
浸潤径が11mmと微妙ですが、「ルミナールB」として抗がん剤の適応となります。
抗がん剤をするならTCを選択します。
「もし、TCが絶対いやだということであれば、経口抗ガン剤のUFTを2年間、放射線、ホルモン療法5年でも」
⇒私はUFTを勧めることはありません。
UFTは過去の抗がん剤(CMF)と比較して「非劣勢を証明できず」に標準治療とはなれなかった経緯があります。
「気になるのが組織学的異形度グレードⅢ、Ki67 52.3%、脈管侵襲あり、PgR 陰性です。」
⇒私には、それ程気になりません。
ただ、「ルミナールB」として化学療法の適応とはなります。
「主治医の先生は脈管侵襲について、あまり問題ではないと言われたのですが、気になります。」
⇒私も「主治医の意見に同意見」です。
「ホルモン感受性もエストロゲンのみ陽性で、高度ホルモン反応性とはいえ不完全ホルモン反応性に近いようなこと」
⇒無意味です。
エストロゲン反応性が十分にあるので、「プロゲステロンを気にする」必要はありません。
「ホルモン治療は効果あるのかも心配です。」
⇒効果があります。
心配ありません。
「私としては、仕事を続けたいので、副作用(脱毛)の少ないUFTで2年間と放射線、ホルモン治療、を考えていたのですが、「異型度グレードⅢ、Ki52.3%だからTCが効果があるのでは・・・?」と家族に言われ、迷ってしまい、思い切って先生ならどう判断されるか質問する事にした次第です。」
⇒私は、余計な因子など気にすることはありません。
単純に抗がん剤をするなら「エビデンスのあるTC」にします。
質問者様から 【質問2】
田澤先生
お忙しい中、ご回答頂きありがとうございます。
感謝申し上げます。
[管理番号:2417 (抗がん剤が必要でしょうか?)]で質問させていただいたものです。
追加で質問させていただきます。
「主治医から術後の治療は、抗ガン剤TC4クール、放射線、ホルモン療法5年を勧められています。」という状況ですが、
先生の回答では、
⇒pT1c(11mm), pN0, pStageⅠ, luminal, HGⅢ
十分な早期乳癌です。
⇒私も担当医と同意見です。
浸潤径が11mmと微妙ですが、「ルミナールB」として抗がん剤の適応となります。
抗がん剤をするならTCを選択します。
⇒私はUFTを勧めることはありません。
⇒私は、余計な因子など気にすることはありません。
単純に抗がん剤をするなら「エビデンスのあるTC」にします。
と回答頂きました。
そこで、再度お聞きしたいのは、
①私は、出来れば副作用の強い抗がん剤はしたくないのですが・・・私のような状況下の患者に、田澤先生でしたら積極的に抗がん剤を勧められますか?
②抗がん剤をしないで放射線、ホルモン療法のみという選択肢はありえないのでしょうか?
③私のがんのタイプは抗がん剤がよく効くタイプで、抗がん剤をすることにより再発率が大きくかわるものでしょうか?(ホルモン療法への上乗せ効果(%)がわかれば教えていただけないでしょうか)
お忙しい中、何度もすみませんが、どうぞよろしくお願いいたします。
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
pT1c(11mm), pN0, HGⅢ, luminalB
追加質問ですね。
「①私は、出来れば副作用の強い抗がん剤はしたくないのですが・・・私のような状況下の患者に、田澤先生でしたら積極的に抗がん剤を勧められますか?」
⇒積極的には勧めません。
トリプルネガティブとは異なり「luminal B」では術後療法の主役は「あくまでもホルモン療法」なのです。
○luminal Bなので「化学療法の適応」についての話はしますが、必須ではないのです。
「②抗がん剤をしないで放射線、ホルモン療法のみという選択肢はありえないのでしょうか? 」
⇒当然あります。
あくまでも「luminal type」なのです。
「③私のがんのタイプは抗がん剤がよく効くタイプで、抗がん剤をすることにより再発率が大きくかわるものでしょうか?(ホルモン療法への上乗せ効果(%)がわかれば教えていただけないでしょうか)」
⇒僅か3%です。
それでは「何故、抗がん剤の適応があるのか?」
治療方針のガイドラインは、「個別対応」ではありません。
だから、どうしても「細かい線引きは不可能」なのです。
「luminalBは化学療法が必要」という「大雑把な線引き」のために、(質問者のように)『上乗せ僅か3%なのに、化学療法の適応あり」となってしまう』ケースが出てくるのです。