[管理番号:7445]
性別:女性
年齢:50歳
病名:浸潤性小葉癌
症状:左乳房温存手術(2019年1月)
田澤先生、はじめまして
お忙しい中、このような場を設けていただきまして、ありがとうございます。
長文になりますが、どうぞよろしくお願いいたします。
2014年から人間ドックの指摘により毎年乳腺外科を受診
2018/1/(下旬) 針生検実施 Ⅱ変性(非腫瘍) 経過観察
2018/11/(下旬) 針生検にて疑陽性ClassⅢ 標本の評価:検体適正 判
定区分:鑑別困難
2018/12/(上旬) 組織検査にて硬癌または小葉癌 (この時点ではどちらかは分からないとの説明)
・術前検査と説明
CT、マンモ、MRI(造影)、PET CT
手術内容 ①乳房温存予定②腋窩リンパ節切除(センチネルリンパ節同定+α切除予定)と記載あり
確定診断時は(画像上?)15mmと聞いていたが、「MRIで広がりがあるので胸の1/6~1/5程度を切除する、これ以上だと変形が酷くなるので温存出来なくなる。
リンパ節は5個程度取り、転移の数を評価する。
T1.N0.M0⇒StageⅠ」と説明を受ける
・術後の病理組織検査結果報告書(一ヶ月後)
臨床的診断:左乳癌 Breast cancinoma left up to 45×35×15mm
病理組織学的診断:Invasive lobular carcinoma.g.f.ly(+).v
(-).n(+)
所見
1左breast 45×35×15mmまでのcarcinoma+
Histolgy:Invasive lobular carcinoma
g.f.ly(+).v(-).NGI(1+1).HGI(3+1+1)
上皮内進展+.comedo-
断片のかなり近くにcarcinoma+と考えますが断片にexposeしている所見は確認できません
2.リンパ節 #SLY=1/1(5mm).#1a=0/1
この術後の病理組織検査結果でセンチネルリンパ節に5㎜の転移があり、術中には転移の確認がなされていない事が分かりました。
2週間後、ER>90% PgR>90% HER2(1+・陰性) Ki67<1% (ステージに触れることはありませんでしたが2bでしょうか)
補助療法について、化学療法6ヶ月(FEC100 3週×4回+パクリタキセルweekly×12回)、放射線照射(左乳房+左腋窩)、ホルモン療法5年を提示され、抗がん剤の効果を数値で知りたいと質問すると「オンコタイプDXやマンマプリントはありますが、あまり標準的ではないので・・・」
と渋い顔で断らました。
センチネルリンパ節に転移があるため、「叩けるのは今だけ。
抗がん剤をすれば、“あの時やっておけば良かった”と後悔しないためにもやっておけば気持ち的にも楽になりますよ」と言われ、抗がん剤を始めるも、
FEC3回目から白血球の回復が遅く、注射とロイコン錠を服用して4回目を実施。
その後すぐ感染症にかかり入院。
次回予定日になっても白血球が回復せず2週間延期となった際に「白血球を注射で一時的に上げて抗がん剤をやっても、また感染症にかかったりする心配もあるし、●●さんの場合はホルモン療法が期待できるので、
体力が回復するまでの間2ヶ月薬を飲んでみて、7月の術後半年にあたる検診時に抗がん剤を再開するか考えましょう。
但し、これは標準的ではないが・・・」と言われました。
これまでの検査や手術、今後の治療に疑問を感じていましたが、主治医はわたしの話しに耳を傾けてくれる事が殆どなく悩んでいます。
ここからは余談になりますが、確定診断の日「今なら1ヶ月以内に手術が出来る。
1cmの癌で初期だから、後は薬を飲めば大丈夫でしょう」と言われ、告知によって頭が混乱している中、1日でも早く取り除かなければならない、と思い込んでしまいました。
何故あの時もっと冷静になれなかったのか、他の病院を探す考えが持てなかったのか。
何より、もっと早く田澤先生とこのサイトに出会っていたら、と本当に後悔してもしきれない気持ちと恐怖に押し潰されそうな毎日を過ごしております。
主治医は読映に優れている先生と聞き、何年間も乳腺外科に通い注意していました。
それが2018年1月は経過観察だったのに、ステージⅡになるまで分からなかったなんて、これからまた気付かないうちに広がってしまうのではないか心配で転院も考えています。
今さらなのですが、これ以上悪い方向へ進まないように、まだ諦めずに何かできる可能性があるのか、纏まりのない文章と質問が多くて申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。
①腋窩リンパ節郭清を省略できるのはセンチネルリンパ節の転移が微小(2mm以下)の場合だと思うのですが、5mmでは省略するべきではなかったのではないでしょうか。
また、リンパ節が1個しか取れていないのですが、0/1を転移なしと信用できるものですか (低位1aとはレベルⅠの事ですか?)
主治医に質問したところ、「多く取れれば良いというものではない」と答えになっていない返事にショックで考える力を失ってしまいました。
②断片陽性ではないものの、近くまでとあること、この大きな広がりや小葉癌であるにも関わらず、温存手術となりましたが、今から腋窩リンパ節郭清や全摘手術が必要ですか。
その場合は田澤先生にお願いできますか。
③もしこのまま追加手術が必要ない場合は、抗がん剤を再開した方が良いですか。
田澤先生ならどうされますか。
小葉癌は珍しいと言われ、情報も乏しく、再発、対側にも新たに発生すると思うとどうしたら良いか不安でなりません。
まだ完治の可能性は残されているでしょうか。
遅ればせながら、Q&Aで理解を深めようと努めておりますが、自分の状況とどの程度当てはめて良いか(自身で判断がつく筈もなく)・・・
いつも患者の心に寄り添い、多種多様な症例を経験されている田澤先生のご意見をお伺いいたしたく、どうかよろしくお願いいたします。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
「抗がん剤の効果を数値で知りたいと質問すると「オンコタイプDXやマンマプリントはありますが、あまり標準的ではないので・・・」「渋い顔で断らました。」
→NCCNのガイドラインにあるのに…
『今週のコラム 188回目 このデータを見ても、まだ「リンパ節転移があると(ルミナールAでも)化学療法が必要だと思いますか??」』をご一読してください。
勿論、日本では保険適応ではないので(医療経済学的理由です)、積極的に勧めないことは責められるべきではありませんが…
患者さんから言われたのに「断る」というのは、さすがに…
「センチネルリンパ節に転移があるため、「叩けるのは今だけ。抗がん剤」
→上記コラムを参照のこと(どう考えても、抗がん剤を推奨する理由には全くなっていません)
「①腋窩リンパ節郭清を省略できるのはセンチネルリンパ節の転移が微小(2mm以下)の場合だと思うのですが、5mmでは省略するべきではなかったのではないでしょか。」
→施設基準があります。
『今週のコラム 144回目 肉眼的転移では 追加郭清>郭清省略なのです』に記載したとおり、「2個以内なら省略する」という施設もあるので、本来なら「事後承諾ではなく」予め「手術同意書でお互いに同意がされてあるべき」ものなのです。
手術同意書に「センチネルリンパ節の取り扱い」について記載ないのですか?
「また、リンパ節が1個しか取れていないのですが、0/1を転移なしと信用できるものですか」
→これは一概には言えません。
「②断片陽性ではないものの、近くまでとあること、この大きな広がりや小葉癌であるにも関わらず、温存手術となりましたが、今から腋窩リンパ節郭清や全摘手術が必要ですか。」
→「全摘」も「腋窩郭清」も、どちらも必須とまでは言えない状況のようです。
ただ、どちらも「リスク要因」となるので、質問者次第(不安であれば、「どちらも有り」です)となります。
「その場合は田澤先生にお願いできますか。」
→それは大丈夫です。
「③もしこのまま追加手術が必要ない場合は、抗がん剤を再開した方が良いですか。」
→抗がん剤は不要だと思います。
「田澤先生ならどうされますか。」
「まだ完治の可能性は残されているでしょうか。」
→無論、根治することが大前提です。
そこに不安があるのであれば手術すべきです。(抗がん剤は何の足しにもならないと思います。)
「小葉癌は珍しいと言われ」
→未だにそんなことを言う乳腺外科医がいるとは…
小葉癌は珍しくもなんともありません。
特殊型の中ではmajorです。(以前E-cadherinを使わなかった時代には、硬癌と間違われていたケースも多いことは周知の事実です)
実際には10%以上はあるでしょう。