[管理番号:7883]
性別:女性
年齢:49歳
病名:乳がん トリプルネガティブ
症状:
田澤先生、お忙しい中、いつも真摯に乳がん患者と向き合ってくださり、ありがとうございます。
私の病歴をお伝えします。
現在、肺多発転移・がん性リンパ管症・胸膜播種の状態ですが、無症状です。
残念ながら、再発も進行も早く、希望はほとんど持てませんが、死ぬ時に納得できるように、できるだけ「たら」「れば」を少なくしておきたいので、ご協力をお願い致します。
2017年6月 47才で右乳房全摘手術
サブタイプ トリプルネガティブ
腫瘍径 2.5cm
浸潤性乳管がん(硬がん)
核異型度 3
脈管侵襲なし
センチネルリンパ節生検陰性のため、郭清なし
ステージⅡa
術後 AC療法・ウイークリーパクリタキセル
家族性乳がんの疑いあり 遺伝子検査するもBRCA遺伝子変異陰性
2018年2月~ 無治療
2018年6月 CA-15/3が46まで上昇
肺多発転移(最大のもので7mmとのこと)発覚
がん性リンパ管症
エリブリン開始
2018年10月 胸膜播種出現 TS-1に変更 再発が早いためパネル検査を行う
2019年1月~ CT上、stable 徐々に腫瘍マーカー下降し、基準値内キープ
①私は、センチネルリンパ節生検が陰性で脈管侵襲もなかったにもかかわらず、がん性リンパ管症となってしまったことに納得がいかないのです。
これは、センチネルリンパ節生検が偽陰性であったということなのでしょうか?
もし、偽陰性であったのならば、正しい結果(陽性)が出て、リンパ節郭清をし放射線治療をしておけば、肺転移のみでがん性リンパ管症にはならなかった可能性が高いのでしょうか?そもそもこのような考え方が、根本的に間違ってますか?
肺多発転移に関しては、手術時から画像検査では確認できないレベルでの転移が既にあったということでしょうから納得がいくのですが、がん性リンパ管症には疑問が残るのです。
②また、リムパーザについてお聞きしたいことがあります。
パネル検査の結果、私のがん細胞にはBRCAと同様の相同組み換え修復に関連する遺伝子変異があることがわかりました。
現在、私のような遺伝子変異がある集団へのリムパーザの研究が進んでおり、今後治験が出てくる可能性が高いと聞きました。
そこで、その遺伝子変異が、生殖細胞系列変異があるか体細胞系列変異のみかを今後調べることになっています。
リムパーザの欧米や日本での乳がん・卵巣がんでの適応を調べると、BRCAの生殖細胞系列変異または体細胞系列変異のどちらかがあればいいものと、生殖細胞系列変異がある患者に限られるものがありました(さらに、卵巣がんでは、遺伝子変異の有無にかかわらず、プラチナ製剤に奏功している患者も含まれますね)。
そこで質問ですが、BRCA変異の場合で教えていただきたいのですが、リムパーザは生殖細胞系列変異がある集団のほうが体細胞系列変異のみの集団よりも感受性が高いということですか?
もしそうであれば、私の遺伝子変異が体細胞系列変異のみであった場合は、(悲しいことにますます希望がなくなってしまいますが)今後治験に入れたとしてもあまり効果は期待できないということかなと思いまして…。
また、総合的に見て、どのような集団が、リムパーザの感受性が高く、耐性出現が遅い印象をお持ちでしょうか?
例えば、BRCA陰性でプラチナ製剤に奏功していた集団とBRCA陽性の集団とでは、それらに差異があるのでしょうか?
BRCA1変異と2の変異、年齢層での差異等はありますか?
③今後TS-1に耐性ができた時、先生ならば次の薬剤に何を選択されますか?また、あといくつくらい使用できる薬剤が残っているのでしょうか?
④私のような多発肺転移でがん性リンパ管症を伴っている場合、今後呼吸苦等が出現した際に症状緩和目的でのトモセラピーの適応になりますか?
⑤主治医の先生は言い出してくれないのですが、肺生検をお願いし、組織診・細胞診に出してもらおうと思っています。
私のように早期再発でも、原発巣とサブタイプが異なる可能性はありますか?
何か、質問の焦点がばらばらで恐れ入ります。
何とぞ、よろしくお願い致します。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
「そもそもこのような考え方が、根本的に間違ってますか?」
⇒間違いです。
リンパ節転移と癌性リンパ管省は「100%無関係」です。
「どのような集団が、リムパーザの感受性が高く、耐性出現が遅い印象をお持ちでしょうか?」
⇒残念ながら…
BRACAnalysisは陽性率が極めて低く、「印象」を持つほどの症例はありません。
「今後TS-1に耐性ができた時、先生ならば次の薬剤に何を選択されますか?」
⇒becacizumab + paclitaxelです。
ただ、PD-L1抗体の測定してますか?
「また、あといくつくらい使用できる薬剤が残っているのでしょうか?」
⇒docetaxel やvinorelbine、anthracyclineの再登場もありでしょう。 そのほかgemcitabineやcapecitabineもありますね。
「トモセラピーの適応になりますか?]
⇒一般的に…
癌性リンパ管症は「び漫性」なので、放射線の対象にはなりがたいと思います。
「私のように早期再発でも、原発巣とサブタイプが異なる可能性はありますか?」
⇒可能性は少ないし、肺生検はリスクがあるのでバランスしません。