[管理番号:1627]
性別:女性
年齢:43歳
田澤先生よろしくお願いいたします。
1週間半程前にシンガポールにて左胸全摘+腋下リンパ節郭清しました。
術後の病理検査結果は下記の通りです。
Infiltrative ductal carcinoma浸潤性癌は3つあり、
それぞれ1.2cm, 1.1cm, 0.4cmでした。
センチネルリンパ節1個に微小転移(NSLNには転移
なし。The axillary node are negative for
milignancy 0/14)
Oestrogen Receptor Status: Positive(90%) Progesterone Recetor Status:
Positive (90%)
HER2 Oncoprotein Overexpression Status: Negative
ki67はこの病院では調べていないとのこと。
核グレード:1(腫瘍のうち2つはtubule formation-1,
nuclear pleomorphism-1, mitotic activity-1 total score 3/9, 3つ目(1.2cm)は
tubule formation-1, nuclear pleomorphism-2, mitotic activity-1 total score
4/9)
昨日今後の治療について主治医と話をしたところ、化学療法を6ヶ月、その後ホルモン療法を5年が良いのではないか、とのことでした。
私がどうしても化学療法が必要なのかとたずねると、オンコタイプDX検査をして化学療法治療の必要性を確認することもできるが、そこまで高額な検査をするよりも(しかも結果化学療法が必要になるかもしれないし)、3-4%かとは思われるが上乗せが期待できる化学療法を薦めるとのことでした。
私自身はできる限り再発を防ぎたいのでそのためでしたら抗がん剤をする覚悟はあります。
どんな抗がん剤を使うかはMedical Oncologistと相談しなければならないようで、昨日は教えてもらえませんでした。
できれば抗がん剤は短い期間の投与を希望していますが、私のような症状の場合4クールで効果的に完了で
きる抗がん剤はあるでしょうか?
またもう一点気になっているのが、私の父方の祖母と叔母が乳がんになっており、もしかすると遺伝性の乳がん
なのではということです。
やはり遺伝子検査はしたほうが良いでしょうか?
発病したのはおそらく50歳代だったかと思っているのですが、定かではありません。
余談ですが、祖母はその後103歳まで生きて、叔母は現在84歳です。
田澤先生のご意見をお聞かせください。
よろしくお願いいたします。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
pT1c(12mm), pN1mi, luminal type
Ki67は測定していないが「核グレード1(mitotic activety-1)」からは、「luminal A」と考えます。
回答
「私のような症状の場合4クールで効果的に完了できる抗がん剤はあるでしょうか?」
⇒私であれば、そもそも「化学療法は勧めません」
Luminal Aであれば、「化学療法の上乗せ」は「リンパ節転移4個以上」と考えます(St. Gallen 2015より)
○化学療法をするなら「TC療法」があります。これなら4クールで終了します。(ルミナールタイプでの化学療法はTCが推奨されます)
担当医が勧めている「6ヵ月の化学療法」は「アンスラサイクリン+タキサン」の化学療法です。これは通常「トリプルネガティブ」での化学療法に行います。
「やはり遺伝子検査はしたほうが良いでしょうか?」
⇒一応、「遺伝子検査の対象」にはなりますが…
私の個人的な意見からすると「不要」に思います。
質問者が「トリプルネガティブ」であれば遺伝性乳癌「BRCA変異」も考えますが、「ルミナールタイプ」なので、「異常無さそう」に思います。
○大事なことは(仮に)「遺伝性乳癌と判明」したとしても「治療方針が変わる」わけではないことです。
「遺伝性乳癌の特効薬が開発されれば」別ですが…
質問者様から 【質問2】
田澤先生
早速にご回答頂きとても感動しております。
有難うございます。私が日本にいれば、田澤先生の病院に治療をお願いすることが出来たのにと、残念に思ったりしております。
昨日腫瘍内科医と話しをした所、腫瘍が1cm以上、リンパ節転移があるからとの理由でTC治療を勧められました。
私がかかっているシンガポールの病院では、なぜかサブタイプについてあまり言及がありません。
まだ抗癌剤治療を最終的に承諾するまでに数日はありますので、もう一度腫瘍内科医にサブタイプなどを考慮した上での意見を再確認しようと思っています。
もう一点、昨日のオンコロジストとの会話で、抗癌剤治療が終わったら放射線をするかどうか放射線スペシャリストと相談した方が良いと言われました。
放射線治療は頭になかったので少し驚いています。
たとえ微小転移と言えども転移は転移は中で、そこが引っかかっているようです。
ly, vについてはレポートには無かったため、こちらは確認してくれるようです。
勧められたというより、相談してください、と言う感じでした。
お忙しい所恐れいります、放射線治療の必要性について田澤先生のご意見をお聞かせ下さい。
よろしくお願い致します。
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
「pT1c(12mm), pN1mi, luminal type」
回答
「腫瘍が1cm以上、リンパ節転移があるからとの理由でTC治療を勧められました」
⇒「リンパ節転移といってもmircometastasis」です。
Luminal A相当だし、「化学療法の適応」は無いと思いますが…(上乗せも殆どないでしょう)
「放射線をするかどうか放射線スペシャリストと相談した方が良い」
⇒不要と思います。
「乳房切除術後の照射」の適応基準は「リンパ節転移1~3個」では推奨度B 「リンパ節転移4個以上」では推奨度Aとなります。
微小転移では「勧める根拠が無い」と思います。
○実際の(私の)診療でも「そのように」しています。
質問者様から 【質問3】
田澤先生
大変お世話になっております。その後主治医と面談した際に、田澤先生と同意見で放射線治療は受ける必要は無いだろうとのことでした。
引き続き抗癌剤は行うい、その後ホルモン治療という方向で話は進んでいるのですが、そのもう1つの理由として"乳がんが1個はなく複数あったから"と言っていました。確かに主な浸潤性腫瘍はお伝えしている3つ、それらの近くにも1~3mmの浸潤性腫瘍が1個づつあったり、low
gradeの非浸潤性乳管がんが見られるなどのコメントの記載がレポートにありました。自分の中でも
"悪性腫瘍が複数あったこと"と"遺伝性の場合もう片側のことも考える"と
抗癌剤治療をやるべなのではと迷いがあり、どうして良いのか分かりません。私が遺伝性を疑っているのは、祖母と叔母が乳がんになり、自分も43歳で発症(実際は40歳位からすでに発症してたかも)、片側に複数の原発乳がんあり、だからです。
いずれにしても私の場合、悪性腫瘍の数が通常よりかなり多いと思いますが(こういうケースはありますか)、悪性腫瘍の数は乳がんのステージや進行度、治療方針を決める理由になりますか?
手術をしていない右側にも小さいシコリがポツポツ幾つかありますが、今の所こちらは問題無いと言われているものの、左胸が同じような状況で始まり(シコリは最初からもう少し大きかったですが)、結果的に数年経って乳がんと診断されましたので、とても心配しています。
これから検査をしっかりしていくことは必要かと思いますが、その際の注意点、触診/マンモ/エコー以外で役立つ検査等ありましたら教えて下さい。
右胸にもいつしか乳がんが発生しるかもしれないなと今から心配です。
もう少し自分の考えを整理し、今週中にオンコロジストともう一度話し合って、最終決断をしようと思います。
繰り返しになり恐れ入ります。田澤先生のご意見をお聞かせください。
宜しくお願い致します。
田澤先生から 【回答3】
こんにちは。田澤です。
pT1c(12mm), pN1mi, luminal type Ki67は測定していないが「核グレード1(mitotic activety-1)」からは、「luminal A」私は「抗がん剤は不要」と思います。
回答
「悪性腫瘍の数が通常よりかなり多いと思いますが(こういうケースはありますか)、悪性腫瘍の数は乳がんのステージや進行度、治療方針を決める理由になりますか?」
⇒全く無意味です。
「数など何の意味も」ありません。
最大浸潤径(この場合12mm)だけが意味ある数字です。
「これから検査をしっかりしていくことは必要かと思いますが、その際の注意点、触診/マンモ/エコー以外で役立つ検査等ありましたら教えて下さい」
⇒普通に1年に1回の検診で十分です。
「繰り返しになり恐れ入ります。田澤先生のご意見をお聞かせください」
⇒前回もコメントしましたが、普通に「ホルモン療法単独」です。 何も特別な事はありません。