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浸潤性小葉癌とiga腎症術後の治療

[管理番号:7474]
性別:女性
年齢:56歳
病名:浸潤性小葉癌
症状:

乳がんと診断されてからプラザで、勉強させていただいています。

田澤先生の回答から乳がんに立ち向かう勇気をもらっています。

本日はどうぞよろしくお願いいたします。

昨年末あたりから左胸に米粒大のしこり気付き針生検
クラス3だったので、がんセンターでマンモトーム生検後、
浸潤性小葉癌と診断されました。

生検結果
腫瘍の大きさ7㎜
ER陽性
PgR陰性
HER2陰性
Ki67 20~30%
リンパ節転移なし
ステージ1
ルミナルB
この時点では、術後は抗がん剤なしのホルモン治療のみの方針でした。

術式は、身体に負担のある放射線治療をしたくなったこと、腫瘍が小さかったことから、左乳頭乳輪温存乳房切除術とインプラント挿入同時再建を選択しました。

4月の手術後病理結果です。

腫瘍の大きさ1.2cm×0.9×0.8
ER陽性
PgR陰性
HER2陰性
Ki67 5~20%
グレード2
ステージ2A
術中のセンチネル迅速診断では転移なしでしたが、病理の結果2個のうち1個に0.3㎜の微小転移がありました。

術後の病理の結果説明の時、腫瘍が小さいのに微小転移があったことが気になるから抗がん剤(TC4回)の追加を勧められました。

術後のKi67の数値が20%以下であることからルミナルAの可能性をきい聞いてみました。

オンコDXをしないと分からないと言われたので、お願いしました。

高リスクとなった場合にのみ、抗がん剤を検討することになり、結果が出るまでは無治療です。

病歴
①30歳
甲状腺腫瘍が指摘され、細胞診で2回クラス3だったので、亜全摘出後
乳頭癌が見つかりました。

摘出後は、ホルモンの値も正常なので、ホルモン剤は飲まず、25年以上たっていますが、年1回のエコー検査しています。

手術のみで抗がん剤はしていません。

②50歳
蛋白尿潜血ともに増加のため腎生検
iga腎症と診断、9年(2022年)で25%の確率で透析移行となると宣告されました。

寛解を目指して、2013年~2014年にかけて、扁桃腺摘出とステロイド
パルス療法+ステロイド剤内服をしています。

現在は治療の効果もあり、塩分控えめの普通の生活をしていますが、
蛋白潜血ともに減少したものの寛解はしていません。

新宿区にある病院で2カ月ごとの血液検査と尿検査をしています。

乳がん手術前の血液検査結果
クレアチニン0.81
EGFR56.9%
推定1日蛋白尿0.3~0.55g
たんぱく1+
潜血1+

以上のことから先生の豊富な経験から術後の治療について質問させていただきます。

質問1
*抗がん剤について
現在オンコの結果待ちです。

Ki67の数値が20%以下であれば、上乗せ無しのように思うのですが、病理結果から高リスクとなる可能性はありますか。

腎機能低下のリスクがある抗がん剤治療は絶対にしたくないのですが、医師は抗がん剤の減量を提案しています。

もし、高リスクとなった場合、先生は抗がん剤を勧めますか。

質問2
*ホルモン剤について
アリミデックス1㎎を予定しています。

副作用に腎機能低下とありますが、その場合には、しばらく休薬して、
再開するなど、腎臓内科の先生と相談しながらの服用方法でよろしいでしょうか。

質問3
*無治療の再発率について
副作用で薬の服用ができないなど、治療が続けられなくなった時の再発率を教えてください。

質問4
*再発について
5年後、ホルモン剤が終了しますが、小葉癌は、晩期再発が多いと聞いています。
遠隔転移は、血行性転移のようですが、リンパに微小転移していても、腫瘍系が小さければ、その可能性は低いのでしょうか。

質問5
*小葉癌について
甲状腺癌を経験していることから、毎年マンモとエコーと触診を欠かさず受けてきました。

自己触診でしこりに気づいたのが12月
癌が確定したのが3月
しこりに気づく2カ月前の10月に検診
線維腺腫の指摘はありましたが、癌の所見はありませんでした。

医師は健診後にできた新規の癌と診断していますが、健診後数カ月で7㎜になるものでしょうか。

癌は1cmになるまで、6~7年かかるものと認識していました。

毎年健診していたのに、ずっと見落とされていたのではないかと不安もあります。

全摘していますが、乳頭乳輪を温存していますので、局所再発のリスク
気になっています。

質問6
*今後の健診スケジュール
術後は3か月ごとの採血と年1回のマンモのみでエコー検査はないとのこと。

なので、甲状腺を見ていただいているクリニックで年1回エコー検査していただくつもりです。

小葉癌であること、リンパに微小転移であることから年1回では少ないですか。

iga腎症と乳がんを宣告されてから、何度も心が折れそうになり、田澤先生のプラザにたどり着き、前向きに癌と戦う決意ができ感謝しています。

ありがとうございました。

 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。

「腫瘍が小さいのに微小転移があったことが気になるから抗がん剤(TC4回)の追加」
→?

 抗がん剤を勧める根拠には全くなりません。『今週のコラム 188回目 このデータを見ても、まだ「リンパ節転移があると(ルミナールAでも)化学療法が必要だと思いますか??」』及び『今週のコラム 189回目 「リンパ節転移があれば抗がん剤をすべき」という古い考えが完全否定される日も近いのです。』をご参照ください。

「Ki67の数値が20%以下であれば、上乗せ無しのように思うのですが、病理結果から高リスクとなる可能性はありますか。」
→確率はかなり低いと思います。
 『今週のコラム 190回目 RSを用いれば、(今まで「リンパ節転移が陽性だから」という理由で抗がん剤治療されてきた)かなりの数の患者さんを無駄な抗がん剤から解放できるのである』の注1)の表をご覧ください。
 更に、小葉癌が大人しいことは、同じコラム内の「組織型とRSの表」を見てもらえば「乳管癌」よりRSで2位低いのが解ります。

「高リスクとなった場合、先生は抗がん剤を勧めますか。」
→ご本人次第です。(無理には勧めません)

 RS>30となれば、「上乗せも20前後となる」ので、その値を見て「ご本人がどう感じるのか?」となります。
 ★もしもやるのであれば、「腎臓内科医に許可」を貰い、(少なくとも)初回は8割でしょう。

「副作用に腎機能低下とありますが、その場合には、しばらく休薬して、再開するなど、腎臓内科の先生と相談しながらの服用方法でよろしいでしょうか。」
→その通り。(実際は殆ど影響ないでしょう)

「質問3 *無治療の再発率について 副作用で薬の服用ができないなど、治療が続けられなくなった時の再発率を教えてください。」
⇒OncotypeDXの結果をみましょう。

「遠隔転移は、血行性転移のようですが、リンパに微小転移していても、腫瘍系が小さければ、その可能性は低いのでしょうか。」
→リンパ節転移は直接関係ありません。
 微小転移は、そもそも予後に影響しません。

「全摘していますが、乳頭乳輪を温存していますので、局所再発のリスク気になっています。」
→乳頭乳輪は「自分でも見える」ので「毎日見ること」です。

「小葉癌であること、リンパに微小転移であることから年1回では少ないですか。」
→全摘しているのだから1年に1回でも問題ないでしょう。(基本的に対側と腋窩となります)
 
 「微小転移が気になる」のであれば、「腋窩だけ半年に1回」エコーすればいいのです。(腋窩のエコーは30秒で終わります)

 
 

 

質問者様から 【質問2 】

浸潤性小葉癌とIgA腎症術後の治療とオンコDXの結果
性別:女性
年齢:56歳
病名:浸潤性小葉癌
症状:

浸潤性小葉癌とIgA腎症術後の治療での回答ありがとうございました。

本日はオンコDXの結果について先生に質問させていただきます。

手術後病理結果
浸潤性小葉癌左C領域
乳頭乳輪温存乳房切除術
腫瘍の大きさ1.2cm×0.9×0.8
ER陽性
PgR陰性
HER2陰性
Ki67 5~20%
核グレード2(異形度2点+分裂2点)
脈管侵襲なし
リンパ節微小転移0.2㎜
ステージ2A
ルミナルB

オンコDX再発スコア報告書微小転移およびリンパ節転移陽性(1-3個)
再発スコア28
9年遠隔再発率22%
化学療法上乗せ効果~1%

定量的単一遺伝子スコア
10.2 ER陽性
3.3 PR陰性
8.9 HER2陰性

先日の先生の回答のとおり高リスクにはなりませんでした。

予想外にKi67 5~20%のおとなしい小葉癌ですが、再発スコア28でした。

化学療法上乗せないので、医師も納得したうえで、ホルモン療法のみとなりました。

腎機能低下による透析のリスクを気にしながら、副作用に苦しむ抗がん剤治療をする必要がなくなり安心した半面、早期癌の再発率の高さに戸惑っています。

質問1
Ki67の数値が5~20%なので、再度ルミナルAの可能性を聞いてみましたが、PR陰性なので、あくまでもBとの説明がありました。

遺伝子スコアでも陰性、Ki67の数値が低値でもB型なのでしょうか。

B型なのでRS28となり再発率が高くなったのでしょうか。

質問2
先生は、予後は腫瘍経とリンパ節転移の個数によって決まると回答されています。

私の場合、腫瘍経1.2cm、予後には影響しない0.2㎜の微小転移1個です。

ステージ2の生存率は90%前後です。

オンコの9年遠隔再発率22%
報告書10ページ④予後予測の9年遠隔再発率の95%信頼区間
再発スコア結果23-50 ±6%から±12%(再発スコア結果が大きくなるにつれ増大)とありますが、再発率22%を基準とすると最大10%から34%です。

あまりにも再発率の幅が広いので、不安になりました。

ステージ2との生存率との乖離があるということは、抗がん剤の上乗せがないおとなしい小葉癌は、ホルモン療法をしても、再発率の高い癌なのでしょうか。

質問3
補足エビデンスデータには再発スコア28の場合、5年再発率は15%となっていますが9年遠隔再発率はホルモン療法5年の再発率でしょうか。

質問4
先生の豊富な経験のなかで、私のようなルミナルタイプの小葉癌の腫瘍経で遠隔転移した患者さんは、やはり晩期の再発が多いのでしょうか。

質問5
浸潤性小葉癌は、対側にも新規で発生しやすいと聞いています。

左は全摘していますが、対側にできる確率はどのくらいでしょうか。

 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。

「遺伝子スコアでも陰性、Ki67の数値が低値でもB型なのでしょうか。」
⇒intrinsic subtypeに当てはめれば(ルミナールBではなく)ルミナールAに相当すると思います。(ルミナールBは「化学療法の効果がある群」なのですから)

 そもそもルミナールA/Bというのは、intrisic subtypeなのです。(これは免染ともOncotypeDXとも異なります)
 OncotypeDXの方がより、その分類の主旨に近い(抗がん剤が効きやすいか効きにくいかを判断できる)というだけなのです。

 あくまでもOncotypeDXで上乗せがない=(intrinsic subtypeに当てはめれば)ルミナールA相当だろう(ルミナールAライクと表現したります)ということです。

「私の場合、腫瘍経1.2cm、予後には影響しない0.2㎜の微小転移1個」
「最大10%から34%」

⇒これは、リンパ節転移1-3個でエントリーしているからです。

 つまり、10%よりと考えていいでしょう。

「補足エビデンスデータには再発スコア28の場合、5年再発率は15%となっていますが9年遠隔再発率はホルモン療法5年の再発率でしょうか。」
⇒その通り。

「先生の豊富な経験のなかで、私のようなルミナルタイプの小葉癌の腫瘍経で遠隔転移した患者さんは、やはり晩期の再発が多いのでしょうか。」
⇒頭でっかちになりすぎ!

 再発は「どんどん」低下します。

「浸潤性小葉癌は、対側にも新規で発生しやすいと聞いています。左は全摘していますが、対側にできる確率はどのくらいでしょうか。」
⇒信頼できるデータなど存在しません。
 (異時性)両側乳癌を診る機会も多いですが、それほど小葉癌が多いようには感じません。(無駄に心配しすぎないようにしましょう)

 
 

 

質問者様から 【質問3 】

浸潤性小葉癌とIgA腎症術後の治療
性別:女性
年齢:56歳
病名:浸潤性小葉癌
症状:

先日は、浸潤性小葉癌とIgA腎症術後の治療オンコDXの結果について回答ありがとうございました。

医師からは、オンコDXの結果説明のときも、高リスクにならなかったので、今後はホルモン療法単独ですと一言のみで報告書の説明はありませんでした。
サブタイプについても、抗がん剤上乗せなくてもプロゲステロン陰性とKi67の数値(5~20%)からルミナルBと、何度もAではないかと質問しても私の納得できる回答はありませんでした。

そのような状態のなか早期癌にも関わらず、再発率の高さにも戸惑っていた私に、田澤先生から細かな回答とアドバイスをいただき、的確な回答から、癌と向き合う勇気をいただき感謝しています。

通院も3か月ごとの腫瘍マーカーなしの一般的な血液検査と薬の処方のみで、触診エコーなどもなく、3分診療です。

今後の健診方法に大きな不安がありますが、術後の状態も落ち着いていますので、もし再発が疑われるようなことがあれば、田澤先生に診ていただけたらと思っています。

毎日、このプラザで乳がんの知識を深めるなか、疑問に思うこともあり、質問させていただきます。

4月に
浸潤性小葉癌
腫瘍径1.2cm
リンパ節微小転移あり(0.3㎜)前回0.2㎜と記載誤りあり
グレード2
脈管侵襲なし
ステージ2A
左C領域乳輪乳頭温存乳房切除術
を受けてから、アリミデックスの服用を始めて2カ月目に入りました。

医師から、手術前の説明では5年服用でしたが、大きな副作用がなければ、再発リスクを下げるため、10年の服用に変更ですと指示がありました。

質問1
日常生活には支障ありませんが、服用後、軽い頭痛と倦怠感があり、時々温存した乳頭あたりがピリピリと痛みます。

副作用でしょうか。

6年前、IgA腎症でのステロイドパルス療法前109%あった骨密度が、現在は、骨量減少状態であり、腰椎76%股関節74%になっています。

腎臓内科で、年1回骨密度の測定をしていて、アルファカルシドールカプセルが処方されています。

田澤先生の回答のなかで、効果と副作用のバランスが大事とありますが、あくまでも再発予防のホルモン剤を見えない癌細胞に対して、長期にわたり服用することのリスクと晩期再発の多いおとなしい小葉癌であること、RS28で高リスクに近い中間リスクだったこと、対側の新規の癌の発生などを考えると、5年での服用終了のリスクは高いですか。

オンコDXの9年遠隔再発率を5年以上服用することで更に下げられるのでしょうか。

先生の患者さんは5年以上服用されている方はどれくらいいますか。

まだ服用したばかりで、先のことは考えたくありませんが、10年と言われたので、骨粗鬆症になるのではと不安が募るばかりです。

質問2
7月にアラガン社のインプラントがリコールされました。

4月の手術時、同時再建をしていますので、リコールされたものと同じインプラントが入っています。
癌の切除をしたのにリンパ腫になる可能性があるものが体内にあると思うと不安です。

形成外科の医師に確認すると、リンパ腫ができるまでには、平均9年かかるので、数年に1回の造影剤なしのMRIをすれば異常がわかる。

今のところ、リンパ腫の発生より取り出すことのリスクのほうが高いので、年に一度の定期検診を必ず受けるように言われました。

MRIで、インプラントの異常と対側乳がんの発見や再発は同時にできるのでしょうか。

2年に1回のMRIをすれば、リンパ腫の発見が遅れることはありませんか。

エコーでは分からないそうですが、他に早期発見の方法はありますか。

また、カルテは院内共通なので、乳腺の医師に画像を診てもらうことは可能です。

MRIは、精度が高いので、乳腺症なども分かるため、無駄な検査をすることもあると言われました。

 

田澤先生から 【回答3】

こんにちは。田澤です。

「質問1 日常生活には支障ありませんが、服用後、軽い頭痛と倦怠感があり、時々温存した乳頭あたりがピリピリと痛みます。副作用でしょうか。」
⇒その通りです。

「5年での服用終了のリスクは高いですか。」
⇒10年投与の成績が出ているので、勧められることもあるでしょうが…
 基本は5年でいいでしょう。(余力があれば、1年ずつ伸ばせばいいのです)

「先生の患者さんは5年以上服用されている方はどれくらいいますか。」
⇒5年で辞める人の方が多いですね。(バランスで判断してもらってます)

「エコーでは分からないそうですが、他に早期発見の方法はありますか。」
⇒大きくなる前に、普通にエコーで解ると思いますが…

 形成外科医のいうようにMRI毎年で十分でしょう。