[管理番号:4435]
性別:女性
年齢:39歳
田澤篤先生
はじめまして。
妻の胸に乳がんが疑われるシコリが見つかり、
不安になってメールを差し上げた次第です。
経験豊富な田澤先生のご意見をおうかがいできれば幸いです。
妻は現在39歳、3人子どもがおりすべて授乳で育てました。
一番下は今年で6歳になります。
●これまでの経緯
先月2月(中旬)日
妻が突然シコリ(右乳頭外側上部;サイズ1.5センチほど)に気付いたようです。
本人は急に出来たと言っていました。
私も触りましたが、ごつごつしていて硬い感触でした。
痛みはこの日から今日まで少しだけあるとのことです。
↓
3日後の2月(下旬)日
近所の病院でエコーとマンモによる検査を行った結果、総合病院での受診を勧められました。
担当の医師(技師?)は「乳がん」とははっきり言わないものの、口ぶりは深刻そうだったとのことです。
↓
1週間後の2月(下旬)日
私も同伴して総合病院を受診しました。
担当医師による触診のみで、問診は行われず、「まず検査をしていきましょう」とだけ言われました。
この先生は(下旬)日に撮影された画像を見てうなずくだけで、まったく所見を述べられず、ただただ不安がつのるだけの診察でした。
この日は再度エコーとマンモによる検査,血液検査を行っただけで、診断は下されませんでした。
↓
今月3月(上旬)日
造影剤CT検査を行いました。
来週6日に検査結果が出るとのことです。
また3月(中旬)日にMRI検査を受ける予定です。
細胞診や生検はまだ行っていません。
ここで、田澤先生にお聞きしたいことがあります。
乳がんの場合でも、シコリのサイズや硬さが生理前後で変化することはあるのでしょうか?
シコリに気付いた先月2月(中旬)日と、1回目のエコーとマンモによる検査があった2月(下旬)日は、妻は生理直前でした。
そして1週間後の総合病院を受診した27日は、生理中(3日目)で、シコリのサイズが小さくなっているように感じました。
妻も「今現在のシコリのサイズならすぐに受診しようとは思わなかった」と言うほどサイズに変化があります。
乳がんではなく、他の良性の病気(乳腺症や線維腺腫)を期待するのは間違いでしょうか?
また、これまでの検査手順からみて、やはり乳がんは確定的なのでしょうか?
診断が下されない宙ぶらりんの状況は、妻も私も精神的に大変つらいです。
このメールだけでは田澤先生にご判断いただくことは難しいでしょうが
先生のご感想・お考えをお聞かせいただければ幸いです。
お忙しいところ大変恐縮ですが、何卒よろしくお願い申し上げます。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
(質問者の意図とは離れますが)私が最初に気になったのは(生検もまだなのに)
「造影CT」を行っていることです。
「乳がんの診断もない」のに被爆量の大きなCTを(まるでルーティーン検査かのように)撮影するのは、誤った診療と言えます。
♯最低限、「CTを撮影すべき理由」を説明すべきです。
「今月3月(上旬)日造影剤CT検査」
「また3月(中旬)日にMRI検査」
「細胞診や生検はまだ行っていません。」
⇒これは「異常な診療」と指摘せざるをえません。
(まるで、CTやMRIを診断目的で使っているようですが)「本来、MRIは(癌と診断された後の)拡がり診断」であるべきであり、(CTは、そもそも不要な検査ですが)「CTも癌と診断された後で、理由を持って行われるべき」ものだからです。
「乳がんの場合でも、シコリのサイズや硬さが生理前後で変化することはあるのでしょうか?」
⇒「乳癌が変化する」ことは決してありません。
おそらく、(周囲の乳腺の張り具合によって)「シコリが解り易くなったり、解り難くなったりする」のだと推測します。
「乳がんではなく、他の良性の病気(乳腺症や線維腺腫)を期待するのは間違いでしょうか?また、これまでの検査手順からみて、やはり乳がんは確定的なのでしょうか?」
⇒さすがに「乳癌が確定」していないかぎり、これだけの検査をするとは到底思えません。
担当医は「癌と確信している」としか思えません。(だったら、早く組織診しなさい。と言いたくなります。)
質問者様から 【質問2】
田澤先生
いつもこのQ and Aから勇気と希望をいただいております。
妻の乳がんに関して、2度目のメールを差し上げます。
2月中旬から3月中旬にかけて、エコー・マンモ→造影剤CT→MRIの順に検査を受けたのち、
組織診を受けました。
その結果、ルミナールBのmicropapillaryとの診断が下されました。
また後日、リンパ節にも転移があることが分かりました。
主治医によれば、今月末にも術前に抗がん剤を開始し、
手術(全摘一択と通告されましたが、こちらも温存は希望しておりません)は秋ごろを予定しているとのことです。
主治医は術前に化学療法を行う理由として、
全身に回っているかもしれないガン細胞を早くたたくため、
また、39歳と若いので再建を考えているとおっしゃっていました。
ここで田澤先生に質問させていただきます。
先生は術前抗がん剤の唯一の目的は「がんを小さくして温存のみ」とおっしゃっていますが
今回の診断結果では、先生ならどのような治療を選択されますでしょうか。
また、治療に使用するであろう抗がん剤の種類(名前)とルミナールB+micropapillary+リンパ節転移という診断から
予想される予後をお知らせいただけますでしょうか。
やはり予後不良なのでしょうか。
もちろん妻も私もがんと闘っていく気持ちを強く持っておりますが
今回の診断結果を受け、先の見えない不安に押しつぶされそうにもなります。
田澤先生の率直なご意見をお聞かせいただければ幸いです。
よろしくお願い申し上げます。
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
私は「全身に回っているかもしれないガン細胞を早くたたくため」という「根拠のない漠然とした」理由で術前化学療法を勧めることは決してありません。
「39歳と若いので再建を考えている」
⇒これも理由にはなりません。
「先生は術前抗がん剤の唯一の目的は「がんを小さくして温存のみ」とおっしゃっています」
⇒それが正しいのです。
「今回の診断結果では、先生ならどのような治療を選択されますでしょうか。」
⇒当然「手術先行」です。(全摘なのに術前化学療法を勧めることは1000%ありません)
術後は、本当にルミナールBならば「ホルモン療法+化学療法」が必要ですが、それ(ルミナールAなのかBなのか?)は、あくまでも「術後の病理全体でKi67は評価すべき」ものです。
「また、治療に使用するであろう抗がん剤の種類(名前)」
⇒これは「術前にしろ、術後にしろ」
アンスラサイクリンとタキサンしかありません(それ以外は適応外となり、決して投与してはいけないのです)
○アンスラサイクリン
①ファルモルビシン(E) EC/FEC
②ドキソルビシン(A) AC/FAC
○タキサン
①ドセタキセル(T)
②パクリタキセル(P)
♯アブラキサンは術前術後に用いるのは適応外となります。
「ルミナールB+micropapillary+リンパ節転移という診断から予想される予後をお知らせいただけますでしょうか。」
⇒完全な勘違いです。
予後はあくまでも「ステージ」です。
サブタイプ(ルミナールB)とか組織型(微小乳頭がん)とは無関係です。
♯もしも「微小乳頭がんは予後が悪い」という印象を担当医が与えているとしたら、大変遺憾なことです。
「やはり予後不良なのでしょうか。」
「今回の診断結果を受け、先の見えない不安に押しつぶされそうにもなります。」
⇒全く根拠がありません。
おかしな情報(おそらく「ネット」)やおかしな医師(30代の女性に簡単にCTを撮影したり、意味の無い術前抗がん剤を勧める)の言う事で「無駄に悩む」としたら、大変悲しい事です。