[管理番号:7037]
性別:女性
年齢:48歳
病名:<現時点の所見(マンモ、CT、MRI、乳腺組織診、リンパ細胞診)> 左C乳癌:
浸潤性乳管癌(腋窩リンパ節転移あり) ステージII-B エストロゲンレセプター:
陽性(+, Allred score 4) プロゲステロンレセプター: 陰性(-) Her2: 陽性
(3+) Ki67: 40% 大きさ: エコー検査の際、画像を見ながら、担当医に質問。
→ 2センチ球体。
一部横に飛び出し、手を伸ばしている形状があり、その長径は約3.0-3.5センチ。
症状:
数日前、田澤先生のサイトにたどり着き、必至で勉強をさせていただいております。
このような素晴らしいサイトを設置してくださり、全国から寄せられる多くのお問合せを集積し、有用な情報を共有してくださっていることに、救われる思いであり、心から感謝しています。
治療は、来週12月下旬より始まる予定なのですが、勉強をするにつれ、新たな疑問点や不安点が出てきます。
最善解を探し、全力で対処したいと考えています。
ぜひ質問をさせていただくことができましたら、大変嬉しいです。
どうぞよろしくお願いいたします。
<経緯>
・2018年10月末、人間ドックにて、触診(しこり)およびマンモグラフィー(石灰化)。
要検査判定。
・11月半ば、同人間ドック病院の乳腺外来にて、エコー検査。
左胸C(左外側上部)に腫瘍あり、要精密検査。
急ぎ、主治医候補を決め、紹介状をいただく。
・11月下旬前半、大学病院乳腺外科。
主治医による初診。
マンモグラフィー(縦横、拡大)、エコー、採血、MRI。
翌日、これらの結果を踏まえた上で、乳腺組織診(エコーガイドマンモトーム生検)4本、加えて、左リンパの細胞診(針生検)1本。
・11月下旬後半、人間ドック病院の過去データ(マンモグラフィー:2011、2012、2013、2014)を取り寄せ、受診病院に提出。
2011-2013は、マンモグラフィーで両乳腺に石灰化指摘あり。
2014はどの箇所かについての指摘はないが、できれば検査をした方がよいとの指摘あり。
2015-2017は多忙のため人間ドック未受診、データなし。
・12月上旬、PET-CT検査。
同日、乳腺組織診およびリンパ細胞診を含む検査結果(PET-CT以外)を踏まえ、主治医の治療方針を伺う。
・PET-CTの結果については、検査日には出ず、まだ聞いていません。
・12月下旬、治療スタート予定。
<組織診・細胞診>
乳腺組織診: トリプルポジティブ
Nuclear atypia: score 3, Number of mitotic figures Score 2 → nuclear grade 3
検体では、大型不整核を有する異形上皮細胞が繊維化を伴って胞巣状に増殖し、周囲にリンパ球浸潤を目立たせている。
浸潤性乳管癌である。
リンパ細胞診:
左脇下リンパ節 穿刺吸引細胞診
Class V carcinoma
所見: 血性背景に、核腫大・膿染を示す異形上皮細胞集塊を認める。
転移の可能性が考えられる。
<治療方針> 12月下旬より、治療をスタート。
(プランA)【12 week 術前投薬→手術→36 week 術後投薬】
② 12/26から、約3か月、3週間 x4: 術前<分子標的治療A>
②評価後、上記治療の効果が十分に認められ、腫瘍が十分に小さくなっていれば、手術
(抗がん剤を省略)
③手術後、約9か月、3週間 x 12: 術後<分子標的療法B>
加えて、ホルモン療法
(プランB)【24 week 術前投薬→手術→36 week 術後投薬】
①-1 12/26から、約3か月、3週間 x4: 手術前<分子標的治療A>
①-2 評価後、上記治療の効果が十分に認められない場合には、下記を追加
約3か月、3週間 x4: 手術前<アンスラサイクリン系抗がん剤(ファルモルピジン)治療>
②評価後、手術
③手術後、約9か月、3週間 x 12: 術後<分子標的療法B>
加えて、ホルモン療法
*<分子標的治療A> ハーセプチン、パージェタ、タキソテール
*<分子標的治療B> ハーセプチン、パージェタ(術後は、抗体医薬2種類になるのかどうか、主治医の説明が不十分であり、私は不明です)
*手術方針: 原発腫瘍の中心部を、もし腫瘍が術前治療により非常に小さくなったときのためにマーク。
切除は元の大きさを基準に、外側1.5センチ分大きめに行う。
リンパ節の郭清手術もしっかりと行う。
<質問1>上記の治療方針は、妥当と言えるでしょうか。
田澤先生であれば、どのような治療方針を計画されますか。
主治医の説明は、
・今年12月より、Her2の抗体医薬として、ハーセプチンに加え、パージェタを組合わせる分子標的治療が術前でもできるように認可された。
この術前治療は海外で治験が行われ、効果があるという結果が出ており、やってみる価値がある。
・術前化学治療のメリットの一つは、ガンのタイプと診断方針を確認することができる点
田澤先生のQ&A記事を拝見し、術前化学療法について、勉強させていただいています。
田澤先生は、術前化学療法のメリットについて、「その絶対的適応は、小さくして温存」と述べていらっしゃいますが、私は温存を絶対的に希望しているわけではなく、
よりよい治療をしていただけることを希望しています。
一つだけ、副作用の強い抗がん剤治療を可能な限り避けたい、という希望は出しています。
「あくまでも最善の治療優先であり、できれば」のリクエストになります。
化学療法、手術前後において、できるだけ、これまでと同じように仕事を続けたいという希望を出しているためです。
1月から3月までの仕事のスケジュールはすでに入っており、治療をしてみて本当に難しければもろもろ調整しつつということにはなるかもしれませんが、できるだけ通常どおりに働くことをトライしてみたいと考えています。
<質問2>乳がんの治療において、患者から医師に対して、常にメール等で質問でき、
相談に乗ってもらえる環境であるべきであると、田澤先生は考えますか?
主治医は、患者の心情に寄り添ってくださる良い医師であると思います。
「もしセカンドオピニオンの希望があればすぐに情報を出す、いつでも何かあれば相談してほしい」
とおっしゃってくださっています。
一方で、直接連絡できるメールアドレス等は伺っておらず、こちらのサイトでの田澤先生と様々な方(先生の患者さんを含む)とのやり取りを拝見し、もっと積極的に連絡をとり、質問をしてもよいのか相談すればよかったと、反省しています。
<質問3>化学治療前、手術前に、歯科で歯の状態を確認し、治療をしておく必要はあ
りますか?この15年以上、歯科に罹っていないため、不安です。
感染症対策であるかと思いますが、いろいろ調べていて、例えば「タキソテール治療による治療の前に虫歯治療はしておくこと」という項目をみつけました
どうぞよろしくお願いいたします。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
(質問者の意向と無関係に)「術前化学療法ありき」で話が進んでいるようですね。
(HER2 3+だと、無条件に術前抗がん剤を勧める人が多いことに嫌気がさします)
また、プランAとぷらんBとありますが…
そもそも「術前化学療法(抗HER2療法も含む)ではアンスラサイクリンを省略していいというエビデンスがない」のです。
〇術後の化学療法であれば(病理結果が信頼できるので)「早期乳癌に対して非アンスラサイクリンレジメン」のエビデンスはありますが、「術前化学療法をやるのであれば、アンスラサイクリンを最初から省略するのは誤り」です。
♯結果として「副作用など」でアンスラサイクリンを避けざるをえないことは仕方が無いが…
「<質問1>上記の治療方針は、妥当と言えるでしょうか。」
→上記コメント通り
まず「術前化学療法ありき」には、まったく同意しません。
更に(小さくして温存など)患者さん本人の希望であれば、行いますが、(その場合には)術前に行う以上「アンスラサイクリンを省略することはありません」
「田澤先生であれば、どのような治療方針を計画されますか。」
→まずは「術前抗がん剤を希望するのか?(小さくして温存したいと希望するのか?)」から始まりますね。
「<質問2>乳がんの治療において、患者から医師に対して、常にメール等で質問でき、相談に乗ってもらえる環境であるべきであると、田澤先生は考えますか?」
→それは、通常はやっていないと思います。
当院(私)の場合には、(私個人に)秘書を2人つけてもらっているので可能なことだと認識しています。(病院長の配慮です)
「<質問3>化学治療前、手術前に、歯科で歯の状態を確認し、治療をしておく必要はありますか?この15年以上、歯科に罹っていないため、不安」
→もしも不安ならチェックすべきです。
抗がん剤中に、齲歯の炎症が起きやすくなります。
質問者様から 【質問2 術前の分子標的療法(ハーセプチン、パージェタ、タキソテール)について】
性別:女性
年齢:48歳
病名:<現時点の所見(マンモ、CT、MRI、乳腺組織診、リンパ細胞診)> 左C乳癌:
浸潤性乳管癌(腋窩リンパ節転移あり) ステージII-B
症状:
田澤先生
お忙しい中お返事をいただき、心から感謝いたします。
来週、術前化学療法の治療がスタートするため、時間がなく、1週間以内に返信を差し上げますこと、お許しください。
こちらのサイトにおける様々なやり取りを拝読し、田澤先生の術前化学療法に対するお考えについて、よく理解いたしました。
A 手術を先行して実施するメリットとしては、
① 摘出組織において詳細な生検を実施できる。
② ①により、より確実な治療法が組める。
B 術前化学療法のメリット
① 治療に効果があった場合、切除部を小さくとることができる。
→ 腫瘍部が大きいが、温存を希望する場合などに適応。
② 治療に効果があった場合、予後の予測ができる。
術後治療の方針も立てやすくなる。
Bのデメリット
*治療の効果が出なければ、その間に病状が進んでしまう可能性がある。
Bの対策
*例えば3週間ごとのレジメンであれば、治療のタームごとに、主治医自身が超音波診断を行い、効果を確認する。
*術前化学療法の効果が現れなければ、治療を中止して、新たな策をとる(手術、治療薬の変更等)
<質問1>
本当の気持ちを言えば、もしすぐに手術可能であれば、手術先行で、術後に化学療法を
とる形を希望したいです。
必要に応じて、全摘となっても、私自身は全くOKであり、最善の治療を優先いたします。
しかし、手術予定は早くとも1か月半先になってしまうことが想定されており、何も治療をしないで病状が進んでしまうより、術前化学療法を直ちに始めて効果をみる価値はあるのではないかと考え、来週からの治療を受ける方向で検討しています。
この判断は妥当でしょうか。
<質問2>
主治医に来週、田澤先生のこのサイト等で学んだ点を踏まえ、3週間ごとのタームで、
CT診断をしていただくことを確認したいと考えております。
妥当でしょうか。
<質問3>
様々な治験において、術前化学療法を実施した場合、術後化学療法を実施した場合で、
トータルで同じ内容の化学療法(薬剤の投与量、投与期間)を実施した場合に、予後に差がなかったという成果が出ているとのことですが、これは正しいでしょうか。
よろしくお願いいたします。
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
「術前化学療法を直ちに始めて効果をみる価値はあるのではないかと考え、来週からの治療を受ける方向で検討しています。この判断は妥当でしょうか。」
→担当医がきちんと評価をすることが前提ですね。
「3週間ごとのタームで、CT診断をしていただくことを確認したいと考えております。妥当でしょうか。」
→3週間ごとのCT???
とんでもない!
超音波してもらいましょう。
「予後に差がなかったという成果が出ているとのことですが、これは正しいでしょうか。」
→その通り。