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ルミナールAでの抗がん剤治療と、OncotypeDX検査の必要性について

[管理番号:5870]
性別:女性
年齢:44歳
ルミナールAでの抗がん剤治療と、OncotypeDX検査の必要性についてご意見をいただけたらと思います。
8月中旬に左乳房乳がん判定され、9月上旬からホルモン療法(ノルバデックス服用)開始。
10月下旬、温存手術を受けました。
術後の病理組織診断は以下の通りです。
左乳腺部切除(左上部内側81×56×25mm)
大きさ:35×27×15mm(主病変の大きさ)
47×37×15mm(非連続進展部を含めた大きさ)
組織型:浸潤性乳管癌(乳頭線管癌)
組織学的波及度:f(+) S(-)
核グレード:Grade1(核異型2点+核分裂像1点)
乳管内進展:(-)
静脈侵襲:v(-)
リンパ管侵襲:ly(-)
ホルモン療法の治療効果:Grade 1a
センチネルリンパ節生検:1/4 1箇所に転移あり最大5mm径
病院の方針として、リンパ節生検で転移が2個以下の場合はリンパ節郭
清は行わないため、リンパ節郭清なし
ER 陽性
PgR 陽性
HER2 陰性
Ki67 6~7%
ステージ2a
ルミナールAだろうと判断されています。
リンパ節の転移については2個以下なら郭清しなくても後の放射線照射で十分治療効果が見込めるということでした。
現在放射線治療中ですが、転移があったということでやや範囲広めで鎖骨下リンパも含めて照射を受けています。
主治医から、癌のサイズが大きかったこと、リンパ節転移があったことを理由にdose denseEC-DTXの抗がん剤治療を勧められています。
EC-DTXという抗がん剤の選択については、これが標準なので他にお勧めする選択肢はない。
dose denseについては、治療が早く終わるメリットと3週間サイクルよりこちらの方が効果があるというデータがある。
副作用は変わらない。
OncotypeDX判定を受けるのはお勧めする(それによって抗がん剤をやめる判断をするのはよい)と説明をうけました。
ご意見をいただきたいのは以下の3点です
・明らかにルミナールAだと思うのですが、リンパ郭清していないという条件で、抗がん剤は必要でしょうか
・抗がん剤が必要かどうかの判断のためにOncotypeDX判定を受ける価値はあるでしょうか。
ルミナールAでもOncotypeDX判定でハイリスクになるということはあるのですか?
・もし抗がん剤が必要と判断した場合、dose denseEC-DTXという治療コースは妥当でしょうか。
やや過剰な気がするのですが、もう少し負担の少ない治療はないでしょうか。
乳がん判定されてから、こちらのサイトで様々な情報を勉強させていただき本当にお世話になっております。
こちらの情報がなかったら、不安で潰れてしまっていたと思います。
感謝しています。
お忙しいところ申し訳ありませんが、回答いただければ幸いです。
よろしくお願いします。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
メール内容を読みました。
私は「局所(手術)の借り」を「全身(薬物療法)」で返すという考え方には全く賛成しません。
今回のケースでは
「リンパ節転移2個以内なら郭清せずに放射線をかける」というその施設の方針ですが、それは「2014 ASCOのガイドラインで(温存手術で)術後照射をする場合にはリンパ節転移2個までの転移では郭清省略すべき」を根拠としていると思いますが…
それは、局所(手術)の借りは局所(放射線)で返しているから理解し易いですが…
それを担当医が(拡大解釈して)「リンパ節転移があったのに腋窩郭清省略したから、抗癌剤(全身)が必要」とするのは、「物事を筋道だてていない」ということです。
「リンパ節の転移については2個以下なら郭清しなくても後の放射線照射で十分治療効果が見込めるということでした。」
⇒これは「冒頭でコメントした2014ASCOのガイドライン」のことです。
 そこに問題はありません。
 ただ、「そこに抗癌剤を絡める」ことに問題があるのです。
「主治医から、癌のサイズが大きかったこと、リンパ節転移があったことを理由にdose denseEC-DTXの抗がん剤治療を勧められています。」
⇒全く(抗癌剤を勧める)理由になりません。
「・明らかにルミナールAだと思うのですが、リンパ郭清していないという条件で、抗がん剤は必要でしょうか」
⇒不要です。
「・抗がん剤が必要かどうかの判断のためにOncotypeDX判定を受ける価値はあるでしょうか。」
⇒価値があるかというと…
 OncotypeDXをすることで(主治医の考えが誤りで)「抗癌剤をしないでいいことを確信できる」という意味はあります。
「ルミナールAでもOncotypeDX判定でハイリスクになるということはあるのですか?」
⇒厳密に言うと…
 質問者は少々勘違いしています。
 Ki67=6~7%からは、 かなりの確率でルミナールAだと推測されるだけで(実は)「ルミナールAと診断」されている訳では無いのです。
 あくまでもKi67は「免疫染色だけでルミナールAとBに分けるための簡便法」なのです。
 本来のintrinsic subtypeは(多くの)遺伝子発現レベルでの分類なので、その遺伝子発現レベルの簡便verとしてOnoctypeDXがあるという位置づけです。
 このあたりは(おそらく質問者も既読だとは思いますが)『今週のコラム98~101』及び「トップページ」の「乳がんの分類」を是非、再読してみてください。
今週のコラム 98回目 ♯このグレーゾーンを「AとBに分ける」ためにOncotypeDXがあるのです。
今週のコラム 99回目 ★グレードは「参考程度」ということでいいですね?
今週のコラム 100回目! 「若いから」抗ガン剤をしましょう。は過ちなのです。
今週のコラム 101回目 (Ki67が20代はluminal Aの可能性が圧倒的に高く)本当に「Aなのか、Bなのか迷うのは30代以降」と言えるのです。
「やや過剰な気がするのですが、もう少し負担の少ない治療はないでしょうか。」
⇒抗癌剤はどう考えても不要に思いますが…
 やるならTCでしょう。