最近、暖かいので屋上に出てみました。
が… 意外と寒くて、せっかくのスタミナ飯もみるみる冷めてきたので、10分後には撤退。
○ 本文
前回のコラムで、(細胞診を含む)生検手技の重要性(と言うか、あまりにも悲惨な現状)について記載しましたが…
今回は、その「大本」とも言える「エコー」についてです。
ある日の外来
腋窩をエコーで見ていましたが(腋窩は通常は数秒もかからずに終わります)、『んっつ?』
微妙(というか、微小というか)な所見だけど気になる。
皆さん、パッと見 解りますか?
この赤く囲った部分です。
エコー操作の流れのなかだと、どうかな?
僅か4mmの所見、だけど (そこに「何かありそう?」と思いながらターゲットを絞って角度を変えてみていくと「ジワジワ」怪しげに見えてきます)
『腋窩リンパ節(転移)の可能性あります。』
『小さいから(ホルモン療法のために3か月毎に通院しているから)次回3か月後経過観察もできますけど、決着つけては如何でしょうか?』
と、いうことでCELEROの結果は「浸潤性乳管癌、つまりリンパ節転移」でした。
腋窩の深い部位で(このリンパ節の裏は、広背筋です)標的が小さく、巷では決して生検しないのだろうけど、私は普通にしてしまいます。
★やはり、この姿勢こそが「経験数」を蓄積させるわけです。
「出来る訳がない」などと諦めている医師達には到底かなわない夢というところでしょうか?
この症例は実際手術しましたが、術前エコーでは「殆ど検出できず」
つまりCELEROで削られた位で見えなくなってしまう位小さいのです。
実際、完全に郭清しましたが(術中所見でも)見た目では不明で触ると「僅かに芯の硬さ」程度でした。
何が言いたいのか?
エコーの重要性です。
もしも、検査技師さんのエコーだったら…
(失礼ですが)見逃していたでしょうし、
当然ながら、(自分自身でエコーせずに)技師エコー任せの医師には(この小ささで生検ができるのか?という以前の問題で)発見さえもできないでしょう。
そう、それが現実なのです。
正常リンパ節
中央で2つのリンパ節を測定しているのが解りますか?
これは、技師の行ったエコーです。
こんな正常なリンパ節を測定して何の意味がある?(そして少しでも大きいと所見に「リンパ節腫大」などと記載してくる)
正常リンパ節が腫大していても、そんなもの指摘して何の意味がある?
正常リンパ節の測定など「無用の長物」
○ 正常リンパ節を指摘する無意味さの解りやすい例として反応性腫大をお示ししましょう。
通常、こんな時期(術後早期)にPETを撮影することはないのですが、患者さんが希望されたので撮影したのです。
すると、腋窩に取り込みが…
放射線医の読影コメントには「腋窩リンパ節転移疑い」と…
それでエコーしました。
流石に術後だけあって、結構腫大していました。
3cmと結構大きいですが、明らかに2層性(外側の皮質のlowと内部の髄質のhighのコントラスト)があるので反応性腫大と解ります。
ただ、PET読影所見で「転移疑い」とある以上、患者さんを納得させるためにCELEROしました。結果は勿論 no malignancy「反応性腫大」
↑
もしも、このエコーを技師さんがやっていたら「どういう所見コメント」となっていたか…
まず間違いなく「腋窩リンパ節腫大 転移の可能性があります」となるでしょう。
★ ある確定診断希望メール
診察時に「是非、コラムで紹介してください」と確認したのでご紹介します。
■現在の症状
ステージ1の乳がん標準治療後の左鎖骨下リンパ節しこりについて。
昨日(2/7)術後半年検診で技師さんにより、エコーにて1センチのしこり(左鎖骨下リンパ節内)を指摘されました。
担当医はエコー画像で白黒付けられず、加えて下に血管があるので針生検が出来ないと言われ、1か月様子を診て、CTを撮るそうです。標準治療が終わったところでのまさかの指摘で大変不安で夜も眠れません。
つきましては、田澤先生にご判断頂きたくメールいたしました。
患者さんは(当然のことながら)大層心配のご様子だったので、結構早めに診察の案内をしました。
『鎖骨下リンパ節に転移の疑いがあるのかな? エコー像で明らかなら(そのまま)手術でもいいし、微妙ならCELEROかな?』
そう思いながら、エコーしましたが…
明らかな正常リンパ節です。
これを「転移疑い」として所見報告した技師さんも技師さんだけど、それを鵜呑みにして「自分でエコーもせずに、エコー画像では白黒できない」などという、その担当医!
そうやって「自分自身でエコーしなければ」いつまで経っても問題は解決しないぞ!(と、直接電話でもしたかった)
患者さんには丁寧に図に記載して(1か月後に受診する予定となっている)その担当医の診察時に持参して「見せてあげる」ようにお渡ししました。
★この一連の出来事が、(たまたま極めて短期間の間に)起こったのでエコーについて改めて考えさせられたわけです。
完璧な治療をするためには、(自分自身で行う)エコーこそ重要なり。