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男性乳がん ルミナルB HER2陽性 について

[管理番号:9523]
性別:男性
年齢:48歳
病名:
症状:
投稿日:2021年6月28日

【現在までの経緯】
48歳男性。

半年ほど前から、左乳首付近に気になるしこりを発見。

男性乳がんという考えがなかったので、気になりながらも半年ほど経過。

しこりが大きくなっている気がしたのと、男性乳がんの可能性があることを知り病院を受診。

エコー、マンモグラフィー、造影剤MRI、吸引式組織生検を終え、男性乳がんと診断されました。

10日後に手術が決まっております。

術前に骨シンチとCT(頚部~骨盤腔)の検査があります。

【組織生検・MRIの結果】

ステージⅠ 1.6cm
リンパ節転移 なし
グレードⅠ
ホルモン受容体 あり 多い
HER2タンパク 3+
Ki67 30%

★サブタイプ ルミナール HER2 であると診断

【術後の治療予定】
〇ホルモン療法
〇抗HER2薬
△化学療法(抗がん剤)←やらなくても良いかも?とのこと。

【先生にご意見をお伺いしたい内容】

①HBOCの検査の必要性
※姉が34歳で乳がんになり、それから再発や転移を経て発病より8年後に他界しています。

父→20年ほど前に大腸がんになりましたが、現在も元気でおります。

母→半年ほど前に子宮体癌。
初期であった為、子宮摘出後元気にしております。

特に姉が若くして乳がんに罹っていること、主人も珍しい男性乳がんであることから、
遺伝性乳がんを心配しております。

今後の治療方針に影響があるのであれば、HBOCの検査をした方が良いのでしょうか?

②オンコタイプの検査の必要性
主治医から、化学療法はやらなくてもいいかも?というご意見があります。

Ki67 30%という数値から、しっかりとオンコタイプの検査をしてから治療法を決定した方が良いのでしょうか?
術後の病理検査で多少結果が変わるのかもしれませんが、現段階での状況の場合、田澤先生はどのような治療法や追加検査を推奨されますか?
(主人は仕事の事や脱毛等精神的負担等も考えると、できれば抗がん剤治療は避けたいというのが本人の希望ですが、
そこは命が最優先だと伝えてあります。)

③状況としては初期乳がんと捉えて良いのか。
先生のお考えになる再発率はどの程度でしょうか?
できれば、抗がん剤治療をした場合としない場合がどれ程違ってくるのかもお聞かせいただければ幸いです。

④主人は10年ほど前から、AGAの薬を服用しています。
その薬と男性乳がんの関係性はどのようにお考えでしょうか?

⑤運動制限、摂取をお控えた方が良い食品(特に高たんぱく乳製品が気になります)
はありますでしょうか?

—————————

主治医がはっきりと意見を提示してくれなく、何かこちらから質問をしても、
どうでしょうね、、、どちらかといえば、、、かな?と、かなり頼りなく、どの質問にも満足のいく回答が得られず、
主治医になかなか身を委ねられないでおります。

自分なりに色々調べて知識をつけようと、色々なサイトを見ているうちに、こちらの乳がんプラザに出会うことができました。

田澤先生の芯の通ったコメントに、こんな先生にお任せできたらどれだけ心強いだろうか、、、と思ってばかりいます。

どうか、先生のお考えをお聞かせいただき、主人も私の納得のいく最善の治療を目指したいと思っております。

よろしくお願いいたします。

 

田澤先生からの回答

こんにちは田澤です。

男性乳癌の場合は、表面から触知しやすいので早期で見つかることが殆どです。

「今後の治療方針に影響があるのであれば、HBOCの検査をした方が良いのでしょうか?」
⇒皆さん勘違いされているようですが…

 確かに「男性乳癌」「家族歴」などで、可能性はありますが、厳格な適応があります。

 (再発出ない限りは)あくまでも「遺伝子変異があったら、対側予防切除を希望する場合」が適応条件です。
 男性の場合「対側予防切除は該当しない」ので検査の適応はありません。

 ★因みに、再発治療では治療方針に影響ありますが、術後補助療法は(HBOCであってもなくても)全く同一です。

「②オンコタイプの検査の必要性」
⇒HER2陽性なので、「適応がない」ですよ。

「③状況としては初期乳がんと捉えて良いのか。」
⇒1期です。文句なしの「初期」です。

「先生のお考えになる再発率はどの程度でしょうか?」
⇒1期だから5~10%

「できれば、抗がん剤治療をした場合としない場合がどれ程違ってくるのかもお聞かせいただければ幸いです。」
⇒抗HER2療法は再発率を半分にします。(但し男性乳癌でのエビデンスは低いので、参考程度)

「④主人は10年ほど前から、AGAの薬を服用しています。
その薬と男性乳がんの関係性はどのようにお考えでしょうか?」

⇒無関係

⑤運動制限、摂取をお控えた方が良い食品(特に高たんぱく乳製品が気になります)はありますでしょうか?
⇒「アルコールはほどほどに」「(喫煙しているなら)禁煙」 それ以外は一切ありません。

 
 

 

質問者様から 【質問2 】

男性乳がん 術後治療について
性別:男性
年齢:48
病名:男性乳がん 浸潤 硬がん
症状:
投稿日:2021年7月20日

田澤先生。
先日は回答をいただきありがとうございました。

男性乳がんという希少ながんで、色々と分からないことや不安なことが多かったのですが、
田澤先生からのメッセージで心が軽くなり、病気に向き合い手術を受けることができました。

2週間前に、乳房切除手術を受け、本日病理検査の結果を聞いてきましたので、
是非、田澤先生のご意見を伺わせていただければと思います。

(病理検査の結果をもらえないかと聞いたのですが、いただけないという事で、
パソコン画面を必死にメモしました。)

浸潤がん 硬癌
16×15×16 pT1c
リンパ節転移 0/5,pN0(sn)
断端までの距離  胸壁側#4 浸潤がん2mm
静脈浸潤 vy0 v0
組織学的グレード 1
ER >66%(5)強度 強3
PgR>66% 強度 強3
MIB-1 index30%
HER2 scor3+

とのことでした。

そこで、病理検査の結果をもとにした7パターンの治療法での再発率や生存率が
数値化されているものをPC上で見せていただき、その中で推奨された治療法が
以下の2つです。
(こちらもPC画面からメモを取りました。)

①Tmab17+タモキシフェン
→15年乳がん再発率 6.2
死亡率減少効果 -2.4

②Tc4+Tmab17+タモキシフェン
→15年乳がん再発率 3.5
死亡率減少効果 -2.7

仕事上、できれば脱毛は避けたいところですが、やはり抗がん剤は有効的として
②の治療に臨むことがベストでしょうか?

主治医が治療法の選択はご本人にお任せします。
といった感じなので、
その場で決定することが出来ず、1週間後に回答することになりました。

①を選択した場合、今後エコーや腫瘍マーカー等で定期的に経過を観察し、万が一、再発等が見つかってから抗がん剤を使用する。
という方法はやはり考え方としてはありえないことでしょうか?

また、家系からも遺伝性乳がんの確立が高いと思っています。
(今後検査も考えています。)
男性の遺伝性乳がんの場合、今後、気を付けていくこと(検査を定期的にする等)はありますでしょうか?

男性乳がん(遺伝性可能性あり)はあまり症例がないとは思いますが、
病理検査の結果から、田澤先生が推奨される今後の治療法、予防法等を教えていただけたらと思います。

よろしくお願いいたします。

 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは田澤です。

男性乳癌では(当然ながら)エビデンスが無いので(ガイドライン上も)通常の(女性の)乳癌と同一の治療方針となります。
質問者はHER2陽性なので(当然)抗HER2療法となります。

★抗HER2療法は「必ず!!!」抗がん剤+trastuzumabとなります。
 
★★ このQAの長い歴史でも(早期だからと)trasutuzumab単剤を勧める(私から見ると)「困った医師」が(そこら中に)いるのには本当に残念に思います。

「①Tmab17+タモキシフェン
→15年乳がん再発率 6.2
死亡率減少効果 -2.4

②Tc4+Tmab17+タモキシフェン
→15年乳がん再発率 3.5
死亡率減少効果 -2.7

仕事上、できれば脱毛は避けたいところですが、やはり抗がん剤は有効的として②の治療に臨むことがベストでしょうか?」
⇒勿論②です。
 trasutuzumab単剤は「決して」行ってはいけない治療です。(trasutuzuamb単剤で
のエビデンスは全くない!)

 
 

 

質問者様から 【質問3 】

男性乳がん 術後治療薬について
性別:男性
年齢:48
病名:男性乳がん
症状:
投稿日:2021年7月29日

田澤先生こんにちは。

術後治療について田澤先生のご意見を伺いたく、7月(下旬)日に問い合わせをさせていただき回答をお待ちしておりましたが、回答が間に合わず、本日外来で治療方法が決まってしまいました。

TC4+Tamb+Pmab17 17/SERM 5-10y
?Tmab+Pmab初回投与(1泊入院)
?TC(ドセ+エンドキサン)+Tmab+Pmab 3週1回×4回
?Tmab+Pmab 3週1回×12
?内分泌療法 SERM(タモキシフェン)内服5-10年

以上となりましたが、治療内容としては問題ないと思われますか?

ちなみに、

Wパク+ハーセプチン+Tam
はどうなのでしょうか?と主治医に聞いてみましたが、少し前はその方法もあった?が、今はその方法はやっていない。

というようなお話で、結果的に上記の通りの治療を提案されました。

また?の治療が終われば脱毛は終わりますか?体調面でも副作用がキツイのは、?までと思っていて良いのでしょうか?
自宅に帰り落ち着いてから書類を見返していて、当初聞いていた治療より、Pmabが多かったのが気になりました。

病理検査の結果から、この内容で問題ないのか、過剰治療等でないのか、是非田澤先生のご意見をお伺いし、自信を持って治療に望みたいと思っております。

治療開始まであと10日程度あります。

お忙しいところ大変恐縮ですが、前回の質問に引き続きご意見をお聞かせいただければ幸いです。

よろしくお願い致します。

 

田澤先生から 【回答3】

こんにちは田澤です。

まずはpertuzumabの添付文章(以下抜粋)を見てください。

5.2 HER2陽性の早期乳癌の術後患者のうち、再発リスクの低い患者(リンパ節転移のない患者)における本剤の有効性及び安全性は確立していないことから、再発リスクが高い患者を対象とすること

質問者の病理(以下、前回のQより)
浸潤がん 硬癌
16×15×16 pT1c
リンパ節転移 0/5,pN0(sn)
断端までの距離  胸壁側#4 浸潤がん2mm
静脈浸潤 vy0 v0
組織学的グレード 1
ER >66%(5)強度 強3
PgR>66% 強度 強3
MIB-1 index30%
HER2 scor3+

★つまり基本的には「リンパ節転移あり」の患者さんにpertuzumabは推奨されていることが(添付文章からは)解りますね?
実際には(臨床試験より)「腫瘍径が大きい」とか「グレードが高い」「ERが陰性」なども保険上は認められることが多いことは中外製薬から確認していますが、
「それらも」質問者には当て嵌まらない。

やはりTC+trastuzumabとすべき(つまりpertuzumabは不適切)だと思います。