こんにちは。田澤です。
今年は全国的に雪が少ないようですね。
ここ、東京は冬に天気が良くてめったに雪が降らない。快適です。
ただ、私が長年住んでいた仙台には「雪が降る」かわりに「冬の楽しみ」がありました。
それは「スキー」です。
「スプリングバレー」仙台市にあるスキー場で、大学生当時は部活が終わって「ナイター行こうぜ」みたいに気軽に行ける場所でした。車で30分程度で行けるのですから。
ただ、「雪道の怖さ」を教えてくれたのも、この山でしたが…(当時、スタッドレスタイヤも出始めで、今ほど性能は良くなかったのです。
大学時代はお金が無かったので(高速代やガソリン代のかからない)「近場のスキー場」が多かったのですが、医師になってからは殆どが「安比高原」となりました。
『パウダースノーとダイナミックなコブ斜面』そこには、「高速料金と数時間の運転」を費やしてもなお、引き寄せられる大変な魅力があったのです。
そんな「安比帰り」は、当時カーラジオは聞かずに専ら「カーステレオ」でした。
「BOOWY」「B’s」そして当時全盛を誇っていた小室ファミリー(globe, trf, etc. )懐かしいですね。あと、「それが大事」とかね。
そんな「安比高原」からの高速道路の帰り途偶然、聞いたのが、「NISSANあ、安部礼司~beyond the average~」でした。
現在10年目を迎えた人気ラジオドラマ「あ、安部礼司」ですが、(普段はカーステレオしか聞かない筈の当時の私が)たまたま初回を聞いたのです。
今でも「鮮烈に」覚えています。
初回は「おすぎのファッションチェック」でした。我らが主人公「阿部礼司」が「おすぎ」のチェックに曝されます。
(正確ではありませんが…)「まー、前から来る男。平均的なサラリーマンね… あのファッションたら。 きっと彼女いないのよ。」みたいな。
あれから10年余り…
この鮮烈な「FMとの出会い」が(その後の)私の「FM好き」に大いに影響を与えることとなったのです。
と、まあ以前「FM」についてお話した際に、肝心な(私の)「FMの原点」について抜けていた事が気になっていたので、つい長々と書いてしまいました。
40歳代半ば~後半の「ご主人」を持つ方は、聞いてみるといいですよ。
さて、そろそろ本題です。
○センチネルリンパ節
いざ、手術をする際には必ず「人ごとでは無くなる」言葉です。
いったい「センチネルリンパ節とは何?」
「センチネルリンパ節生検」と「腋窩郭清」。
他に良く聞く「腋窩リンパ節」とか「レベル1」「レベル2」「レベル3」とは、どう違うの?
これらの疑問に答えましょう。
①まずは「リンパ管」と「リンパ節」について
江戸時代で言えば、「リンパ管」は「街道」に「リンパ節」はよく「関所」に例えられます。
「癌」から「リンパ管」という「街道」をはるばる通って「癌細胞」が流れてきます。
『最初に到達する関所=リンパ節がセンチネルリンパ節』です。
まず、この関所を通過しない限り、次の「関所」には到達できないのです。
②リンパ節の「名前」について
「街道」には「方向」がありますね。
例えば「東海道」で言えば、『日本橋』から出発し最初の関所が『品川』そして「川崎」「神奈川」「保土ヶ谷」「戸塚」「藤沢」「平塚」「大磯」そして『小田原』、『箱根』… 最後は「京都三条」まで到達する長い旅です。
「腫瘍(しこり)」が『日本橋』だとすると、最初の関所である『品川』が「センチネルリンパ節」です。
♯ここで、しばしば「センチネルリンパ節を4個あるいは5個!摘出している施設」がありますが…本来は1個です。
これは、本物の「センチネルリンパ節」である『品川』以外に、そのまま「川崎」「神奈川」「保土ヶ谷」「戸塚」あたりまで、「摘出して、全てセンチネルリンパ節」と称しているにすぎません。
何故、このように「品川」より先のリンパ節まで「センチネルリンパ節」と称している施設が多いのか?
それは「本物のセンチネルリンパ節」に確信が無いのでしょう。
○最初に「センチネルリンパ節」として摘出したリンパ節が、「もしかして(品川を見失い)川崎なのでは?」と疑心暗鬼となった場合、「品川~戸塚」あたりまで「取れば、どこかに(真のセンチネルリンパ節である)品川が入っている筈」と、ようやく安心できるのでしょう。
○本来は「最初の関所である品川=(真の)センチネルリンパ節」があり、(その関所を通過すると)そこから「川崎」「神奈川」「保土ヶ谷」…と到達し『小田原』『箱根』へと流れてきます。
人間の体でいうと「最初に、(腋窩筋膜を破り)到達するリンパ節=(真の)センチネルリンパ節」があり、(その先に)リンパ節(レベル1と称される)に流れ、(小胸筋の外側の膜を破り)「レベル2と名前を替え」さらに(小胸筋の内膜を破り)「レベル3」となるのです。
そこから、(鎖骨を超え)「鎖骨上リンパ節⇒頚部リンパ節」へと全身を巡る旅にでるのです。
「レベル1」とは「腋窩筋膜を破り(最初のリンパ節であるセンチネルリンパ節も含み)小胸筋外側の膜までの範囲」のリンパ節を称し、『センチネルリンパ節も(当然)レベル1のうちの一つ』なのです。
「レベル2」は「小胸筋外側の膜から小胸筋内側の膜までの範囲」のリンパ節であり、
「レベル3」は「小胸筋内側の膜より内側の範囲」のリンパ節です。
♯東海道でいうと
「レベル1」は(センチネルリンパ節である品川も含み)「大磯」まで、
「レベル2」は『小田原』
「レベル3」は『箱根』となります。
その後「鎖骨上リンパ節である、「三島」そして「頚部リンパ節」である「沼津」「原」「吉原」へと連続していくのです。
③「郭清の名称」について
「センチネルリンパ節生検」…
(このうち)『品川』だけを摘出して(術中迅速として)調べることです。
「品川に癌細胞が無かった」場合には、(それより奥に到達しているわけがない」として、「そこで終了」となります。
逆に、その品川に「癌細胞があった」場合には「追加郭清」として「大磯まで(レベル1郭清)」もしくは『小田原まで(レベル2郭清)』まで摘出するのです。(どこまで追加郭清するのかは、術前画像診断を参考として決めます)
♯このように「センチネルリンパ節生検」は、(転移が無く)「それだけで終了」する場合と、(転移が見つかり)次に述べる「腋窩郭清と(結局)同じ事をする」場合の2通りがあるのです。
「腋窩郭清」…
(「品川」を調べる事無く)最初から「大磯まで(レベル1郭清)」もしくは『小田原まで(レベル2郭清)』まで摘出するのです。(どこまで追加郭清するのかは、センチネルリンパ節生検で陽性であった場合と同様、術前画像診断を参考として決めます)
「腋窩鎖骨下郭清」…
これも(「品川」を調べる事無く)最初から「箱根(レベルⅢ郭清)」まで郭清することです。
通常、(画像所見で明らかに箱根=レベル3まで転移が疑われる場合)行われます。
④「患肢浮腫(腕の浮腫み)」に関して
これは、かなり誤解されて理解されているようです(時には乳腺外科医でさえ)
「腕が浮腫む原因」は何でしょう?
それは「腕からのリンパの流れ」が障害されることによります。
「乳癌のリンパの流れ」は「レベルⅠ⇒Ⅱ⇒Ⅲ」に対し「腕からのリンパの流れ」は『レベルⅠの奥(背側)から(そのまま)大血管に入る』流れです。
つまり『レベルⅡもⅢも無関係』なのです。
よく「レベルⅢまで郭清したから浮腫む」と耳にしますが、「大変な勘違い」です。
「レベルⅠの奥(背側)をどこまで損傷するか?」が「腕の浮腫み」との関係するところです。
いかに「レベルⅠの奥(背側)を損傷せずに」郭清するのかが、「患肢浮腫を起こさない鍵」なのです。
○ただ、「レベルⅢまで郭清しなくてはならない状況ではレベル1のリンパ節自体が、奥にまで達している場合」もしばしばあり、この場合には「リンパ節を摘出する=(腕からの)リンパの流れを損傷する」ことになるので、どうしても「レベルⅢまで郭清するケースでは浮腫み易い」傾向にあります。
★逆に言えば、(例えレベルⅢまで郭清しなくてもならない状況でも)必ず浮腫を起こす訳ではなく「レベル1のリンパ節自体が(直接)腕からのリンパの流れを損傷しない限り」精度の高い手技を行えば「浮腫は通常起こらない」のです。
研修医や(精度の低い)医師が手術をすると『リンパ節転移が大した事がないのに、患肢浮腫が出現するケース』があります。
それは、「レベル1の郭清時に、(どこまで取っていいか解らずに)レベル1の奥(背側)まで損傷してしまうから」なのです。
- お解りでしょうか?
リンパ浮腫は(レベルⅠリンパ節自体が奥のリンパ管を障害していない限り)防げるのです。
ただし、それには『高い精度』の手術手技が重要となってきます。
「リンパ浮腫は一生ついて回る問題」となりえます。
私が「大学病院での手術を勧めない理由」はそこにあります。
それらの医師らが行う手術では『根治性よりも、むしろリンパ浮腫がらみの合併症こそ心配』なのです。