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Aさん術後3部作 第2部 放射線療法編

メディカル江戸川

 

舞台は、前作・第1部の続き

~T医師から、内分泌療法について説明を受けた場面の続き~

 

T医師、(Aさんと夫Bさんのお二人を見ながら)

「次は放射線の話をしますね。」

Aさん

「はい。術前から温存手術の場合は必ずやる。」と言われたことを覚えています。

夫Bさん、T医師の方を真っすぐ見ながら、

「先生から、乳腺を全摘出する替わりに乳腺を部分摘出し残りの乳腺に放射線をかける。確かそのように言われた記憶があります。それでいいですか?」

T医師、お二人を見まわしながら、

「お二人とも完璧ですね。そういうことです。もともと乳癌の手術が乳房(全)切除⇒乳房温存への流れを作ったのは術後放射線のおかげなのです。」

夫Bさん

「純粋に乳房にまた出てこない事だけが目的なのですか?」

T医師

「おっしゃるように、もともと残した乳腺内への再発(これを乳房内再発といいます)を抑性する目的なのですが、実際には局所再発(乳房内再発+リンパ節再発)の低減効果だけではなく死亡率低減効果もあります。」注1)

夫Bさん

「えっ! 凄いお得ですね。一粒で二度美味しい って感じですね(笑) よかったな。A子」

 

アーモンドグリコ夫Bさんは、Aさんがリラックスできるようにおどけて見せます。

Aさん、夫Bさんを見ながら、

「あなたったら、もう。一粒で二度美味しいなんて、グリコじゃないんだから。」

 

 

そしてT医師に向き直り、

「効果があることは解りました。それでは副作用はどんな事がありますか?先ほど、放射線は局所療法だから具合が悪くなったり、脱毛は無いとは聞きましたけれど…」

T医師

「その通りです、放射線は局所療法なので効果も副作用もかけた部位(局所)のみに現れます。という事で一番多いのは放射線皮膚炎です。その他には、放射線肺臓炎も以前はありましたが最近の照射技術向上によりほとんど見られなくなりました。特に、当院ではトモセラピーで照射を行っているので、より安心です。」

夫Bさん

「トモセラピーって何ですか?通常の放射線装置とどう違うのですか?」

T医師

「トモセラピーはIMRT intensity-modulated radiation rherapy:強度変調放射線治療と

IGRT image-guided radiation therapy:画像誘導放射線治療を組み合わせて照射線量を

制御する技術で、イメージとしては“狙ったところだけに、かけたいだけ照射をする”

という夢のような照射技術です。」

夫Bさん

「E病院では、そんな凄い放射線治療がしていただけるのですか。つくづくここで治療していただいて幸運です。」

Aさん

「そうよね。ありがとうございます。」

T医師

「それでは、放射線科のH医師に紹介状を書いていますので、えーと来週の水曜日の11時に受診してください。」

Aさん

「その日から、放射線治療が始まるのですか?」

T医師

「その日からではありません。その日はH医師の診察があって、具体的な日程を決める事になります。照射は早ければ次の週位から開始することになると思います。」

夫Bさん

「回数は決まっていますか?」

T医師

「回数に関しては温存乳房に25回、そのあとに腫瘍のもと存在した部位(腫瘍床という)に更に5回(Boost照射と言います)、併せて30回行っています。25回だけで終了する施設もありますが、当院では腫瘍床へのBoost照射が重要と考えています。」注2)

Aさん

「週にどの位の頻度なのですか? 風邪をひいたりしたときには御休みできますか?」

T医師

「月~金:連続です。なので期間は6週間となります。放射線照射は連続で行った方が効果的と考えられています。また、体調が悪かったり都合がつかない時にお休みするのは構わないですよ。」

夫Bさん

「解りました。ご丁寧に説明してもらいありがとうございます。」

Aさんの方へ顔を向け、

「A子、C太とD美の為にも頑張らなくちゃね。俺も協力するかな。」

Aさん

「ありがとう。頑張るわ。D美のお嫁に行く姿を見られるまでは長生きしなくちゃね。」

T医師(微笑みながら)

「大丈夫ですよ。Aさんは早期発見だから心配ありませんよ」

夫Bさん

「本当に、早期発見ありがとうございます。助かりました。それと診断から治療まで一貫して先生が診てくれて凄く安心できました。」

Aさん

「そうよね。診断する先生と、治療する先生が違うなんて話を良く聞くけど… ちょっと怖いわ。」

T医師

「大学病院とか、都内の有名大病院など医師が沢山いるようなところでは、診断と手術と術後治療の担当医師、全てがバラバラなんてことはザラです。そのような処ではどうしても患者さんに対する責任感が希薄となってしまいます。一人の医師が一人の患者さんに対して責任を持って診断して手術をして、術後治療もする。これこそが最善の医療だと思っています。」

「あっ、つい自論を展開して熱く語ってしまいました。実情を知っているだけに、名前だけで大学病院とか都内の有名病院で診療を希望される方がいるのをいつも不憫に思っているもので。すみません。」

夫Bさん

「先生のおっしゃることは身にしみています。今後もよろしくお願いします。」

 

 

注1) 温存乳房照射の効果

温存乳房照射●局所再発率だけでなく、死亡率低減効果も証明された。

 

 

 

 

 

 

注2)Boost照射の効果

Boost照射-2

 

 

 

 

 

これでAさん術後3部作

第2部 「Aさん治療方針の説明を受ける(放射線療法編)」を終わります。

ついに、次回は最終章です。

来年そうそうには公開予定です。

皆様、今年はありがとうございました。