皆さん、こんにちは。
9月6日、江戸川区、総合文化センターで開催されたセミナーに大変多数の方に参加いただき誠にありがとうございました。
セミナーは2部構成となっており、第2部の「大腸がん」については腫瘍内科の大澤先生に御講演いただきました。
当日、ご参加いただけなかった方々のために、
このブログでは、第1部の「早期で克服!乳がん」の内容を振り返ります。
・「癌全体」及び「乳がん」の動向
30年前と比較して「癌全体の罹患数」は3倍に、「乳がん罹患数」は5倍となってます。
30年前と言えば、「甲子園を沸かせた清原桑田のKKコンビ」や「芸能界を席巻した
チェッカーズ」の頃です。つい、この間ですよね?
・乳癌検診の有用性
「マンモグラフィー併用検診」を受けて発見された乳癌は80%が早期(0-1期)発見
「検診ではなく」発見された乳癌は70%以上が2期以降で発見されています。
・早期発見で乳癌は助かります。
乳癌の5年生存率は2期でも90%あり、1期では実に95%以上となります。
●乳癌全体でみても、6人に5人は助かる(乳癌では亡くならない)のですが、更に早期
発見となると、上記数値となります。
・東京都、江戸川区での現状
東京では乳癌死亡が全国平均より高い(標準化死亡比で120以上)
●これは、東京では出生率が非常に低値である(合計特殊出生率で東京1.09, 全国1.41)
であることが要因と思います。
江戸川区での乳癌検診受診率は7.3%と東京23区内で最低の低さです。
◎江戸川区では、乳癌リスクが高い(出生率が低いことが要因)上、乳癌検診受診率も
低いという、「大変、危機的な状況にある」と、言えます。
・検診内容
検診では、「視触診」「超音波」「マンモグラフィー」の3項目があります。
講演内容では、「検診ではマンモグラフィーの有用性」は証明されているが、
「超音波併用検診」の有用性は証明されてはおらず、現在(厚生労働省指定研究である)JSTARTが進行中であることもお話ししました。
・石灰化
マンモグラフィー検診で、多くの方が所見として目にする石灰化について重点的にお話ししました。
●石灰化は、乳癌が発生して「しこり」になる前にでてくる「癌の存在の手掛かり」であることがあり、①石灰化の出現⇒②石灰化の増加⇒③浸潤⇒④「しこり」の出現
の過程の中で、より早期(①や②)で発見(早期発見)することが望ましい。
●石灰化を①や②の時期に検査する究極の早期発見検査が
「ステレオガイド下マンモトーム生検」です。
◎ステレオガイド下マンモトーム生検の成績(私が過去8年の間に行った1084症例)に
ついても紹介しました。
3割程度で癌が見つかること、究極の早期発見(90%以上で0期)である事など
当院でも、9月より「ステレオガイド下マンモトーム生検」を開始しておりますので、
「検診を受けて、石灰化があると言われた」とか、他院で石灰化フォロー中だが、
「明確な説明が無く、不安」などの方は、是非一度受診してください。
・乳癌の原因
大部分(90%以上)が「非遺伝性」であり、内分泌環境(少子・晩婚化及び体格の向上
による早期初経と晩期閉経による高エストロゲン状態の継続)が乳癌発生急増
(30年間で5倍!!)の主たる原因と思われます。
一部の遺伝性の原因の多くはBRCA1/2の遺伝子変異である(HBOC)や予防的手術
についてもお話ししました。
・その他
医療被曝(マンモグラフィーは0.1mSv/回で年間の自然放射線量1.4mSvと比較して無視
できるレベルであるが、CTやPETは10mSv/回であり、注意が必要)や食事(閉経後の
脂肪摂取や肥満には気をつける/大豆やイソフラボンは適量がいい)についてもお話し
しました。
◎まとめ
今回は、時間の関係もあり(治療についてはお話ししませんでしたが)「まとめ」として、
「乳がんの今後の全体像」について総括しました。
乳癌の治療=「局所療法」+「全診療報」であり、
「局所療法」 現時点で手術に勝るものは無い。
「全身療報」 現在は「内分泌療法」「化学療法」などが主体で、ここに「分子標的薬」
がようやく加わった状況であるが、将来的には「分子標的薬」主体となるでしょう。
「分子量的薬」の時代は、癌治療の一つのゴールである「オーダーメイド治療」を意味
します。
次回の講演の機会には、是非「乳がんの治療」としてお話しをしたいと思っています。