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術後の化学療法について

[管理番号:4891]
性別:女性
年齢:38歳
初めまして。
乳癌と告知されてからここの乳癌プラザで、とても勉強させて頂いております。
お忙しい中このQ&Aの場を設けて頂き本当に感謝致しております。
今回、主治医より術前にも術後にも若いからと化学療法をした方が良いと提案され本当に化学療法した方が良いのか迷いがあり田澤先生にお聞きしたく連絡しております。
2017年1月検診で乳腺エコー
左乳房 二次検査となり
3月エコー、マンモ、細胞診で左乳癌告知
総合病院にて
4月CT造影、MRI,骨シンチ
術前検査、針生検マンモトーム
術前針生検↓結果
grade1(nuclear atypia2+mitotic counts1=3) ER,J-score3,Allred score
PS5+IS3=TS8 pgR,J-score3,Allred score PS5+IS2=TS7
p53(1+),HER2,score1+,MIB-1 LI,12.3%,
CK19(3+)
MRIで非浸潤の広がりと乳腺エコーで2つ浸潤癌がありそうとのことで、左乳房全摘出勧められ
5月下旬手術
左乳房全摘出+センチネルリンパ節生検
術後
ステージ1で、センチネルリンパ節生検で2つ組織を取り2つとも陰性でしたので、腋窩郭清はしておりません。
術後診断
Breast,L-AC(Bt):i)Invasive ductal carcinoma ⅱ)Invasive lobular carcinoma
所見
ⅰ)Papillotubular carcinoma with predominant intraductal component,f,pT1b(0.
7cm),intraductal spread(2+,non-comedo type),ly0,v0,nuclear grade1(nuclear
atypia2+mitotic counts1=3),fibrocystic change(+).
Many invasive foci are observed.
T:7×6×6 mm localized F
ER:J-score3,Allred score PS5+IS2=TS7,
PgR:J-score3,Allred score PS5+IS2=TS7
p53(1+),HER2:score2+,MIB-1 LI:21.8%
DISH for HAR2 is undergoing
まだHAR2が出てないから分からないとのことで1週間後に結果が出る。
ⅱ)invasive lobular carcinoma,g,pT1a(0.3cm),intraductal spread(1+,non- comedo type),ly0,v0(11).
ER:J-score3,Allred score PS5+IS2=TS7
PgR:J-score3,Allred score PS5+IS2=TS7
p53(1+),HAR2:score0,MIB-1 LI47.8%
この結果から、主治医よりFEC100を3週間おきに4回、DOCを4回、もしHAR2が陽性であればその後ハーセプチンを1年間、その後ホルモン療法5年間を勧められました。
術後の説明もほとんどなく、また結果のデータも英語なのでよく分からなくなりました。
化学療法はこれでやった方が良いでしょうか?もし田澤先生でしたらどの化学療法をお勧めして頂けますか?
術前には、リンパに転移がなければ化学療法はやらなくてもいいかもとお聞きしていたのに、若いという事とpT1b0.7cmあるので0.5cm以上あるからという事で化学療法を勧められました。
術前の主治医と、手術と術後の主治医は別の医師です。
私が手術を乳腺外科の先生を希望していましたが、希望が叶わず術前も術後の2人の医師も外科全般できる医師という事でした。
(手術、術後の医師は消化器外科部長でした)
私が「化学療法が必要なのは
MIB-1 LIが47.8%あるからでしょうか?」とお聞きしたら0.3cm程度の浸潤だからここは特に考えなくても良いとのことでした。
HAR2が陽性でも陰性でも化学療法はやった方が良いと強く言われてます。
私も主人もホルモンが陽性だからホルモン療法で良いのではと考えているのですがどうでしょうか?ホルモン療法で5年間ではなく10年間やってもいいと思っております。
私には小学生と幼稚園の子供2人いるので再発はしたくないので、化学療法を勧められればするつもりなのですが、このQ&Aを拝見させて頂いてると私はしなくてもいいのではと思っております。
(もしこのQ&Aを見ていなければそのまま受けていたと思います)
例えば、HAR2が陽性であれば私の場合はトリプルポジティブになるのでしょうか?
術前ではHAR2が陰性でしたが、術後陽性になる事はあるのでしょうか?
0.7cmと0.3cmの浸潤で、左乳房全摘出しリンパ節にも転移ないのに化学療法はやった方が良いのか…。
ぜひ田澤先生の御意見をお聞かせ頂きたいと思います。
もし田澤先生でしたら私の場合、術後にどのような療法を提案していただけますか?
宜しくお願い致します。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
まとめると
2つの病変は
pT1b(7mm), pN0, luminalA(Ki67=21.8%) 但し、HER2陽性ならluminalB(HER
2陽性)と定義されます。
pT1a(3mm), pN0, luminalB(Ki67=47.8%)
⇒HER2が陽性なら抗HER2療法の適応がありますが、実際には7mmでは迷うところです。(NCCNのガイドラインでは「考慮する」となり必須ではありません。つまりご本人次第だということです)
 HER2陰性ならば、化学療法の適応自体全くありません。
「この結果から、主治医よりFEC100を3週間おきに4回、DOCを4回」
⇒(HER2陰性の場合に)これをやるのは(いくらなんでも)過剰診療です。
 私なら(よほど、患者さん側から強い希望がないかぎり)決して化学療法はしません。
「もしHAR2が陽性であればその後ハーセプチンを1年間、その後ホルモン療法5年間を勧められました。」
⇒7mmなら、「まずは、患者さん側の意思の確認」から始めるべきです。
 (其の上で)抗HER2療法を行うのは(患者さん側からの意思があれば)間違いではありませんが、その場合でも「非アンスラサイクリンレジメン」でしょう。
「化学療法はこれでやった方が良いでしょうか?もし田澤先生でしたらどの化学療法をお勧めして頂けますか?」
⇒化学療法は勧めません。
 (もしもFISH陽性となった場合には)ご本人が積極的なら、抗HER2療法を行いますが、その際には「非アンスラサイクリンレジメン」とします。
「若いという事とpT1b0.7cmあるので0.5cm以上あるからという事で化学療法を勧められました。」
⇒どちらも抗癌剤を勧める理由にはなりません。
「私も主人もホルモンが陽性だからホルモン療法で良いのではと考えているのですがどうでしょうか?」
⇒それであれば、(もしもFISH陽性であったとしても)ホルモン療法単独で何ら問題ありません。
「例えば、HAR2が陽性であれば私の場合はトリプルポジティブになるのでしょうか?」
⇒その通りです。
「術前ではHAR2が陰性でしたが、術後陽性になる事はあるのでしょうか?」
⇒時にありますが…(あまりありません)
「もし田澤先生でしたら私の場合、術後にどのような療法を提案していただけますか?」
⇒タモキシフェン5年です。