[管理番号:4268]
性別:女性
年齢:30歳
田澤先生
初めまして。
いつもこちらで勉強させて頂いております。
もうすぐ手術を予定しているのですが、それにあたりどうしてもお聞きしたいことがあり、投稿させて頂きました。
2016年7月に左胸の浸潤性乳管癌と診断されました。
(ちなみに、妊娠中にしこりを発見、その時は悪性を疑うものではないとの判断でしたが、産後すぐ他の病院での検査により悪性と判断されました。)
ステージIIB
以下が針生検の結果です
エストロゲン 20.1%
プロゲステロン 陰性
HER2 3+
ki 43.6%
グレード 1
Cytokeratin5/6陰性←これは何でしょうか?
ルミナルB
左胸の上部左側に17.8㎜のしこり
そこからぼんやりと広がりがみられ、合計で5~6センチの範囲にわたっている。
もしかしたら一番手前のリンパに到達しているかもしれない。
PETCTではリンパ節の取り込みはなかったものの、エコーの所見では要注意のグレーゾーンでした。
発見当初は先に手術をする予定でしたが、
MRIとマンモグラフィの結果、腫瘍の広がりが広範囲で石灰化も多数あったため、小さくして温存を目的として術前化学療法を行うことになりました。
ウィークリーパクリタキセルとハーセプチン(3週に1回)です。
主治医から、私の場合は抗がん剤の効果が期待できるタイプであり、ぽっきり治すことが可能であるとの説明を受けました。
ただ、治療が始まってみたらパクリタキセル5回目終了時点で腫瘍の縮小傾向が見られない
9回目終了時点で5㎜程小さくなったかなという程度でほぼ変化が見られなかったことから、残念ながら効果がみられなかったと判断され、パクリタキセルとハーセプチンは中止、FECに切り替えました。
FECに切り替えてからは腫瘍が小さくなり始め、2回目終了時点で10.5㎜、4回目終了時点で約7㎜ほどになりました。
メインの腫瘍からの広がりも消えはしなかったものの縮小していたようです。
石灰化も減っているとのことでした。
FECが効果があったことは、素直に嬉しく思っているのですが、ハーセプチンが効かなかったことに非常に不安を感じております。
主治医は、ハーセプチンは100パーセント効果がある訳ではない、約7割の人には効果がみられるが、約3割の人には効果がないと言われました。
絶対にぽっきり治すぞと前向きに治療に取り組んできたのですが、自分が約3割に入ってしまったことが本当にショックです。
ハーセプチンができる前までは、HER2陽性患者の予後は悪いものだったと伺っております。
ということは、ハーセプチンが効かなかった私の予後は悪く、将来再発や転移を繰り返すのでは…正直私の命は長くないかもしれない…腫瘍の広がりも大きいし…などと考えてしまい、不安で恐ろしくて押しつぶされてしまいそうになる気持ちと必死に戦っております。
小さい子供もいるのに、子供の顔を見たら涙があふれてしまいます。
私の場合、再発転移のリスクは高いのでしょうか?
また、今後再発や転移を少しでも防ぐためにできることはありますでしょうか?
また、妊娠するために病院に通い、ホルモン剤を飲んでいたのですが、これは何か癌と関係があったのでしょうか?
別件ですが、リンパ節への転移も気になっております。
横長で平べったく、一部少し盛り上がったような形の腫れがあり、これがFEC二回目までは大きさが変わらなかったことから「転移による腫れではなく、反応性ということもあり得る」とのことでしたが、4回目終了時点で長さは変わらないが厚さが半分になっていたことから、転移の可能性もあるがエコーとMRIの所見だけでははっきりと断定はできないというようなお話がありました。
そのため手術中にセンチネルリンパ生検をし、陽性であればリンパ郭清をすると言われました。
疑わしいのであればセンチネルリンパ生検はせずにリンパ郭清をすべきなのではと聞いてみたのですが、先生は確実に転移を認めていない場合はまずはセンチネルリンパ生検で判断してからの郭清だとおっしゃいました。
これは手術方法として正しいのでしょうか?
私は術前化学療法をしたため、もともとはセンチネルリンパ節に転移があったのに抗がん剤の効果で陰性となり、郭清されるべきリンパが放置されてしまったらどうしようと不安です。
先生はどのようにお考えでしょうか?
もともと腫瘍を小さくして温存を目的として術前化学療法をおこないましたが、結局は「もともと癌があった部分は消えていたとしても全てとった方がよい、広がりが大きく胸の上半分はとることになる」とのことで結局全摘となり、2月に手術を予定しています。
それであれば術前化学療法をした目的は何だったんだろうとも思ってしまい、色々と混乱しております。
一度に色々と質問してしまい申し訳ございません。
拙い文章で恐れ入りますが、どうぞ宜しくお願い申し上げます。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
まず治療方針の「大きな誤り」を指摘せずにはいられません。
「小さくして温存」目的で術前化学療法を選択したとありますが…
「腫瘍の広がりが広範囲で石灰化も多数」というのであれば、(たとえ、抗ガン剤が奏功し腫瘍が見掛け上縮小したとしても)「温存手術を行うのはリスキーすぎる」ことになります。
⇒その理由は
「5cmの単一の腫瘍が縮小」することと、「5cmの範囲に点在している腫瘍が、それぞれの場所で縮小」することでは、同じ様でいて「全く意味が異なる」のです。
♯後者は(せっかく縮小しても)「収束点が複数ある」ので、結局「切除範囲は(抗癌剤前と)変わらない」のです。
「結局は「もともと癌があった部分は消えていたとしても全てとった方がよい、広がりが大きく胸の上半分はとることになる」とのことで結局全摘」
⇒そんなことは最初から解っている事なのだから、「最初から治療方針自体に誤りがあった」と非難されても仕方がありません。
「私の場合、再発転移のリスクは高いのでしょうか?」
⇒考え過ぎです。
「また、今後再発や転移を少しでも防ぐためにできることはありますでしょうか?」
⇒術後はHER単剤(術前に行った残り)を行うべきです。
♯術前にweeklyで9回やっているわけだから(triweekly換算で3回となります)、残り15回行いましょう。(術前に目に見える効果が無かったからといって、目にみえない癌細胞の再発を予防できないとは限らないのです)
「また、妊娠するために病院に通い、ホルモン剤を飲んでいたのですが、これは何か癌と関係があったのでしょうか?」
⇒不妊治療はリスクを上げないことが解っています。
「確実に転移を認めていない場合はまずはセンチネルリンパ生検で判断してからの郭清」
「これは手術方法として正しいのでしょうか?」
「先生はどのようにお考えでしょうか?」
⇒これは担当医が正しいです。
「それであれば術前化学療法をした目的は何だったんだろう」
⇒その通りです。
そもそも「術前化学療法の適応ではなかった」ということです。
普通に手術をして、術後「抗HER2療法」を行えば「何も悩む事はなかった」のです。