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今週のコラム 286回目 適応外診療を読み解く 医師編

皆さん、こんにちは。

とても天気がよく、(来週はゴールデンウイークでもあり)テンションの高い?週末を迎えています。

来週は木曜日が祝日なので、月曜日は手術を楽しみ、「火水の外来だけ」乗り切れば、木(祝日)金(手術)と何とも贅沢な週となります。

まるで外来嫌いと思われるかもしれませんが…(手術と比べるとねぇ)

いえいえ、「ゆったり」とした外来ならいいのですが、時間に追われる外来はやっぱり神経使うのです。

 

本編

適応外診療 医師編

このように題してみました。

前回(285回目)に薬剤の「添付文章」を紹介しましたが、当然『医師なら知って使ってるべきでしょ?』と疑問に思う事でしょう。

ただ、実際にはそう簡単なことではないのです。

私が直接(実際にお会いしたことがある)もしくは間接(患者さんを介して)的に知った「医師達」から紐解いていきましょう。

 

1.若い医師

ここでいう「若い」医師とは(20歳代後半である)研修医は指しません。(研修医が主体的に抗がん剤を使用することは「危険だから」無いのです)

専門性を決めて「一応」専門家として歩み出した30歳~30代後半までの医師のことです。

そして彼らは乳腺専門医ではなく、(その前段階の)乳腺「認定医」を「これから取得する」か、もしくは「すでに取得」して「専門医を目材している」段階です。

だいたいこの年代は「大学病院」もしくは「○○がんセンター」「○○医療センター」など地域の大病院に所属しています。(無論、そこで「教育されるため」です)

術前術後の補助療法にかんしては、「その施設のマニュアル」を渡されたうえに(都度都度)カンファレンスなるもので完全に縛られ、「彼らの自由意志」が発揮されることは皆無です。

再発治療となると(経験が必要なため)まず、彼らが主治医となることは無い筈です。(必ず「上級医」なるものがチェックする筈です)

その意味で、もしも彼らが術後補助療法なのに「capecitabine」を提案したとすれば…

それは(上級医が訳知り顔に)『(CLEATE-Xを根拠として)その症例にはyouもcapecitabine使っちゃいなよ! 注)』と言われたことを(殆ど理解せずに)「そのまま」患者さんに提案したのだろうな。(と、私は考えます)

注) youも○○しちゃいなよ は、有名なジャニーさん風アレンジです。

 

2.40歳代以降の専門医

専門医も取得し、(何でもありの)再発治療にも経験が豊富となってくると「最新治療に遅れたくない」という気持ちが旺盛になります。

無論、それはいいことなのですが…

地方の病院などで部長として「保険医療の査定」に正面から向き合う立場であれば、(自然と)適応外診療にならないように「添付文章」を読み込み、更に製薬会社の担当者と意見を交わしながら「適切内(正しい)診療」を行うようになります。

ただ、一方で(そのまま)大学病院に残り(大学病院であることにより)「保険医療の査定を受けにくい」立場のままでいると、「我々は最先端医療をすべきであり、保険診療であるかどうかは重要ではない」と考える者が出てきます。

大学病院では、(非浸潤癌なのに)HER2やKi67を測定することも日常茶飯事ですが、彼らはそれを気にもしていないように見えます。

 

3.中途半端な開業医

実は、これが厄介です。

私より上の年代(60歳代以上)だと、(その時代は)乳癌症例が極端に少なかったので乳癌診療の経験が少ない。

その中で「一般外科として勤務の傍ら、時々乳癌診療をしていた」状態で「開業」してしまう。

無論、診断手技も問題山積となりますが、それ以上に問題なのは「薬剤治療」

そもそも再発治療の経験が圧倒的に少ないので、他に頼るしかない。

その場が(製薬会社が協賛する)小規模な講演会です。

これらの開業医は(そもそも)経験が乏しい上に、(日頃から)情報を得る機会に乏しいので、このような「講演会(乳癌学会のような大きな学会ではありません)」で、講演を行う「若手医師」から最新情報を得ているのです。

大学病院の若手医師は、そのような小規模の講演会で発表することで「経験」をつけていく(発表することで「自分自身が勉強するいい機会」となるのです)

そのような講演会では、その治療が「保険外診療」となるのかは(そもそも)それら若手医師は意識していないので、(例えば)

「CLEATE-Xではトリプルネガティブでは術前抗がん剤でpCRでなければcapecitabineを使うべき」みたいな論調となり、最新情報を知りたい「それら開業医」は、それを「そのまま」自分のクリニックで使ったりするようになるのです。(「確信犯」ではない保険外診療、言い換えれば「無知が故の」適応外診療と言えます)

 

4.専門性の高い開業医

開業医が全て「3.中途半端な開業医」かと言うと、無論そんなことはありません。

開業する前に、乳腺外科医として長い経験をもった人もいます。

それらの人達は(3の人達とは異なり)若手医師から情報を得ることはしません。

大まかに分けると

4-1.大学病院や○○センターなどで偉くなってから開業

彼らは、まるで「私が行う治療は崇高であり、保険診療に縛られない」とでもいように(つまり「確信犯」)適応外薬剤を使います。(再発ではないのに「骨転移」などの病名をつけて査定をすり抜けている?)

術後補助療法なのに、(患者さんから脱毛が嫌と言われると)平気で「T-DM1」を使ったりしています。

 

4-2.通常の病院で部長として経験を積んでから開業

保険診療を意識した治療を行っています。

 

★適応外診療にも、「確信犯」と「無知が故」の2種類があることが解りましたね?

若手医師や中途半端な開業医は「無知が故」に保険外診療を行いがちであり、(一方で)自分を神の如く感じた「確信犯」がいるのです。