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最善の選択② 

こんにちは。田澤です。

悩まれているようなので、ブログで「先行掲載」します。

Q

タイトル:

最善の選択 ②

 

性別:

女性

 

年齢:

49

 

メッセージ本文:

前回は、素早いご対応ありがとうございました。

 

 

今回は、抗がん剤について質問します。

 

私はサブタイプHER2(ERとPgRは陰性)です。

 

抗がん剤は、タキサン系+ハーセプチンを3か月・アンスラサイクリン系を3か月と言われました。(その後ハーセプチンを1年ほどやるようです。)

 

HER2タイプには、ハーセプチンが良く効くとのことですが、アンスラサイクリンとは併用できません。

3か月ハーセプチンがあいてしまいます。

良く効くというハーセプチンを休んでまで、アンスラサイクリン系をやらないといけないのでしょうか?

タキサン系のように併用できる抗がん剤はほかにないのでしょうか?

 

一般的な抗がん剤治療として、タキサン系とアンスラサイクリン系の組み合わせが良いのでしょうが、HER2タイプにはハーセプチンを休まず使える抗がん剤を組み合わせるのが最善ではと思うのは素人考えでしょうか?

 

 

もう1つ質問です。

分子標的治療薬について調べていてみつけたのですが、

術前抗がん剤治療で、HER2タイプではハーセプチンを使うことで大幅な改善が認められたというものです。

HER2タイプには良く効くので、術前でも効き目が高いのはそうなのだろうと思いました。

 

ほかのサブタイプの人に比べてHER2タイプは、術前抗がん剤治療が適しているのでは?

 

 

たしかにハーセプチンが100%効く保証はないのでリスクはあります。

でも、切除部分が少なくなる(かもしれない)のは、体と心の負担軽減になります。

また、手術より確実に早く治療にとりかかれるプラス面があります。

 

 

前回の質問まではまず手術と思っていましたが、今は揺れています。

 

分子標的治療薬はまだ新しいので、データもあまりないでしょうか?

 

 

 

A

こんにちは。田澤です。

HER2タイプは「全てのサブタイプの中で最も抗がん剤(抗HER2療法)が効き易い」治療であることは間違いありません。

但し、「100%効果がある」訳ではありません。

 

「小さくして温存」という目的以外には(万が一のリスクがあるだけで)「術前抗がん剤を行う意味が無い」のは「他のサブタイプと何ら変わりはありません」

術前抗がん剤を理解する上で重要なことは

「術前術後の化学療法で用いることができる薬剤は限られている」アンスラサイクリンとタキサンだけだという事実です。(HER2陽性の場合は例外的にカルボプラチンもあります)

よく、(術前抗がん剤を勧める理由として)「薬剤の効果が解る」という医師がいますが、現実には「使える薬剤は限られているので、無意味」なのです。

 

 

■回答

「良く効くというハーセプチンを休んでまで、アンスラサイクリン系をやらないといけないのでしょうか?」

⇒ハーセプチンは有効ではありますが、「単剤では有効では無い=一般の抗がん剤との併用が必要」であることも解っています。

 

それで併用する抗がん剤ですが、(歴史的に)最もエビデンスの高い薬剤が(群を抜いて)「アンスラサイクリン+タキサン」なのです。

ご存じだと思いますが、ハーセプチンとアンスラサイクリンは心毒性の間系で同時併用はできないのです。

と、いうことで一般的に推奨されるのが「質問者が担当医から提案されたレジメン」なのです。

 

 

「タキサン系のように併用できる抗がん剤はほかにないのでしょうか?」

⇒HER2タイプでは(術前術後の抗がん剤として)カルボプラチンがあります。

 

ただし、レジメンは決められています。

以下に「非アンスラサイクリンレジメン」を示しますが、あくまでも「アンスラサイクリンを避けたい」場合に選択するものであり、「アンスラタキサンに及びもの」ではありません。

アンスラサイクリンを避ける理由(心機能が悪い、副作用に対して強い抵抗がある、十分早期である)

♯ これらに、直接比較試験などありません(全て新しいものばかりです)

 

 

①パクリタキセルとハーセプチンを毎週投与(12回)⇒ハーセプチン単剤(14回)

「最初の12回の毎週通院」は「通院は大変」ですが、「副作用は格段に楽」です。 その後のハーセプチン単剤には副作用はありません。

②タキソテール+エンドキサン+ハーセプチン(4回)⇒ハーセプチン単剤(14回)

これは、「全て3週毎通院」となります。

①と比較すると「通院回数が少ない」ことが利点ですが、「副作用は①よりは、やや強い」と言えます。

効果に関しては①との直接比較はありませんが、「パクリタキセル(毎週12回)=ドセタキセル(3週投毎投与4回)」と考えると②の方が「エンドキサン分」上乗せされると思います。

③タキソテール+カルボプラチン+ハーセプチン(6回)⇒ハーセプチン単剤(12回)

 

 

「HER2タイプにはハーセプチンを休まず使える抗がん剤を組み合わせるのが最善ではと思うのは素人考えでしょうか?」

⇒現時点でのエビデンスでは「アンスサイクリン及びタキサンと組み合わせるのが最善」といえます。

 

HER2陽性だからといって、「アンスラサイクリンとタキサン」が最も効果を期待する薬剤であることには変わりはありません。

★pertuzumabも含め他の薬剤との併用は「転移再発乳癌でした適応」がありません。

術前術後に用いる薬剤は決まっているのです。

 

 

「ほかのサブタイプの人に比べてHER2タイプは、術前抗がん剤治療が適しているのでは?」

⇒HER2タイプに「抗HER2療法が有効」であることと、それが「術前に適している」こととは無関係です。

 

「術前」に効くものは「術後」にも効くのです。

術前にした方がいいという理由にはなりません。

 

 

「切除部分が少なくなる(かもしれない)のは、体と心の負担軽減になります」

⇒これは「小さくして温存」という意味ですか?

 

それであれば「リスクを冒してでも術前抗がん剤を行う」意味はあります。

ただし、「乳房切除では切除範囲は一緒」だし、「腋窩リンパ節も、化学療法前に転移していた範囲は郭清」します。

 

 

★HER2タイプに「抗HER2療法が効き易い」ことは「術前化学療法が勧められる」理由にはなりません。

他のサブタイプ同様「小さくして温存」以外の理由で「術前化学療法を勧めるのは誤り」だと思います。

 

 

「分子標的治療薬はまだ新しいので、データもあまりないでしょうか?」

⇒そんなことはありません。

 

抗HER2療法も「術前抗がん剤中に増大するリスク」はあります。

「小さくして温存」以外の理由で、そのリスクを埋め合わせるものは無いと思います。