本日は「新規治療」という言葉の持つ誤解についてお話します。
「新規治療」=「従来のものより素晴らしい治療」なのでしょうか?
いいえ、誤解です。
もちろん、中には優れた治療もあるでしょう。
ただ、新しいだけでは、優れているとは言えないのです。言葉の魔力です。
「新規治療」が優れているのかを確かめるためには「臨床試験」として患者さんに「試してみる」しかないのです。
●もちろん、「その治療が自分の好みに合うから試してみたい」とか「治療の進歩に少しでも貢献できるなら、協力したい」という明確な意思があるのならそのような施設(大学病院や有名大病院がその役割を担っています)で治療されるのもいいかもしれません。
ただ「新しいのだから効くのだろう」とか「新しい治療を宣伝しているなら、何となく安心」などの理由で、そのような治療を希望するならばそれは誤りです。
●乳癌治療でいうなら、局所療法の分野では「手術以外の局所療法」、放射線の領域では「加速乳房部分照射」があります。
これらは、いずれも臨床試験の段階であり、有効性・安全性などが明らかとなってはいません。
特に「手術以外の局所療法」であるRFA(ラジオ波熱凝固療法)については、再発する患者が増えてきたとして
2010.6月に日本乳癌学会から「RFAは臨床試験以外では行わないように」という注意喚起がでています。
◎新しい治療、しかも「切らずに済む治療」なんていう言葉が躍ると興味が湧くのも解ります。
ただ「乳癌」は、その初期治療が重要です。せっかく早期発見されても、誤った治療を選択されれば助かるものも、助かりません。
癌を甘くみてはいけません。最新の知識を理解しながら、標準治療(きちんと有効性・安全性が証明されている最新の治療)を確かな技術で行うべき、という信念を持って私は診療しています。