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今週のコラム 59回目 血流により 線維腺腫<良性葉状腫瘍<境界悪性葉状腫瘍<悪性葉状腫瘍 と分けられたら「解り易く」ていいのですが、現実には…

年末ムード

NHK大河ドラマも昨日で終わり、いよいよ「年末モード」一色です。

普段の仕事が嫌いでは無い(好き?)な私でも、年末が近づくことで感じる「特別感」に自然とワクワクします。

大学時代から年末年始と言えば「スキー」安比や北海道が定番だったのですが、その私が「温かい沖縄!」(東北の地から、東京へ転居して2年半、寒さに弱くなって…)

 

そんな年末を迎えて、この1年間をまとめてみました。

まずは2016年「全麻手術の内訳」です。(局麻での40件は除く)

 

○2016年(全麻)手術 386件(乳癌295件、良性91件)

 

乳癌 295件

・温存術 148件

・全摘術 137件

・同時再建 8件

・男性乳癌 2件

♯同時再建が枠の関係で2016年では極端に少なかったのですが、2017年の手術予定として(すでに)同時再建予定が1月と2月だけで5件入っています。

 

良性疾患 91件

・乳管腺葉区域切除 35件

・葉状腫瘍     22件

・その他      34件

 

○これ全て、私1人での執刀なので、(1人での数では)全国でも他には類を見ない数字です。

トピックスとして来年の秋?にも、江戸川病院で手術室が増設されます。

これにより(現状の手術待ちが、少しでも緩和され)、結果として私が掲げている年間(乳癌手術)400件に、いよいよ手が届きます。

 

○外来の待ち時間を減らすためにも、医師を募集しているのですが、この数字に腰が引けてしまうのか。なかなか来てくれません。

実際には現状、私一人(手術の時だけは、助手として医○歯○科大の医師に来てもらってはいますが)、で普通に(?)こなしているのだから何もビビらなくてもいいと思うのですが…

来年こそは、「プロフェッショナル」を目指す若者の登場に期待します。

 

 

◎12月17日(土曜日)に来たQ(4138「不安でたまりません」として本日、公開されました)

『血流があるのは、普段なら癌の所見といわれ、なにがなんだか分からず、不安』

このような不安を抱えている方が多いことに気付き、急遽「血流のある所見」について解説します。

 

人間の細胞は(腫瘍に限らず)血管から運ばれた血液から「栄養(ブドウ糖)と酸素」を供給されて活きています。

腫瘍は、盛んに増殖するために、より多くの血流が必要となるため結果として「腫瘍血管」が造成し、「血流が豊富」となるのです。

♯因みに血流よりもブドウ糖そのものに注目し、「取りこまれるブドウ糖を標識」してその「取りこまれる量」により「癌を検出」しているのがFDG-PET(18F-fluorodeoxyglucose – positron emission tomography)です。

 

○カラードップラーエコー

物体がプローブに「近づいてくる」「遠ざかっていく」ことを周波数の変化で捉え、それを画像化することで「血流」を可視化したものです。

 

解釈として、「より増殖の強い組織」は血流が豊富となり、「そうでない組織はそれなりに…」

♯昔のフジフィルムのコマーシャル(岸本加世子と樹木希林)を想い出します。(余談でした)

 

 

○血流の豊富な組織

1.癌

増殖するから癌なのですが、かといって大人しい癌では血流がそれほど豊富ではありません。

 

表面から血流が入っているのが良く解ります。

 

 

 

 

これは、かなり血流が豊富な様子が解ります。

 

 

 

 

比較的小さな腫瘤ですが、やはり血流がしっかりしています。

 

 

 

2.腫瘤非形成性病変

血流は一つの参考にはなりますが、時として乳腺症でも(特に乳頭付近では)あります。

 

多発小腫瘤

♯ これは癌でした。

 

 

 

 

3.肉芽腫性乳腺炎

これらは、不整形であり、血流も豊富なので、いかにも「癌」と間違われやすいものです。

 

 

肉芽腫性乳腺炎は、炎症の盛んな時期には、(癌と間違われやすいほどの)豊富な血流を示します。

 

 

 

4.線維腺腫~葉状腫瘍

血流により 線維腺腫<良性葉状腫瘍<境界悪性葉状腫瘍<悪性葉状腫瘍 と分けられたら「解り易く」ていいのですが、現実には…

線維腺腫

線維腺腫でも結構血流あります。

(向かって)右は葉状構造があるように見えましたが、(摘出標本で)線維腺腫でした。

 

 

良性葉状腫瘍

これは(摘出標本で)「良性」葉状腫瘍でしたが、ご覧のように、かなりの血流がありました。

 

 

 

境界悪性葉状腫瘍

これは、かなり大きな腫瘍で形状から「境界悪性以上」の葉状腫瘍が疑われますが、血流は(ご覧のように)あまり目立ちませんでした。

♯摘出標本では「境界悪性」でした。

 

 

悪性葉状腫瘍

これは、画面におさまらないくらい大きな腫瘍であり、臨床所見から「悪性葉状腫瘍」が疑われました。

♯手術標本も「悪性葉状腫瘍」です。

ただ、血流が「物凄い」というものではありません。

 

 

◎上記のように、

若年者の線維腺腫は結構血流ありますし、(血流だけで)「線維腺腫と葉状腫瘍」「葉状腫瘍のグレード」を分けることはできません。

冒頭でも示した様に、2016年だけでも(全麻での)葉状腫瘍が22件あったので実に様々な血流の葉状腫瘍を経験しました。