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術後の全身治療について

[管理番号:7332]
性別:女性
年齢:42歳
病名:右乳がん 浸潤性乳管癌
症状:

いつも拝見させていただき勉強させていただいております。

今年の1月に右乳がんC領域と診断され3月下旬に温存手術を受け
最終の病理結果を伝えられました。

【浸潤性乳管癌 硬性型】
ER>90% PGR70% HER2 1 ki67 20%以下(組織検査時は14%でした)
浸潤径 11mm
腫瘍径 11mm
脈管侵襲 リンパ 静脈ともに 0
断端 非露出>5mm
SLN 1/1 (GEF:HE +cake1/3)3mm

術前にはセンチネルリンパ節の微小転移は廓清省略と取り決めておりました。

直後の説明ではセンチネルリンパ節への転移は2mmなので省略しました
と伝えられましたが病理結果では3mmとなりました。

その上で今後の方針として主治医からは下記を提案されました。

①ホルモン剤に加えて抗がん剤
②ホルモン剤のみ
③オンコタイプdx を実施して判断する

そこで田澤先生の見解を伺いたいのが
1)腋窩廓清省略の術後にマクロ転移とわかり体に残っているリンパ節に癌細胞が残り局所再発する可能性はあるのか、これにより治療方針が変わることがあるのか。
2)再手術し追加廓清する方が予後がいいのか。
3)主治医はマクロ転移があったので抗がん剤もした方がいいと思うとの見解ですが田澤先生ならどう言う治療方針、術後管理を行なっていくのか。
4)抗がん剤治療を行なった場合の上乗せは期待できるのか。
5)マクロ転移があったことで放射線照射の範囲をどう考えればいいのか。

普段の治療でお忙しいところ私たちの疑問に寄り添っていただき本当に感謝しております。

何卒よろしくお願いいたします。

 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。

術中迅速病理診断と最終病理診断の結果が乖離したということですね。
結果として「マクロ転移だったが省略した」というのが現状となります。

今週のコラム 144回目  肉眼的転移では 追加郭清>郭清省略なのです」を参照してもらいたいのですが、ガイドラインに準じて考えると…
マクロ転移の場合に省略が許容されるのは以下の条件です。
1.放射線照射する。
2.2個以内である。

質問者の場合に問題となってくるのが上記2です。
つまり1個しか調べていないので)『本当に2個以内なのか?』確認がなされていないわけです。

その意味では厳密にガイドラインに沿うためには、「腋窩郭清を追加する」もしくは(少なくとも)「2個以内なのか、再度(センチネルリンパ節生検の)続きを行う」となります。
★もしも上記再手術を行わないのであれば、「その代わりに抗がん剤をする」という(「局所の借りを全身で返すという誤った発想」ではなく)きちんと「3か月に1回、腋窩超音波をして、監視する」ことです。

「1)腋窩廓清省略の術後にマクロ転移とわかり体に残っているリンパ節に癌細胞が残り局所再発する可能性はあるのか、これにより治療方針が変わることがあるのか」
→上記コメント通り。

 本来なら再手術も検討されるべき(その代わりに抗がん剤という誤った発想は避けましょう)
 ★再手術をさけるのであれば、3か月に1回の腋窩超音波です。(そのことと、抗がん剤をするのかどうか?は別問題です)

「2)再手術し追加廓清する方が予後がいいのか」
→局所再発リスクは上がりますが、生命予後には大きな影響はないとは思います。
(ただし、放置しないようにしましょう)『今週のコラム 119回目 『(エコーで認識されてから、腋窩郭清されるまでの)「3年間が勝負(その後の遠隔転移の出現の有無)を決めた」私は、そう考えるのです。』ご参照のこと。

「3)主治医はマクロ転移があったので抗がん剤もした方がいいと思うとの見解」
→主治医のその発想には賛成しません。
 「局所の借りを全身(療法)で返す」というのではなく、「局所は局所治療で(きっちり)型をつけるべき」であり(全身療法として)「抗がん剤が必要なのか?はリンパ節転移とは無関係」なのです。

「田澤先生ならどう言う治療方針」
→「再手術(追加郭清)」もしくは「3か月に1回の腋窩US」です。(後者でも十分許容範囲です)
  ★抗がん剤をすべきか?は「それとは全く別次元の話」です。

「抗がん剤治療を行なった場合の上乗せは期待できるのか」
→それは「OncotypeDX」しなくては不明です。

「5)マクロ転移があったことで放射線照射の範囲をどう考えればいいのか」
→(再手術しないのであれば)当然、腋窩も照射野に入れます。

 
 

 

質問者様から 【質問2 術後治療、経過観察について】

性別:女性
年齢:42歳
病名:浸潤性乳管癌
症状:

いつもお世話になっております。

先日田澤先生の回答を頂いた上で
今後の治療方針を決定しましたがいくつか疑問が出たので先生の見解を
再度伺わせていただきます。

術後の病理結果を受けて
腋窩廓清の再手術はせずに
ki67も20%以下という事もありホルモン剤単独で行く事を決めました。

①3月末の手術から放射線開始が5月末となり
この2ヶ月のブランクは問題ないでしょうか?
現在の病院ではホルモン剤は放射線治療と並行しては出来ないと言われております。

②放射線の照射範囲が全乳房照射に加えて
鎖骨上もと言われましたがこれは標準治療でしょうか?
③田澤先生からは3ヶ月ごとのエコーをしっかりすることが大事とおっしゃって頂きましたが主治医は1年後で充分だと言われ
3ヶ月毎にして欲しい旨伝えましたが
全く必要ないと議論にすらなりませんでした。

そこで診断を受けた地元の乳腺クリニックもしくはかかりつけの病院でエコーを受ける(この先生は乳腺外科医ではありませんがご自身が乳がんを克服されており何でも相談出来る先生です)で3ヶ月毎に見てもらう事でも大丈夫でしょうか?
やはり執刀医に見てもらいたいとは思いますが。

これから長い期間治療をするにあたりきちんと納得していきたいと思っております。

毎日お忙しい中ほんとうにありがとうございます。

何卒よろしくお願いいたします。

 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。

「①3月末の手術から放射線開始が5月末となりこの2ヶ月のブランクは問題ないでしょうか?」
→放射線は「術後5か月以内」に開始すればよいことになっています。(全く問題ないという事です)

「3ヶ月ごとのエコーをしっかりすることが大事とおっしゃって頂きましたが、
主治医は1年後で充分だと言われ3ヶ月毎にして欲しい旨伝えましたが、
全く必要ないと議論にすらなりませんでした。」

→全くバランスが悪い。

 「局所の責任は局所で返すべき」です。
 それを(自分の手を汚さずに)「抗がん剤でお茶を濁すのはありだけど、(面倒な)エコーはしたくない」ということですか?
 全くバランスが悪い。

「かかりつけの病院でエコーを3ヶ月毎に見てもらう事でも大丈夫でしょうか?」
→リンパ節は誰が見てもわかります。(大丈夫ということです)