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術前非浸潤から術後浸潤へ

[管理番号:2519]
性別:女性
年齢:40歳
いつも拝見させていただいてます、よろしくお願いします。
産後7年前より両胸に嚢胞が多数あり半年に一度エコーを受けてました。
2年前にマンモ、昨年11月にマンモ、エコーをし、形がいびつなしこりがみつかり針生検、12月初旬に非浸潤がんと診断1月下旬に左胸全摘しました。
2月下旬にでた病理結果以下の通りです。
乳頭腺管がん(浸潤がん)、核異形度1、脂肪組織浸潤-、リンパ菅侵
襲像 軽度.1y1、静脈侵襲像-
浸潤がんの広がり:17×12×10mm
手術断面にがんは認めない
センチネルリンパ4個中1個微小転移、約0.4mm、ER陽性、PGR陽性、
HER2:1+、陰性、ki67:16.6%
ステージ2a
今後の治療はホルモン療法(ノルバデックス、ゾラデックス)となりました。
質問ですが、
①リンパ節に転移が認められたのにホルモン療法のみで大丈夫か。
②術前非浸潤だったが術後2a期でステージが一気にすすみ早期でなくなり大変落ち込んでいます。
今後の治療、完治にむけ前向きにとらえてよいのか。
③乳がん発覚前、3、4ヶ月前より術側の肩周辺の関節が動作時でない時に痛く、腕を上げるとすぐ疲れたり腕に痛みを感じます。
かれこれ半年、ほぼ毎日あり、術前主治医に相談しましたが、非浸潤だから骨転移は考えられない必要なら整形へということでしたが整形はまだかかっていません。
今も痛みがありステージ2aだったこともあり骨転移がとても心配です。
次回の受診は1ヶ月後でその時主治医に検査をお願いするか、
その前に整形にかかった方が良いか迷っています。
骨転移の可能性もありますでしょうか。
長文失礼しました。
よろしくお願いいたします。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
pT1c(17mm), pN1mi(0.4mm), luminalA, NG1
「今後の治療はホルモン療法(ノルバデックス、ゾラデックス)となりました。」
⇒LH-RHagonistが必要かどうかですが…
 SOFT試験からは「35歳未満の有用性」しか証明されていません。
 わたしであれば「タモキシフェン単剤」とします。
 
「①リンパ節に転移が認められたのにホルモン療法のみで大丈夫か。」
⇒勿論です。
 そもそも「pN1miは(予後的には)pN0と同等」であることが解っています。
 また、「luminalA」における化学療法の追加は「リンパ節転移4個以上」と考えています(St. Gallen 2015より)
 
「②術前非浸潤だったが術後2a期でステージが一気にすすみ早期でなくなり大変落ち込んでいます。」
⇒十分な早期癌です。
 再発「低リスク」です。
 先にコメントした通り「pN1a=pN0」なのです。 実質1期です。
「③乳がん発覚前、3、4ヶ月前より術側の肩周辺の関節が動作時でない時に痛く、腕を上げるとすぐ疲れたり腕に痛みを感じます。」
⇒これは「関節痛」です。
 そもそも「骨」ではありません。
 
「今も痛みがありステージ2aだったこともあり骨転移がとても心配です。」
⇒100%ありえません。
 
「骨転移の可能性もありますでしょうか。」
⇒全くありません。
 
 症状が違う事もありますが、「乳癌で遠隔転移することは、かなり特殊」だということを私は知っています。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

以前質問し、回答していただきましてありがとうございました。
左側乳がんの術後もうすぐ三ヶ月になります。
タモキシフェン服用のみで病気のこともあまり考えず
元気に過ごしていましたが、先日健側の右胸に1.2センチくらいのしこりを発見し本日受診してきました。
マンモグラフィー、エコーの結果、自分で見つけたしこりは
嚢胞で別の場所にマンモグラフィーで一部石灰化、
エコーであやしいもやもやしたしこりがあるとのこと。
マンモグラフィーで胸を圧迫した際に血と黄色の分泌物が2、3回出てしまい、かなりショックでした。
四ヶ月前の術前検査では右側の異常は指摘されず、その時のMRIやマンモグラフィーでも確かに石灰化はみられませんでした。
今日のエコーでしこりは1センチくらいでした。
この短期間にまた健側に乳がん疑いのしこりができてしまい、何も手につきません。
組織診は来週末で連休もはさむため、結果は約1ヶ月後です。
今回は、前回と違い血性分泌物まで出てしまいしこりも急にできたようで進行が早いのではととても心配しています。
これは異時性乳がんと考えられますか。
もしそうであった場合、予後は良くないのでしょうか。
1月の術後、先生からもアドバイスいただき生きる希望を持って前向きになったのに、どん底に落ちた気持ちです。
すみません、よろしくお願いいたします。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
術後早期に、対側乳癌が疑われるとの事ですね。
「今回は、前回と違い血性分泌物まで出てしまい」
⇒「血性分泌」を勘違いしているようです。
 「血液」というと「劣悪なイメージを持つ」ようですが、「腫瘍が乳管から出る以上、一つのサイン」にすぎません。
 
「しこりも急にできたようで進行が早いのではととても心配」
⇒「急にできたように見える」だけで、実際は「少しずつ大きくなった」のだと思います。
 腫瘍も小さいようですから「余計な心配」は無用です。
 
「これは異時性乳がんと考えられますか。」
⇒(実際は、手術時には「既に存在していた」とは思いますが…)
 「異時性両側乳癌」となります。
 
「もしそうであった場合、予後は良くないのでしょうか。」
⇒予後とは無関係です。
○エコーで1cmならば(もしも癌だとしても)十分早期だと思います。
 「気持ちを切らさずに」前向きに行きましょう。
 
 

 

質問者様から 【質問3】

先生、いつも親身に質問に答えてくださりありがとうございます。
前回相談させていただいた件ですが(4ヶ月前左乳がん手術、その後右乳がん疑い)本日針生検の結果がでました。
所見
乳腺針生検組織、2本あり、いずれにも異型乳管上皮が大小の胞巣構造を主体として増殖、浸潤しています。
浸潤性乳管癌、充実腺管癌の像です。
核異型は中等度でscore=2、分裂像は12個/10HPF(FN26.5、
SWH10×)でscore=2でNSAS-BC’s nuclear grade=2相当です。
ER陰性、PgR陰性、HER2:1+ 陰性
ki67 25.6%
以上です。
しこりの大きさは針生検の時は1.5センチくらいと言われました。
今後、CTとMRIをし二週間後から術前抗がん剤が始まり、半年後に手術の予定となりました。
抗がん剤はEC療法だそうです。
質問①
トリプルネガティヴは一般的に予後が良くないと言われていて大変心配しています。
しかも反対側も4ヶ月前に手術したばかりで術前検査では見つからず急に大きくなり進行が早いのでしょうか。
質問②
両側が乳がんでしかもトリプルネガティヴだと完治する可能性はあまり
期待できないでしょうか。
すみません、検査結果に大変動揺し落ち込んでいます。
主治医は術前抗がん剤をすすめていて
(術後でも変わらないが手術ができるのが病院の都合上8月になりそうなので期間があいてしまうため)、
抗がん剤の副作用に耐えられるかも心配です。
やるしかないのですが…まとまりのない質問ですみません。
少しでも希望をもって治療にのぞみたいです。
よろしくお願いします。
 

田澤先生から 【回答3】

こんにちは。田澤です。
異時性両側乳癌を特別に考える必要はありません。
どう考えても、本当は左の手術時に右も存在していたが気づかれなかっただけです。
時々、経験する4カ月前に検診で異常が無かったのに、「しこりを自覚した」というのと大差ありません。
○ホルモン療法に反応しないので「徐々に大きくなっても」何ら不思議ではありません。
それよりも「1.5cm程度」であれば、「そのまま温存」できるのに「トリプルネガティブと言う理由」で術前化学療法を行おうとしている意味が不明です。
☆本来、「小さくして温存」が術前化学療法の唯一の目的です。
 担当医は想像するに…
 ①4カ月で急速に大きくなった癌だから、油断ならない。抗ガン剤をして全身に「見えない癌」をまずたたく
 ②術前に抗ガン剤をした方が「効果がわかる」
 これらの「馬鹿馬鹿しい」理由をつけているのでしょう。
 それについては散々、このQandAでコメントしてきたので、ここでは割愛
します。
 
「今後、CTとMRIをし二週間後から術前抗がん剤が始まり、半年後に手術の予定となりました。抗がん剤はEC療法だそうです。」
⇒手術まで期間が空くのならば、それまで抗がん剤を投与して「できるだけ早く手術をして」術後に残りの抗ガン剤をするという方法もあります。
 
「質問①トリプルネガティヴは一般的に予後が良くないと言われていて大変心配しています。」
⇒サブタイプで予後を判断するのは止めましょう。
 治療法として(現段階ではターゲットがなく)「術後の治療として、通常の抗ガン剤しかない」ということです。
 やるべき抗がん剤を(術前にしろ、術後にしろ)行えば、同ステージの他のサブタイプとそれ程変わりません。
 
「しかも反対側も4ヶ月前に手術したばかりで
術前検査では見つからず急に大きくなり進行が早いのでしょうか。」
⇒前からあった筈です。
 気にする必要はありません。
 
「質問②両側が乳がんでしかもトリプルネガティヴだと完治する
可能性はあまり期待できないでしょうか。」
⇒本気でそう思っているのですか?
 全くの妄想です。
 まず左右は全く別です。「両側だから予後が悪い」など全くありません。
 トリプルネガティブといえど、「早期」です。
 早期乳癌なのに「完治の可能性がない」と本気で思っているのですか?
○サブタイプは(予後では無く)「治療法とだけ関連付けましょう」