[管理番号:3364]
性別:女性
年齢:42歳
田澤先生
初めて質問させていただきます。
最近、毎日この Q&Aコーナーを拝見させていただき、こんなに患者の思いを汲み取りながら的確に判断をし、医師としてのご自分の見解を伝えて下さる先生がいらっしゃることに感謝しながら拝見させていただいています。
是非、4点程ご相談をさせていただけないでしょうか。
42歳・出産経験なしです。
H28・4月頃の夜間、睡眠中に何とも言えない一時的な乳頭部の痛みで目が覚めることが5日間ほど続き、触ると左下外側にしこりを感じました。
5月に入り乳腺のクリニックを受診したところ「 確かに、しこりがあります 」と言われマンもグラフィーとエコー・細胞診をしました。
この時は自分で腫瘍に触れた感じは、まだ明らかにしこり
という感じではなく、受診時には「乳腺が張っているだけですので大丈夫ですよ」と言われると思い受診しましたので、意外な答えが返ってきたことに驚きました。
細胞診の結果 「クラスⅢ」とのことで、組織診をしました。
この時、腫瘍は1.2cm。
組織診の結果「 葉状腫瘍に、異型細胞を伴っている 」と言われました。
組織診の結果を待っている3週間程の間にしこりの増大を感じ、自分でも怖さを感じていました。
こんなに急速に腫瘍が増大しているのに「線維腺腫でした。
経過観察で大丈夫」
と言われたら、逆に不安を感じると思ったほどの急速な腫瘍の大きさを自覚しました。
この時も「マンもグラフィーには何も写っていない」とのことでした。
組織診は確認していないのですが 「 バネ式針生検 」ではないかと思っています。
検査時に仰向けになり、エコー下で3回程刺し「ガチャン、ガチャン」と大きな音がしました。
私は、組織診の結果の「 葉状腫瘍に、異型細胞を伴っている 」という内容を、葉状腫瘍をおにぎりのような物と考え、そこに枝豆のような異型細胞がくっついていると想像していました。
なぜならば、「もし、悪性だったらどうなるのですか?」との問いに「抗癌剤や放射線で治療をしていくことになります」と言われましたので、悪性葉状腫瘍や境界悪性なら手術しか治療手段がないようですので、癌を疑う組織が葉状腫瘍とは別についていると受け取っていました。
その後、総合病院を受診。
総合病院では新たな検査はせず、クリニックから預かって
いった組織診のプレパラートを病理に出されていたそうです。
結果は「 腫瘍性の増殖性病変を否定できない 」とのことでした。
病理結果をいただきたい旨申し出ました
が、いただけませんでしたので画面上のこの内容しか頭に残っていません。
ここでも
「 葉状腫瘍 」との診断は受けましたが、この病院では「 異型細胞は出ていない 」とのことでした。
総合病院の医師は「 悪性だったら再手術後、放射線を当て抗癌剤を内服してもらう 」と言われていました。
①手術後の病理結果は「 葉状腫瘍ではなく、線維腺腫だった 」とのことでした。
組織診で検出された「 異型細胞 」の存在をどう考えれば良いものかが、どうしても気になります。
手術後の病理の結果「 線維腺種から異型細胞が検出された 」という事実をどう捉えればよいものかと納得がいかない日々です。
極小の異型細胞だったために、手術後の病理の際は異型細胞部分をスライドしていなかったということなのでしょうか。
②初診から3週間目に部分切除をしました。
「 葉状腫瘍ではなく、線維腺腫だった 」
という結果に本来であれば安堵するのでしょうが「 線維腺腫か葉状腫瘍なのか、摘出してみないと分からない」と伝えられたうえで、手術をした結果が線維腺腫だったら納得がいきます。
「 葉状腫瘍です 」とはっきりと言われたうえで「 手術後の結果、線維腺腫だった 」という内容に疑問を感じてしまいます。
42歳・出産経験なし・
H27・12月の検診では「異常なし」と言われていたのに、3・4ヶ月で新たに腫瘍ができたうえに急速な増大を感じるなんて(摘出時の腫瘍の大きさを聞き忘れました)、本当に葉状腫瘍ではなく線維腺腫だったのかという思いが捨てきれないです。
葉状腫瘍と線維腺腫の区別がつきにくいということは理解しているつもりなのですが、病理医の先生方の診断結果は、先生によりこんなにも違うものなのでしょうか。
③総合病院の医師からは、手術後の病理結果を聞きに行った際に「もう来なくていい。
今日で終わり。
ただし、再発することはよくあります。
終わりです」と言われました。
今後、検診はどんな頻度で受検すればよいものかもご教授いただけないでしょうか。
「再発しやすい」と言われたのに、そのことに対する指導が全くなかったことが不安です。
④他に私が今すべきこと、出来ることとしてお勧めいただけることがございましたら是非お教えいただけないでしょうか。
宜しくお願いいたします。
お恥ずかしい話しですが、このQ&Aコーナーをじっくりと見られるようなゆとりができましたのが手
術後のため、先生が書いてくださっています「コラム31「今週のコラム31回目 バネ式針生検とマンモトーム生検を使い分ければ、組織診は100%確定診断なのです」の内容も手術後に知りました。
(関西)在住ですので8月中でしたら、先生の病院までお伺いすることができます。
どうぞ、宜しくお願い申し上げます。
長文になり、また情報不足ですみません。
ご多忙ななか申し訳ございませんが、どうぞ宜しくお願いいたします。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
「葉状腫瘍と線維腺腫はfibroepithelial tumor」と、いわれ組織診断では区別がつきません。
摘出して「腫瘍全体」を見ないと解らないのです。
「①手術後の病理結果は「 葉状腫瘍ではなく、線維腺腫だった 」とのことでした。
手術後の病理の結果「 線維腺種から異型細胞が検出された 」という事実をどう捉えればよいものか」
⇒解釈としては…
「総合病院でのプレパラートの見直し」では「異型細胞は無かった」とあるので、
「病理医の勇み足」だったのではないかと思います。
いずれにしろ、「病変全体で、そのような部分がない」ことが確認されているのだから心配いりません。
「②「 葉状腫瘍です 」とはっきりと言われたうえで「 手術後の結果、線維腺腫だった 」という内容に疑問」「H27・12月の検診では「異常なし」と言われていたのに、3・4ヶ月で新たに腫瘍ができたうえに急速な増大を感じる」
⇒H27.12月の検診内容は「エコー」ですか? (本当はあったけど、エコーで無かったので解らなかっただけという事は良くあることです)
「葉状腫瘍と線維腺腫の区別がつきにくいということは理解しているつもりなのですが、病理医の先生方の診断結果は、先生によりこんなにも違うものなのでしょうか」
⇒病理医の見解というよりも…
「針生検の標本(あくまでも、一部のサンプリング)」と「手術の標本(病変全体)」の違いだと思います。
「本当に葉状腫瘍ではなく線維腺腫だったのかという思いが捨てきれないです。」
⇒「線維腺腫と言う診断結果」に、どうしても納得できないのであれば…
病理のセカンドオピニオンという方法があります。
「今後、検診はどんな頻度で受検すればよいものかもご教授いただけないでしょうか。」
⇒葉状腫瘍を想定とした手術(きちんとマージンをつけていますよね?)であれば
「線維腺腫が再発」することはないでしょう。
それに「線維腺腫」ならば、「再発に神経を尖らせる」必要はありません。
1年に1回の(通常の)検診(エコーはしましょう)で十分です。
「④他に私が今すべきこと、出来ることとしてお勧めいただけることがございましたら是非お教えいただけないでしょうか。」
⇒病理のセカンドオピニオンです。
あとは、「きちんとしたマージンが取れている」手術であったのか「執刀医に確認」するくらいでしょう。
質問者様から 【質問2】
田澤先生
(ご報告)
その節は、ご多忙ななか早急に的確なご指導をくださりありがとうございました。
以前「 葉状腫瘍と診断後、摘出術後に線維腺腫と診断された 」者です。
以前から申し込んでいましたセカンドオピニオンの結果を、先日聞きに行ってきました。
その際、
クリニックで検査した組織診のプレパラートと手術時のプレパラートを病理に提出していました。
セカンドオピニオンの結果は「 葉状腫瘍。
組織診のプレパラートも、手術時のプレパラートも前癌病変や癌と言えるほどの状態ではない 」とのことでした。
組織診後に腫瘍が大きくなっていると感じたのは、針生検時に針を刺したことで一時的にうっ血していることと炎症のためとのことでした。
今後の検診については「 クリニックで半年毎のエコーをし、1年経過後はエコーとマンモグラフィーをして毎年経過観察をするようにご指導をいただきました 」。
手術時のマージンについてですが、術前に1cmのマージンをつけて大きめに採ると言われていました。
(質問)
『 前回の質問②の「 H27・12の検診で異常なし 」と言われていたのに、3・4ヶ月で新たに腫瘍が出来たうえに急速な増大を感じる 』という件について質問をさせてください。
H27・12の検診は、エコーとマンモグラフィーです。
エコーの結果は、気になるものは
ないとのことでした。
マンモグラフィーの結果は、全くの異常なしではなく「左側に多少の石灰化があるが、この程度なら気にしなくて大丈夫です。
念のため1年に1回は検診を受けておいた方がよいでしょう」と言われた覚えがあります。
今回の葉状腫瘍は、この時の石灰化が成長したものということは考えられますでしょうか?
ご多忙ななか申し訳ございませんが、どうぞ宜しくお願いいたします。
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
大体、「治まるところに治まった」状況と言えます。
手術標本も「葉状腫瘍」であり、「針生検の病理も異型上皮とはいえない」全く問題なく、予想される結果と言えます。(これについては、これ以上の追及は不要です)
「今回の葉状腫瘍は、この時の石灰化が成長したものということは考えられますでしょうか?」
⇒違います。
そもそも石灰化は「ただのカルシウム」です。
「石灰化が何かになる」などと言う発想自体、ナンセンスです。
実際には…
石灰化の原因の99%以上は、乳腺症に伴う石灰化(エストロゲンによる増殖による乳管の閉塞で閉塞した乳管内に内容液が停滞、その液の中のカルシウムが沈着するものです)
そして残りの1%が「癌細胞が乳管内で増殖し、その中央部で癌細胞が壊死し(壊死型石灰化といいます)できる石灰化です。
決して「石灰化(カルシウム)が腫瘍にはなりません」し、そもそも「葉状腫瘍と石灰化は無関係」です。