[管理番号:1623]
性別:女性
年齢:52歳
田澤先生、
こんにちは。
このような機会を設けていただき、本当に嬉しく思います。
1年半程前から右乳腺腫瘤を自覚、近医を受診し細胞診を2回(3ヶ月間隔)を行い、クラス3で悪性ではないとの事で経過観察を行っていましたが、今年7月に念のため他の病院を受診してバコラ生検後、乳癌と診断されました。
9月17日に温存手術し、術後の病理診断にて
浸潤性乳管癌
大きさ1.5×1×0.7㎝
核グレード2(パコラ生検結果は1)
脈管侵襲?
ホルモン受容体ER90%陽性 PGR35~35%陰性
HER2 +1陰性
Ki67 5%
センチネルリンパ節生検において1個1㎜の転移がありましたが、放射線で対応との事で腋窩リンパ節郭清は行いませんでした。
現在、放射線とホルモン治療(ノルバデックスのみ)を行っています。
質問は
・この場合は微小転移でリンパ節郭清はなく放射線治療のみで大丈夫なのでしょうか?
・しこりを自覚してから時間が経過していますが、遠隔転移の確率は高くなるのでしょうか?
ご回答よろしくお願いします。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
「1年半程前から右乳腺腫瘤を自覚、近医を受診し細胞診を2回(3ヶ月間隔)を行い、クラス3で悪性ではないとの事で経過観察」
⇒とんでもない事です。
「結果的に癌だった」わけですから、2回も細胞診を行って「クラス3」しか出せない「技術も問題」ですが、それ以上に「クラス3で針生検をしない」診療は「もっと問題がある」と言えます。
○その「近医の医師」は「針生検しない」のでしょうか?
針生検ができない医師は「癌の診療はすべきでは無い」と思います。どうしても「無駄な経過観察」となり、「診断が遅れがち」となるのです。
「癌」が進行性である以上、「時間は重要」なのです。
回答
「この場合は微小転移でリンパ節郭清はなく放射線治療のみで大丈夫なのでしょうか?」
⇒大丈夫です。
センチネルリンパ節生検での「郭清省略の基準」として「微小転移では郭清省略が標準」なのです。
以下に、詳細を記載します。
現時点での「センチネルリンパ節生検」と「腋窩郭清」の考え方について整理していきましょう。
①SLN(センチネルリンパ節)に転移を認めない場合には「腋窩郭清は省略」する
これについては「疑問の余地」はありません。
世界のスタンダードと考えていただいて結構です。
もしもいまだに「日本の地方のどこかで(ひっそりと)明らかなN0症例に対して、センチネルリンパ節生検をせずに腋窩郭清をしている(一般)外科医が居るとしたら、非難されるべき時代」と言えます。
②SLNに微小転移(2mm以下)を認めた場合
これについても「腋窩郭清は省略する」でほぼ意思統一されている。と考えて結構です。
IBCSG 23-01(臨床試験)で934症例での「微小転移症例の非郭清と郭清群との比較」で「生存率も再発率も差がない」ことが証明されています。
これを受けて「乳癌診療ガイドライン」でも「腋窩郭清の省略が勧められる」乳癌ガイドライン推奨グレードBとなっています。
♯Bとはなっていますが、内容的にはAと思います。
③SLNに肉眼的転移(>2mm)を認めた場合
ここが、正に「議論の多い」ところです。
・SLN転移陽性患者の約半数は非SLN転移を有していない
・ACOSOG Z0011(臨床試験)では、以下の条件
「腫瘍径5cm以下で画像上リンパ節転移を疑わない」「SLN転移2個以下」
「温存手術(術後照射を行う)」「術後薬物療法あり」を満たす場合には「郭清の有無で生存率も再発率も差がない」との結果
・2014のASCOガイドラインでは「照射を行う温存手術」であれば「2個までの転移」であれば、腋窩郭清を省略すべき
これらの中で「適切な基準に基づいて腋窩郭清省略を考慮しても良い」乳癌ガイドライン推奨グレードC1となっています。
この「適切な基準」というのが各施設で様々なのが現状です。
「しこりを自覚してから時間が経過していますが、遠隔転移の確率は高くなるのでしょうか?」
⇒pT1c(15mm), pN1mi, luminalA
この状況で「遠隔転移の可能性」はありません。
現在の治療で全く問題ありません。
質問者様から 【質問2】
田澤先生、昨日はご返答ありかとうございます。
詳しい説明をいただき安心いたしました。
「時間は重要」
先生のお言葉か本当に胸に響きます。
またのご相談をお許しください。
今年7月に針生検を受けた病院からの紹介状を持って
今回、手術を行なった国立病院へ。術前のCT、骨シンチ、
血液検査は異常なし。胸のMRIで左右1つずつ別の腫瘍を
認め検査をする事に。左胸はコアドール生検?でクラス2、
右胸は細胞診でクラス1という結果でしたので、最初に見つかった
右胸の癌のみの手術を9/17に行うことになりました。
しかし、入院4日前に担当医から電話があり、他に心配な部分が
あったため至急病院に行く事に。すぐにマンモの検査が
あり、その後の説明で右胸でまた別の石灰化が気になるので
(カンファレンスで指摘?)マンモトーム生検をしてから
1ヶ月先の手術延期になるとの話でした。やっと手術に
たどり着いたと思ってた気持ちが砕かれ、精神的にも自分が
持つか不安なり、結局、摘出する癌と石灰化の部分が
近かったのでマンモトーム生検は行わず、石灰化も疑わしきは
摘出してとお願いし予定通りの手術日に。
手術2日前にマーキングのためにマンモを撮り、当日も
マンモトーム撮影し摘出部に針金を通してからの手術となりました。
結果、石灰化の部分は問題なく、摘出した癌の病理は
前回ご相談した内容でした。脈管侵襲はマイナスです。
担当医師は丁寧に診て手術をしてくださったと思うのですが、
検査も多く被ばくも心配です。左胸のクラス2という結果も
昨年の検査のこともあり心配になります。
現在、放射線とホルモン治療を行なっていますが、
放射線が終わったタイミングで(11月末)田澤先生の
ところに転院させてもらう事は可能でしょうか?
これから手術をされる方が沢山いらっしゃるなか
恐縮ですが、ぜひ先生のもとで治療を進めていけたらと
願っております。よろしくお願いいたします。
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
色々長い経過、解りました。
左胸のこともあるし、御心配だと思います。
転院も大丈夫です。
放射線治療頑張ってください。