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全摘なのに断片陽性

[管理番号:7544]
性別:女性
年齢:41歳
病名:乳がん
症状:

初めて質問させていただきます。

このような機会を設けてくださり、感謝しております。

先月、左の全摘をし、以下のような結果がでました。

組織診断
Left breast: Invasive ductal carcinoma
Immunohistochemistry: ER+,PgR+,HER2 score 1
組織所見
Surgical material: Left breast
Total mastectomy
Size of surgical material: 150*120*28mm
Location: Left E area
Tumor size: IDC: 4*2mm
DCIS: 10*7*49mm
Histological type: Intracystic papillary carcinoma
IDC: solid type
乳管内成分(+: cribriform > papillary flat type )
共存する乳管内成分が predominant (+)
Grade; IDCの場合: NG 1, HG I
DCIS; NG 1
Lymph node: Sentinel=0/3 (frozen)
Vessel invasion: Ly0, V0
Surgical margin: Positive DCIS on section #1 (2*3mm)
Chemotherapy effect(乳房): Not done
Stage: pT1aN0Mx StageⅠifM0

Comment: 乳頭直下に被膜に覆われた嚢胞内病変が主体で核腫大を伴う腫瘍細胞の増生を認めます。
嚢胞内病変の複数個所でp63染色が欠損
し、
二相性の破綻があることから浸潤癌と考えます。
内側へ向かってDCISが
広がっており、内側断端陽性(病巣に熱変性あり)です。

#23,#24を追加切りを行い、DCISが連続病変であることを確認しています。

#2,5,8には乳管内出血、炎症細胞の増生を認め外的な要因の影響を考えます。

Immunohistochemical examination was performed on section
#11
ER: + 90% (1%以上を陽性)
PgR: + 90% (1%以上を陽性)
HER2/neu; score1
Ki67: 30% (hot spot, 強拡大で評価)

以下、質問になります。

・理論的にはあり得ないことですが、病理結果で断片が陽性だったので追加切除をお願いしましたが、
全摘したので切除する場所がないから手術はできないといわれました。

 追加でやるなら放射線だそうですが、現在、エキスパンダーが挿入されているので、抜去の必要性があるかもしれないそうです。

 素人としては陽性部分や接触面があるので、そこが切除できるのでは?と思えます。
放射線で重大な副作用もなく効果が狙えるのであれば
放射線でもよいのかもしれませんが、先生はどのようにお考えになりますでしょうか。
(エキスパンダー抜去等、再建上の不利益は構いません。)
・内側で再発した場合予後が悪いなど、再発部位によって予後の違いはあるのでしょうか?
・今後の治療として、ホルモン療法5年(血液検査の結果次第でリュープリンを2年行う)と言われていますが、
 これは妥当でしょうか?Ki67が30%なので、ルミナールBではないかと感じています。

この場合、化学療法も行うと思いますが、主治医の先生は30%はたいした高値ではないので、化学療法は不要とおっしゃいます。

オンコタイプDXを行う必要性についても伺いましたが、必要ないとのことでしたが、明らかでしょうか。

・乳がんの性質、サイズ等、病理結果を踏まえ、先生でしたら、どういった治療をお考えになるか、教えてください。

まだ本当に初期と言われていますが、断片が陽性ということで、すでに再発や転移(が確定)したような気持ちで落ち込んでいます。

子供たちがまだ小さいため、ここでできる限りの治療をして、とにかく元気なままで20年は生きていたいと考えています。

どうぞよろしくお願いいたします。

 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。

「全摘したので切除する場所がないから手術はできない」
「追加でやるなら放射線だそうです」

→これには矛盾がありますね。

 そもそも「非浸潤癌で陽性」ということは、手術の際に「乳腺に切り込まない」限り(つまり「きちんと」全摘している限り)断端陽性はあり得ないのです。
 
 ★術者が自信をもって『全摘なのに乳腺に切り込むなど、ありえない』と、笑い飛ばせれば(そもそも)「放射線を提案する必要がない」のです。
  逆に言えば… 「放射線してもよい」と考えているならば、「残っているかもしれない=乳腺に切り込んだかどうか自信がない」という事になるのです。(それであれば、切り込んだかもしれない部分を追加手術すべきでしょう)

 『今週のコラム 86回目 このようにすれば、全摘で深部側断端が陽性となることはないのです』をご参照のこと。

 執刀医としては「切り込むことはありえない」と自信をもって言うか①、(自信が無いなら)「放射線ではなく」断端側の組織を追加手術するか② ①か②どちらかにしてもらいたいものです。

「素人としては陽性部分や接触面があるので、そこが切除できるのでは?と思えます。」
→本当に陽性ならば(切り込んでいる可能性があるなら)そうすべきです。

「放射線で重大な副作用もなく効果が狙えるのであれば放射線でもよいのかもしれませんが、先生はどのようにお考えになりますでしょうか。」
→放射線など、全く「馬鹿げている」と思います。
 上記コメント通り

「化学療法も行うと思いますが、主治医の先生は30%はたいした高値ではないので、化学療法は不要とおっしゃいます。」「先生でしたら、どういった治療をお考えになるか、教えてください。」
→追加手術するかどうかは、もう一度主治医に「切り込んでいない自信があるのか?}確認するといいでしょう。(自信がないなら「放射線ではなく」追加手術してもらいましょう)

 全身療法は、当然ながら(Ki67=30%はグレーゾーンなのだから)OncotypeDXすべきです。(患者さん側から聞かれて拒否するなど「私的には」あり得ない)

 
 

 

質問者様から 【質問2 】

全摘なのに断片陽性
性別:女性
年齢:41歳
病名:
症状:

先日はお忙しい中ご回答くださいまして、ありがとうございました。

恐れ入りますが、再度質問させてください。

・全摘での断端陽性について
科内のカンファレンスで議論したそうですが、ガイドライン等にも対応が載っておらず、これという結論はでなかったそうです。

今度、放射線・病理部門とのカンファレンスで再度、議論してくださるそうですが、現在のひとつの案として、
(エキスパンダーが入っているので)約半年後のインプラントに入れ替えるときに追加切除をするというものを提案されました。

ただ、疑わしい部分を追加切除したからといって、確実にがんがきちんと取りきれるとは限らないとのことでした。

私としては確認できなかった場合、がんが残っているかもしれないという再発の恐怖の中で日常を過ごすのはとてもつらいものがあります。

取り切れていることが確認できなかった場合、放射線照射をするなど、何か対応策があるものなのでしょうか?
(そもそもきちんと取り切れる保証はないものなのでしょうか?)
また、非浸潤がんの部分とはいえ、半年も断端陽性の状態を放置して大丈夫なのでしょうか?

・ルミナールAなのかBなのか(Ki67=30%のため)
再度、オンコタイプDXをすることで自分が納得したいと伝えましたが、先生は検査に消極的でした。

以下の病理結果から抗がん剤は過剰診療になるからというのが、消極的な理由でした。

・ER 90% PgR 90%
・Grade; IDCの場合: NG 1, HG I DCIS; NG 1
・Tumor size: IDC: 4*2mm
・Lymph node: Sentinel=0/3 (frozen)
・Vessel invasion: Ly0, V0
浸潤がんの腫瘍径が小さければ(具体的に○mm未満等)どのようなサブタイプであっても
抗がん剤は勧めないなど、私の病理結果が当てはまるような抗がん剤を適用しないルールのようなものはあるのでしょうか?

・ホルモン療法について
現在、ノルバデックスを服用しています。

リュープリン注射は不要でしょうか。

お忙しい中恐縮でございますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。

今回の内容に「新たなもの」は一つもありません。(単に、その主治医たちの意見が書いてあるだけです)
このQandAは「事実に対して、私がコメントする」ものであり、「主治医の意見に対して、私が感想を述べる場ではない」のです。(正直、それには何の興味もありません)

論点は2つ
1.断端陽性なのか?
 それは、(カンファレンスで議論することではなく)「執刀医が、(責任をもって)乳腺にきりこんでいるのか?」ただ、それだけのことです。
 そして、(切り込んでいるのであれば)放射線ではなく「追加切除すべき」です。

2.化学療法すべきなのか?
 Ki67がグレーゾーンである以上、OncotypeDXを拒否することなど(医師として)「あってはいけない」