Site Overlay

SLE患者が肉芽腫性乳腺炎を発症

[管理番号:4421]
性別:女性
年齢:36歳
初めまして。
持病のSLE治療のためステロイド内服中に、
肉芽腫性乳腺炎を発症したケースについて、
経験豊富な田澤先生にアドバイスいただきたく、質問いたします。
よろしくお願いいたします。
2009年にSLEを発症し、現在ステロイド20㎎内服、2014年8月に出産した36才の主婦です。
これまでの経緯
2016年10月
左胸内側にしこり、痛みを感じる。
11月末
乳腺外科受診。
エコー、マンモグラフィ、針生検の結果、肉芽腫性乳腺炎と診断。
無菌性のため薬の処方もなく、経過観察。
12月末
左胸の外側にも腫れと痛みを感じ、受診。
まず内側のしこりを切開。
膿を出す。
ミノマイシン処方も副作用があり中止。
1月初
左胸の外側も切開。
膿を出す。
次にまた膿が
貯まったようなかんじがあれば受診するようにと、一旦終了。
1月末
右胸に乳房がちぎれるような痛みを感じるが、まだ固いしこりはなく、様子をみる。
2月半ば
SLEの受診日。
あまりの痛みにステロイドの増量を申し出、15㎎から20㎎に。
(乳腺外科ではステロイドをすでに15㎎内服しているので、ステロイド治療は効果がなく、ステロイドによって悪化している可能性があると言われたが、ネットでステロイド30㎎で改善された例を知り、相談)
乳腺外科を受診。
両胸を注射器で吸うも膿が出ず。
肉芽腫の炎症による痛みのため、ステロイドによるものとも考えられ、中止するよう言われる。
現在
ステロイド増量したものの、悪化。
ロキソニン朝夕飲み、何とか日常生活を送る。
乳腺外科から肉芽腫性乳腺炎の原因として、高プロラクチン血症とのこと。
2014年8月に出産後、約1年半、無月経。
2016年1月、高プロラクチン血症の診断。
カバサール処方で標準値以下になり、12月より中止。
振り返ってみると、月経再開後から乳房に痛みを感じることがあり、しかし、数日で消失することから、ホルモンバランスによるものと気に留めていなかった。
長々と失礼しましたが、ステロイドを15㎎内服している時に肉芽腫性乳腺炎になった場合、やはりステロイド治療は適切ではなく、
ステロイドにより免疫異常が起こったと考え、ステロイドを減らすことが改善に向かうのでしょうか?
ロキソニンで自然治癒を待つしかないのでしょうか?また他に治療法はないのでしょうか?痛みに耐える日々は、とても苦しいです。
どうかご回答よろしくお願いいたします。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
肉芽腫性乳腺炎の治療中(通常はステロイドですが)は、必ずしも「一方調子で改善」するわけではありません。
通常の治療中にも「一過性に悪化(溶けてドロドロになり自壊することで改善)」することは珍しくありません。
「ステロイドを15㎎内服している時に肉芽腫性乳腺炎になった場合、やはりステロイド治療は適切ではなく、ステロイドにより免疫異常が起こったと考え、ステロイドを減らすことが改善に向かうのでしょうか?」
⇒そんなことはありません。
「ステロイドによるものとも考えられ、中止するよう言われる」
 ⇒これも誤りです。
  冒頭で記載したように、「一過性に悪化(膿瘍形成し、それが自壊)して改善へむかう」ことは珍しくありません。
「ロキソニンで自然治癒を待つしかないのでしょうか?」
⇒ステロイドを増量して「粘り強く」継続することです。
「また他に治療法はないのでしょうか?」
⇒肉芽のvolume reductionです。
 究極は「手術的(肉芽の)摘出」ですが、それに準ずる方向として「マンモトーム生検で可能な限り削る」という方法があります。
 『今週のコラム 47回目 マンモトームで「肉芽をとことんまで削り倒したら、どうなのか?」』をご参照ください。
  ♯ちなみに、その後その患者さんは(ステロイド無しで)定期的に経過みていますが、「かなり改善(無症状、ただし超音波では僅かに残存)」していますよ。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

ご回答いただき、ありがとうございました。
ステロイド増量は間違いなかったと、粘り強く継続していきたいと思います。
そこで、お忙しいところ恐縮ですが、再度質問させて下さい。
膠原病内科で増量したステロイド20㎎内服して3週間。
現在の乳房の状態ですが、特に右胸の痛みがひどく、しこりが盛り上がってくるような痛み、針を刺すような痛みがあります。
しこりは大きく硬くなり、発赤してきています。
3週間前に乳腺外科にて、注射器で吸った時には、膿が出ませんでした。
外科的治療はで
きません、もう来てもらっても何もできないのでと言われました。
今はまだ膿が貯まっていないだけなのでしょうか?肉芽腫性乳腺炎は必ずしも膿が貯まるわけではないともお聞きしました。
田澤先生が仰るように、自壊しないと改善されないのでしょうか?それともこれから肉芽が小さくなり、痛みも軽減していくのでしょうか?
痛みが軽減されていくのか、とても不安です。
再度ご回答よろしくお願いいたします。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
前回の回答通り「肉芽腫性乳腺炎の治療の早いうち」は「一本調子で改善」するわけではなく、「一過性に悪化」することもしばしばあります。
「しこりは大きく硬くなり、発赤してきています」
⇒一過性の悪化のようです。
 前回の回答どおり、「粘り強くステロイド治療」しましょう。
 どうしても「我慢できない」場合には「volume reduction」です。
 これらの治療を理解していない乳腺外科医が殆どだから、なかなか思い通りにならないとは思いますが…