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マンモトームでガン細胞の散らばるリスクは?

[管理番号:231]
性別:女性
年齢:42歳
宜しくお願いします。
一昔前には、マンモトームで患部に傷をつけることにより、ガン細胞が散らばって転移を誘発するのではと言われていた時代があり、現在は散らばりは起こらないという見解が主流のようですが、臨床の結果そういうことになっているのでしょうか。
ガン細胞は血管を通って他の臓器に転移する。
ということを考えると、非浸潤ガンに傷をつけることにより、浸潤ガンになる可能性はある気がします。
そう考えると、診断が確定後、手術は迅速に受けるべきですよね。
勿論、散らばりリスクを怖がってマンモトームを受けないのは違うと思います。
ただ、マンモグラフィ等で7割がたガン、もしくは良性だとしても手術による生検が必要である場合は、1ヶ月ちかくもの順番待ちをして、リスクのあるマンモトームを受ける必要があるのか?と考えてしまいます。
ご意見伺えれば幸いです。
 

田澤先生からの回答

 こんにちは。田澤です。
 「マンモトーム生検による腫瘍の播種」の心配ということですね。
 診療をしていても、時々「不安な声」を聞くことがあります。
 それでは回答します。

回答

「現在は散らばりは起こらないという見解が主流のようですが、臨床の結果そういうことになっているのでしょうか。」
⇒その通りです。
 正確にいうと、「一次的には少量の癌細胞が(針の通り道に)存在することがありますが、時間経過と共に(死滅して)消失していく」という事です。
 「100%消失する」と断言できる医師は誰も居ないと思います。
それでも「マンモトーム生検が必要な検査」と容認されている理由は

  1. 診断を早くつける方が「患者さんの利益」となる
  2. 乳房温存術の場合は「術後放射線照射」が必ずかかるので、実際にそれが原因で局所再発する事はない。(少なくとも私の経験ではゼロです)
  3. 乳房切除の場合は(通常、術後放射線は無い)ので、必ず「針の通り道を皮膚まで含むように」切除ラインを設定しています。

 
「非浸潤ガンに傷をつけることにより、浸潤ガンになる可能性はある気がします」
⇒それは大丈夫です。
実はこれと「全く同じ表現」で患者さんに直に尋ねられた経験が最近もありました。(その際にも同様にお答えしたのですが)
 
●懸念次項は
「乳管内の非浸潤癌」が外から「針が刺さる事で」乳管からこぼれ落ちる⇒(せっかく乳管内に留まっていた癌細胞が)「乳管から外へ出て浸潤癌となる」 というストーリーだと思います。
 
 しかし、大丈夫です。「非浸潤癌⇒浸潤癌」とは「乳管に穴が開いて、乳管から外へ出る」という意味では無く、(遺伝子変異が起きて)「周囲へ浸潤する能力の獲得」が起こって始めて「浸潤癌」となるのです。
 
 つまり、(マンモトームや針生検による)乳管の穴から「非浸潤癌の癌細胞」がこぼれ落ちても「浸潤癌では無い」のです。
※「非浸潤癌」が(針による乳管の穴から)例え「乳管外」へこぼれても「周囲へ浸潤しない」し「血管内に入り込んで」転移を起こす事もないのです。
 これは統計的な事実が証明しています。
 
「マンモグラフィ等で7割がたガン、もしくは良性だとしても手術による生検が必要である場合」
⇒少し勘違いがあるように思います。
 
「マンモグラフィ等で7割がたガン」
⇒ステレオガイド下マンモトーム(以下ST-MMTと略します)で癌と確定した後の手術は「生検」ではありません。
 手術は乳房温存術+センチネルリンパ節生検となり、「ただの生検よりも乳腺を大きく切除+リンパ節も1つ摘出」となります。
 
  
「良性だとしても手術による生検が必要」
 ⇒(ST-MMTで良性と結果がでたら)「手術による生検」は不要となります。
 ※「良性でも外科的生検が必要」というのは完全な誤りです。
◎確認して欲しいのは、(乳癌と確定診断されていない状態の)「外科的生検」と(ST-MMTなどで乳癌と確定診断された後に行う)「手術(乳房温存術+センチネルリンパ節生検)」が全く別物である。という事実です。
 
★我々「乳腺外科医」は「乳癌と組織学的に確定診断のないものを」手術(乳房温存術+センチネルリンパ節生検)することは決してないのです。
 「質問者の言われるところの(7割がた癌かな?)と思った腫瘍」は
 (ST-MMTか、もしくは通常の「外科的生検」で、まずは確定診断)を行い
 ⇒(その後に)手術(乳房温存+センチネルリンパ節生検)を行う手順が絶対に必要なのです。
 
 
 

 

質問者様から 【感想】

散らばりリスクについて質問させていただいたものです。
浸潤する力を持って始めて浸潤ガンになる。
施術治療後の放射線治療で死滅する。
どちらも素人には思い付かず、目から鱗の解答で、大変納得いたしました。
また、手術生検と、手術治療を混同しておりました。
疑わしきは早く切ってしまえ、と安直に考えていましたが、マージンをとって切除し、放射線治療も行う手術治療は体への負担も大きく、診断が付かないうちにできることではありませんね。
ありがとうございました。