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肺転移症状と定期検診について

[管理番号:2575]
性別:女性
年齢:31歳
こんにちは。
以前、質問させていただいた者です。
30歳でトリプルネガティブ乳がんが発覚し、手術→抗がん剤→放射線治療を経て、現
在無治療となっています。
ステージ1、グレード3でした。
先月、術後1年検診があり、エコー、マンモグラフィー、胸部レントゲン、採血を行
い、特に問題無しでした。
ホッとしていたのですが、10日前から常に喉に違和感があり(痰か何かが詰まってい
るような感覚)、なんだか息苦しさも感じるようになりました。
特に咳は出ませんし、無理やり咳をしてノドの異物感を取り除こうとしても、痰も出ません。
もしや、肺転移しているのでは?と不安で仕方がありません。
上記の私の症状は、肺転移症状とは全く異なりますか?
1ヶ月前の検診では異常無しだったので、大丈夫だと自分に言い聞かせる毎日です。
ちなみに、肺転移症状である咳や痰、息苦しさは、相当進行していないと出てこないのでしょうか?
それとも、画像でも分からない程度の転移でも、上記のような症状は少なからずあるものなのでしょうか?
そして、肺転移しているかどうかは医師であれば画像を見るとすぐに分かるのです
か?
見落とすことはあり得ますか?
何か症状があれば、すぐに転移ではないか?と結びつけて考えてしまい、いつも生きた心地がしないです。
考え過ぎは、精神衛生上よくないことは重々分かっているのですが…。
定期検診もいっそのこと、行かない方がいいのかな?と思うようになりました。
局所再発又は新たな乳がんは早く見つけた方がいいと思い、毎日のようにセルフチェックしていますが、遠隔転移に関してはいつ見つかっても予後が変わらないのであれば、知らない方が幸せっていうこともあるのかなと…。
いつ見つかっても予後が変わらないのなら、何かしら症状が出た時に受診するということではダメなのでしょうか?
いろんな考え方があると思うのですが、先生が考える定期検診に通う意義・メリットとは何なのか教えていただけますと幸いです。
今回も、まとまりのない文章で申し訳ありません。
回答は急ぎませんので、よろしくお願い致します。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
「先月、術後1年検診があり、エコー、マンモグラフィー、胸部レントゲン、採血を行い、特に問題無し」「10日前から常に喉に違和感があり(痰か何かが詰まっているような感覚)、なんだか息苦しさ」「もしや、肺転移しているのでは?と不安」
⇒さすがに、「先月、胸部レントゲンで確認」しているのだから問題ありません。
 通常の「気管支炎」だと思います。
 
「上記の私の症状は、肺転移症状とは全く異なりますか?」
⇒異なります。
 
「1ヶ月前の検診では異常無しだったので、大丈夫だと自分に言い聞かせる毎日です。」
⇒そのとおりです。
 そのための「定期検診」です。
 
「ちなみに、肺転移症状である咳や痰、息苦しさは、相当進行していないと出てこないのでしょうか?」
⇒有る程度進行しないと「症状は出ません」
 
「それとも、画像でも分からない程度の転移でも、上記のような症状は少なからずあるもなののでしょうか?」
⇒ありません。
 
「肺転移しているかどうかは医師であれば画像を見るとすぐに分かるのですか?」
⇒解ります。
 
「見落とすことはあり得ますか?」
⇒ありません。
 御心配無く。
 
「何か症状があれば、すぐに転移ではないか?と結びつけて考えてしまい、いつも生きた心地がしないです。」「考え過ぎは、精神衛生上よくないことは重々分かっているのですが…。」
⇒誰しも共通の悩みです。
 「時間だけ」が解決するのです。
 
「いつ見つかっても予後が変わらないのなら、何かしら症状が出た時に受診するということではダメなのでしょうか?」「いろんな考え方があると思うのですが、先生が考える定期検診に通う意義・メリットとは何なのか教えていただけますと幸いで
す。」
⇒過去に2151「12月に左胸全摘出しました」【回答3】で回答しています。
 『リードタイムバイアス』という考え方があります。
 理論的には 「早めに見つけても」治療期間が長くなるだけで(結果として、生存
期間を一見延長しているように見えるが)「最終的な生存期間は実は同じ」という理論です。
 これは時に「再発治療」だけでなく、「検診」についても展開される理論です。
 つまり「早期に見つけて」も「大きくなってから見つけても」結局(それが原因で亡くなるとすれば)最終的な生存期間(亡くなる年齢)は同じというものです。
 ○これについては、「そのような本を書く」ような「偉い先生」と、我々「現場の
医師」では決定的に感覚が異なります。
 以下、再発治療に絞ってコメントします。
 実際は以下の2点です。
①本当に早期で発見した場合、(少数ですが)根治するケースもあります。
 また、「明らかに生存期間そのものを伸ばしている」と実感するケースも数多く
あります。
 確かに「早く見つけた」だけで、結局「もう少し後で見つけた方が、ぎりぎりま
で抗がん剤の治療自体による副作用を感じることなく、良かったのでは?」という
ケース♯もあります。
 ★リードタイムバイアスでは、上記の♯だけを想定しているようですが、現場の感覚では「そうでもない」のです。
②早期で発見する方が「病気のコントロール(症状=QOLの維持)」がいいケース
が多い 最終的に「生存期間が同じケース」でも「より小さく見つけた方が、ぎりぎりまで少量の抗がん剤(副作用が少ない)で病勢をコントロールできる」ので(例え、最終的に生存期間の延長は無かったようなケースでも)「早めに発見して治療して良かった」と医師も患者さん(の家族)も感じるケースがあります。
 
○おわかりでしょうか?
 統計学的に「数字をいじっている研究者」とは異なり、実際に治療をしている我々「現場の医師」にとっては、『早く見つける事が無駄だとは、露ほども思わない』のです。