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今週のコラム108回目 私は「葉状腫瘍の厄介さ」をご理解していただけることを望んでいます。

「オオカミと森の研究所」

今朝、お気に入りのVoice of Forestを聴いていたら流れてきました。

朝倉氏曰く「日本の森にオオカミを戻そう!」との活動のようです。

走りながら聴いていて「日本オオカミって、絶滅したよな? 夢物語?」

イエイエ、違いました。

確かに「日本」からはオオカミは姿を消しましたが、同じ種は世界には居るらしい。

でも、そんなオオカミを日本の森に放しても大丈夫?

どうやら、増えすぎた鹿や猪に対して食物連鎖的に好ましいようです。

ただ、私の頭の中では途中から妄想モードに入っていました。

 

オオカミを見て、(人間に飼いならされてしまった)犬達は、どう思うのだろう?

皆さん、犬の先祖はオオカミであり「ヒトがオオカミを飼いならすことで犬が生まれた」ことはご存知ですか?

(牙を抜かれた)犬達の眼には「オオカミ」はどう映るんだろう?

「安全な住処」と「美味しい食事」を約束された飼い犬達の眼には、オオカミはどう映るのだろう?

 

自由を求めて「再び人間に牙を剥いた犬」と(人への恩義に厚く)「人間側に立った犬」との闘い。

自分は「どちら側に立つのだろうか?」

そんな妄想をしながら、夜明け前の江戸川沿いのコースを(犬のように)走っていました。

 

 

 

 

さて、前回の続きです。

術前組織診から2 grade upした残りの2症例を紹介します。

(どちらも)良性葉状腫瘍⇒悪性葉状腫瘍

 

症例3   40代 東京(閑静な住宅街)

△年9月 某大学病院受診 2cm 線維腺腫の診断

(△+2)年10月 某大学病院再診 4cmに(明らかに)増大

針生検でfibroepithelial tumor(線維腺腫もしくは良性葉状腫瘍)

明らかに増大し、(良性)葉状腫瘍の可能性もあるとのことで「腫瘍切除」を勧められた。

(△+2)年11月、当院を受診 腫瘍は6cmを超えており、僅か1カ月での急速増大

 

 

 

 

 

 

手術病理

Phyllodes tumor malignant

Size 3.5×2.8×6.5cm

①間質細胞の細胞密度:high

②核異型:high

③核分裂:high

④浸潤性増生:+

 

症例4   80代 関西

△年4月はじめに「しこり」自覚(検診歴なし)

△年4月、某大学病院受診 8cmの腫瘍 「乳癌」を疑い細胞診を施行(class 3)

△年5月、当院受診。腫瘍は10cm大であり手術以外の選択肢は無かったが組織診の希望があり、MMTE施行:

 

 

 

 

 

 

 

 

生検病理 (△年5月)    ⇒  手術病理(△年6月)

Phyllodes tumor benign       phyllodes tumor malignant

①間質細胞の細胞密度:low   ⇒   moderate to high

②核異型:low               ⇒   moderate

③核分裂:low               ⇒   (11/10 HP)high

④浸潤性増生:-             ⇒   +

 

僅か1カ月で、これだけの乖離が生じた理由(ワケ)は、腫瘍が大きすぎて「benign(大人しい)部分」と「malignant(激しい)部分」が不均一に混じっていた。と解釈しています。

★まとめ

葉状腫瘍の診断(線維腺腫との鑑別及び、グレード)が、術前に難しい事を紹介しました。

このような背景により、私は葉状腫瘍には「2グレード上であってもいいような」手術を心がけることとなったのです。

「できるだけ小さくて、目立たない傷で」という女性の要望があることも理解しているつもりです。(そのような方には、より「美容」にふった病院をお勧めします)

私は「葉状腫瘍の厄介さ」をご理解していただけることを望んでいます。