行くたびに思うのは、「女性が多い」ことです。
前身である「乳癌研究会」から1992年に「日本乳癌学会」の設立。
2003新潟で開催された時には、(当時は、東北大学乳腺外科に所属してた私は)みんなで「佐渡」へ渡りレンタカーを借りて「佐渡観光」しました。
当時は、学会員も少なく女性医師は殆ど居ませんでした。
あの当時を思い出すたびに、「学会の規模の増大」「過密日程」が奇妙に感じられます。
「乳癌患者さんの数」や「世間の関心」は(当時、想像できないくらいに)大きくなり、(それに伴い)学会員の数(特に女性医師)は驚異的に増加していますが、それに反比例するかのように「その質の低下」を感じます。
○新しい薬剤(抗癌剤)が、どんどん開発され選択肢が広がるなかで薬物療法ばかりに頭でっかちとなり、「外科としての技術」が失われつつあるのを感じます。
「乳腺内科」と称して「私は抗ガン剤はしますが、手術はしません」みたいな人達もでてきていますが、「一般外科から乳腺外科へ道を広げていった(本来は)外科医である我々の世代」からすると(乳癌診療に占める)「手術の精度が落ちている」ことに危惧します。
◎乳癌診療のいいところは「診断」から「治療(手術⇒術後薬物療法)」まで一貫して診る事だと思っています。
♯例を出すと、「消化器外科」は「(消化器)内科で診断」し、「外科で手術だけ」して、(そして術後化学療法が必要な際には)「腫瘍内科へ紹介」のように「外科の世界で診断と治療を一貫することは、珍しいことなのです。
その乳腺外科特有の「美点」である、「最初(診断)~最後(術後の経過観察)まで一貫して一人の主治医が担当」するという伝統が崩れ去ろうとしているのです。
大病院での「チーム医療」という名のもとに、「最初から最後まで一貫して一人の乳腺外科医が診療する」機会が大幅に失われています。
かつてのQandAでありましたが、
「この沢山の(チームの)医師の中で(一体)誰が、私の執刀をしたのですか?」
と、聞いても
「それは、教えられません。あくまでもチームで手術をしたのです。術後は、このチームの中の(誰か)医師に診てもらうことになります」
大病院での診療(誰が本当に自分の診療に責任を持っているのか解らない)に、「その医師の数や設備の大きさ」に安心感を得る人がいる事は知っています。
それらの大病院は「(若い医師達の)教育機関」としての役目が大きいので、(その様な病院で医療を受けることは)「医師教育に貢献していただいている」という意味では(医療界としては)感謝すべきことです。
今回、学会に参加し、その女性医師の多い事に圧倒されながらも、
乳腺外科の本来持っている美点を守り続ける事こそ『私の使命』と改めて意を強くしました。
さて、前回の続きです。
「組織診断は100%確定診断」でなくてはいけません。
「針生検では良性だけど、形が気になるから3カ月後ね」と言う様な医師がいるようですが…(患者さんには大変気の毒なことだと思います)
『形が気になるから、(確定診断のための)針生検』の筈です。
★重要なことは
①100%確実に「思った通りの組織採取」ができる精度を身につけること
②対象病変に対して適切な選択をすること
組織診には4通りあります。
1.バネ式針生検
2.(超音波ガイド)マンモトーム生検
3.(スレレオガイド)マンモトーム生検
4.外科的生検
○石灰化の場合
3を選択⇒(もしも判定困難となった場合には)4を選択
○均質な病変
1を選択
○不均質な病変、広範囲の病変
2を選択(このケースでは4が必要となることはほぼ無いです)
○嚢胞内腫瘍
4を選択(1や2でも診断可能だが、それらでは病変が散らばる可能性があるため)
まずは基本的な内容から
◆「バネ式」針生検
針を刺して「バネの力で型抜き」することです。
クッキーを星型にくり抜くイメージです。
もっと、近いのは地層調査での「ボーリング検査」です。
「バチーン」と一瞬にして、「打ち抜く」のです。
ただし、「針の太さ」しか「打ち抜けない」ので、組織量はそれ程多くはありません。
(1本だけでは組織量が少ないので4本くらいは通常採取します)
◆マンモトーム生検
針に「大きな窓」が空いています。
吸引圧をかけて「その窓から周囲の組織を引っ張り込み」それをカットします。
つまりマンモトームとは「吸引式針生検」のことなのです。
針を回転させ「周囲360度の組織を取れる」ので採取できる組織量は膨大です。
種類
(マンモグラフィーで見える石灰化を狙う)「ステレオガイド下マンモトーム生検」
(超音波でみえるシコリを狙う)「超音波ガイド下マンモトーム生検」
注)バネ式針生検とマンモトーム生検の違い(イメージ図)
図の上でクリックすると「文字が読み取れ」ます。
下段(均一な腫瘤)では「バネ式でも診断は十分」ですが、
上段(腫瘤非形成性病変)では「バネ式では不十分」であることが解ります。
◆外科的生検
メスで切開して病変を摘出します。
最も確実ですが、最も侵襲が高い検査です(局麻下の手術という位置づけ)
大体基本的なことは以上です。
次回は、具体的に「何故、これらの手技の精度に差がでるのか?」お話します。