年末ムード
NHK大河ドラマも昨日で終わり、いよいよ「年末モード」一色です。
普段の仕事が嫌いでは無い(好き?)な私でも、年末が近づくことで感じる「特別感」に自然とワクワクします。
大学時代から年末年始と言えば「スキー」安比や北海道が定番だったのですが、その私が「温かい沖縄!」(東北の地から、東京へ転居して2年半、寒さに弱くなって…)
そんな年末を迎えて、この1年間をまとめてみました。
まずは2016年「全麻手術の内訳」です。(局麻での40件は除く)
○2016年(全麻)手術 386件(乳癌295件、良性91件)
乳癌 295件
・温存術 148件
・全摘術 137件
・同時再建 8件
・男性乳癌 2件
♯同時再建が枠の関係で2016年では極端に少なかったのですが、2017年の手術予定として(すでに)同時再建予定が1月と2月だけで5件入っています。
良性疾患 91件
・乳管腺葉区域切除 35件
・葉状腫瘍 22件
・その他 34件
○これ全て、私1人での執刀なので、(1人での数では)全国でも他には類を見ない数字です。
トピックスとして来年の秋?にも、江戸川病院で手術室が増設されます。
これにより(現状の手術待ちが、少しでも緩和され)、結果として私が掲げている年間(乳癌手術)400件に、いよいよ手が届きます。
○外来の待ち時間を減らすためにも、医師を募集しているのですが、この数字に腰が引けてしまうのか。なかなか来てくれません。
実際には現状、私一人(手術の時だけは、助手として医○歯○科大の医師に来てもらってはいますが)、で普通に(?)こなしているのだから何もビビらなくてもいいと思うのですが…
来年こそは、「プロフェッショナル」を目指す若者の登場に期待します。
◎12月17日(土曜日)に来たQ(4138「不安でたまりません」として本日、公開されました)
『血流があるのは、普段なら癌の所見といわれ、なにがなんだか分からず、不安』
このような不安を抱えている方が多いことに気付き、急遽「血流のある所見」について解説します。
人間の細胞は(腫瘍に限らず)血管から運ばれた血液から「栄養(ブドウ糖)と酸素」を供給されて活きています。
腫瘍は、盛んに増殖するために、より多くの血流が必要となるため結果として「腫瘍血管」が造成し、「血流が豊富」となるのです。
♯因みに血流よりもブドウ糖そのものに注目し、「取りこまれるブドウ糖を標識」してその「取りこまれる量」により「癌を検出」しているのがFDG-PET(18F-fluorodeoxyglucose – positron emission tomography)です。
○カラードップラーエコー
物体がプローブに「近づいてくる」「遠ざかっていく」ことを周波数の変化で捉え、それを画像化することで「血流」を可視化したものです。
解釈として、「より増殖の強い組織」は血流が豊富となり、「そうでない組織はそれなりに…」
♯昔のフジフィルムのコマーシャル(岸本加世子と樹木希林)を想い出します。(余談でした)
○血流の豊富な組織
1.癌
増殖するから癌なのですが、かといって大人しい癌では血流がそれほど豊富ではありません。
これは、かなり血流が豊富な様子が解ります。
2.腫瘤非形成性病変
血流は一つの参考にはなりますが、時として乳腺症でも(特に乳頭付近では)あります。
♯ これは癌でした。
3.肉芽腫性乳腺炎
これらは、不整形であり、血流も豊富なので、いかにも「癌」と間違われやすいものです。
肉芽腫性乳腺炎は、炎症の盛んな時期には、(癌と間違われやすいほどの)豊富な血流を示します。
4.線維腺腫~葉状腫瘍
血流により 線維腺腫<良性葉状腫瘍<境界悪性葉状腫瘍<悪性葉状腫瘍 と分けられたら「解り易く」ていいのですが、現実には…
線維腺腫
(向かって)右は葉状構造があるように見えましたが、(摘出標本で)線維腺腫でした。
良性葉状腫瘍
これは(摘出標本で)「良性」葉状腫瘍でしたが、ご覧のように、かなりの血流がありました。
境界悪性葉状腫瘍
これは、かなり大きな腫瘍で形状から「境界悪性以上」の葉状腫瘍が疑われますが、血流は(ご覧のように)あまり目立ちませんでした。
♯摘出標本では「境界悪性」でした。
悪性葉状腫瘍
これは、画面におさまらないくらい大きな腫瘍であり、臨床所見から「悪性葉状腫瘍」が疑われました。
♯手術標本も「悪性葉状腫瘍」です。
ただ、血流が「物凄い」というものではありません。
◎上記のように、
若年者の線維腺腫は結構血流ありますし、(血流だけで)「線維腺腫と葉状腫瘍」「葉状腫瘍のグレード」を分けることはできません。
冒頭でも示した様に、2016年だけでも(全麻での)葉状腫瘍が22件あったので実に様々な血流の葉状腫瘍を経験しました。