乳がんは早期発見、早期治療を目指しましょう。乳がん手術は江戸川病院|乳がんプラザ



[管理番号:2040]
性別:女性
年齢:42歳
田澤先生、こんにちは。
いつもQandAでのわかりやすくて勇気づけられる回答をありがとうございます。
勉強になることばかりで、毎日欠かさずサイトを拝見しています。
左胸乳がんの温存手術を受けることになり、センチネルリンパ生検で転移があった場合の廓清省略についてご相談させてください。
【術前検査】
左胸11×9×8(NT80mm)
主に非浸潤で、浸潤3ミリ
グレード1
Er(+)、PgR(+)、HER2(2+)、Ki67 low
センチネルリンパ生検で微小転移やマクロ転移(肉眼的転移?)1個であれば廓清を
省略することを検討していますが、総合的にみるとリスクは高いのでしょうか?
センチネルリンパ生検については、過去の質問で(最近では管理番号2017「リンパ節郭清省略の際の術後治療」)、田澤先生が①~③でとてもわかりやすく解説されており、私が悩んでいるのは、③の「SLNに肉眼的転移(>2mm)を認めた場合」にあたります。
先生も「議論の多い」ところとされています。
過去の回答では、確か江戸川病院は転移1個で廓清するとのことですが、③について改めて先生のお考えを教えていただければと思います。
日本乳癌学会のHPにあるガイドラインも読み、③は推奨グレオードがC1であることも理解しました。
C1ということは、やはり科学的根拠がまだなく、多くの医療機関では行ってはいないということでしょうか。
下記のような疑問点があります。
①廓清しない場合は、放射線や化学療法がありますが、十分に対応できるものでしょうか?
②センチネルに1個転移があっても奥のリンパにはない可能性もあると聞きました。それは本当でしょうか?
③②に該当する場合があるから、リンパ浮腫のリスクと天秤にかけて廓清省略を考えることができるのでしょうか?
④ガイドラインにある、「SLN転移陽性患者の約半数は非SLN転移を有していない」といのは、50%は陰性だったということでしょうか?そのため無駄に廓清しているということでしょうか。
センチネルリンパ節に転移があって廓清しても、実際にリンパに転移がないかもしれない。
その場合は、リンパ浮腫などの後遺症への不安があります。
でも、もしあった場合、リンパに転移を残したままでよいのか?となります。
「1個の転移であれば、廓清省略しても予後を悪くしない」という情報もあります。
何をもとにどう判断してよいのか混乱しています。
田澤先生のご意見を聞き、しっかり理解したうえで、再度主治医にも質問し、納得できる根拠を引き出して決断しようと思っています。
ご回答をよろしくお願いいたします。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
cT1, cN0, luminal A
十分な早期乳癌であり、「微小転移はともかく、肉眼的転移の心配」はかなり低そうです。
しかし、正しく理解した上で「事前に準備(担当医と話し合い)しておく」という姿勢を支持します。

回答

「センチネルリンパ生検で微小転移やマクロ転移(肉眼的転移?)1個であれば廓清を省略することを検討していますが、総合的にみるとリスクは高いのでしょうか?」
⇒「肉眼的転移」での郭清省略については、「正に議論のあるところ」なので結論をだすことはできません。
 ただし、エビデンスからすると「リスクは低い」と言えます。
 私は「肉眼的転移は(たとえ)1個でもあれば、郭清」という方針をとっていますが、ASCO(American Society of Clinical Oncology)のガイドラインでは「2個までの転移であれば照射を伴う温存手術であれば省略すべき」となっています。
 これは、ACOSOG Z0011試験の結果を受けてのものなので、これに該当する症例はcT2, cN0以下の症例となります。
 ○その意味では質問者は「cT1, cN0」しかも「術前浸潤径3mm」であれば、ASCOのガイドラインに従って「郭清省略する症例基準」に当てはまっていると言えます。
 
「C1ということは、やはり科学的根拠がまだなく、多くの医療機関では行ってはいないということでしょうか」
⇒現時点での「エビデンスでは省略できそう」であることは間違いありません。
 ASCOのガイドラインからも「肉眼的転移1個で郭清」ということには十分な妥当性があります。
 ただ、乳癌学会としては現時点で「無秩序に省略」となってしまうことに慎重な姿勢をとっているだけで、焦点は「適応する対象症例の選別」となります。
 今後、「それら郭清省略の細かい条件」が定まってくるでしょう。
 
「①廓清しない場合は、放射線や化学療法がありますが、十分に対応できるものでしょうか?」
⇒対応できます。
 臨床試験では有る条件を満たせば(T2N0以下、SLN2個以下で)「術後照射と適切な術後補助療法(化学療法に限りません)」を行えば「非郭清群と郭清群の間で全生存率や再発率に差は認めたかった」という結論です。
 
「②センチネルに1個転移があっても奥のリンパにはない可能性もあると聞きました。それは本当でしょうか?」
⇒半数は「実際に」ありません。
 実際に手術していると「センチネルリンパ節に1個転移」⇒追加郭清では「他に無し」ということは多いです。(半数以上)
 
「③②に該当する場合があるから、リンパ浮腫のリスクと天秤にかけて廓清省略を考えることができるのでしょうか?」
⇒臨床試験の結果からは、
(天瓶にかけるというより)実際に「効果に差が無い」のですから「リンパ浮腫のリスクを無駄にあげる」ことになります。
 
「④ガイドラインにある、「SLN転移陽性患者の約半数は非SLN転移を有していない」といのは、50%は陰性だったということでしょうか?そのため無駄に廓清しているということでしょうか。」
⇒そういうことになります。
 
「センチネルリンパ節に転移があって廓清しても、実際にリンパに転移がないかもしれない。その場合は、リンパ浮腫などの後遺症への不安があります。」「でも、もしあった場合、リンパに転移を残したままでよいのか?となります。」
⇒その通りです。
 その疑問を解消するための臨床試験なのです。
 その結果では(現時点では)「郭清省略しても大丈夫(差が無い)」となっているのです。
 
「1個の転移であれば、廓清省略しても予後を悪くしない」という情報もあります。何をもとにどう判断してよいのか混乱しています。」
⇒現時点でのエビデンスでは、その通りです。
 
「田澤先生のご意見を聞き、しっかり理解したうえで、再度主治医にも質問し、納得できる根拠を引き出して決断しようと思っています。」
⇒私が再三、「肉眼的転移の取り扱い」で示している様に、結論はでていないのです。
 つまり以下の2つから「担当医と患者さんの間で事前に話し合う」ことが推奨されているのです。
 1.ASCOのガイドラインではACOSOG Z0011試験の結果を基として「T2N0, SLN2個以内, 術後薬物療法+放射線」という基準を満たせば「郭清省略すべき」
 2.日本のガイドラインでは、「現時点でのエビデンスは必ずしも十分ではない」という立場で、ただ適切な基準(症例選択や術後療法)を施設で設けて行ってもよい
○私は「肉眼的転移では郭清省略はしていません」それは「エビデンスとして不十分」と現時点では考えているからです。





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