○ 序章
このコラムが目指すところ
1.「石灰化」について知りたい人の疑問を「最大限」網羅しうる
具体的に言うと、『先日、検診を受けたら「石灰化、G(要精査)」となっていました。 だけど、私の母親は「石灰化、B(1年後検診)」となってます。何故「石灰化」なのに検診結果(対応)が違うの?』みたいな、(石灰化的には)初歩的な疑問を持つ人がQをしてきたときに、私が『是非、今週のコラム 292回目 石灰化をご一読ください(そこに全部書いてあります)』と、言えるように。
2.「石灰化」動画に向けて
先日挙げた動画『早期発見と早期診断』でのご指摘
1.長い
2.内容にインパクトがない(とほほ…)
上記について考えていました。
「何でもかんでも、言いたいことを全て詰め込もう!」的に、(悲しいかな、どうしても)なってしまう。(それも原因のひとつ)
その「何でもかんでも」という部分を、ここ(コラム)で吐き出し、動画では(その内容の中で)エッセンスを抽出する(ここも難しいとは思いますが…)という事かな? と考えました。
★ 今回のコラムを(one teamの皆さんをはじめ、動画に興味のある方々に)読んでいただき、その中で『この部分をこのように動画にすると、いいと思うよ』というご意見を是非お願いしたい。
その意見を参考にして、動画のスライドを作成するという手順にしたいと思うのです。
○ 本編に入る前に
「ふーちゃん」さんからの、以下のご意見。「なるほど。」
やはり、患者さん側からの意見は「患者さんや、患者さん予備軍?の方達が何を知りたいのか?」という(私が微妙に気付いていなかった)視点に気付かされます。
今回、具体的に参考にさせてもらいます。
(以下、抜粋)
石灰化=ガン(or予備軍)みたいに思っている人も少なくないと思いますので、まずはその誤解を解くことと、
また、ガンと診断されたものにはどんなケースがあるのか、など具体的なものがあると理解しやすいのかな…と思います。
「エコーに写ってないからorMRIに写ってないから経過観察」はNG。
ST-MMT(←そもそも”クリニック”レベルでは持っていないので紹介状となるケースが多い)を使いこなせていない(or消極的な)医療機関も少なからずあるという実情も。
○ 本編
石灰化
石灰化とは「カルシウムの沈着」です。(まず「石灰化がある」=癌?という誤った発想を捨ててください)
(乳腺に起こる)石灰化は「様々な」原因があります。
○ 原因
1.分泌型石灰化
その大部分は、「乳腺症 ♯」が原因であり乳癌とは無関係です。(石灰化の99%は癌とは無関係)
♯ 乳腺症 ホルモン環境の変化(卵巣機能が衰え始める)により乳管が増生したり詰まったりする。
乳管が詰まると、分泌液がうっ滞しカルシウムが沈着しやすくなる
「乳癌が原因」でも、(頻度は乳腺症と比較して「極めて」低頻度ですが)起こります。
分泌型石灰化の原因として 乳腺症:乳癌=99:1
2.間質型石灰化
代表的なものは「線維腺腫 ♯」の中にでき、乳癌とは無関係です。
♯ 線維腺腫 ホルモン分泌の多い時期(若年)に発生し、閉経まで成長(増大)するが、閉経すると退縮する。
乳管の中とは異なり(間質は)「スペースに制限が無いため」大きな石灰化(粗大石灰化と表現する)となりやすい。
マンモで粗大石灰化(間質型石灰化)を見た際に(専門医なら)「良性です」と100%断言できます。
間質型石灰化の原因として (線維腺腫など)良性:乳癌=100:0 (乳癌が原因で間質型石灰化は起こりません)
3.壊死型石灰化
癌細胞が乳管内に増殖して、壊死を起こし、(壊死した癌細胞に起こる)石灰化のことです。
乳管の中で急激に増殖するため(栄養血管が追いつかず)壊死を起こすとイメージしてください。
壊死型石灰化の原因として 良性:癌=0:100 (壊死型石灰化は「癌一択」なのです。)
○ イメージ
例えば乳腺症では「分泌型」石灰化がよくおこりますが、(乳腺症に伴って)「乳管が詰まって液体が貯留=嚢胞」に起こる石灰化は「石灰乳」石灰化と呼ばれます。
石灰乳石灰化の実例
通常の分泌型石灰化とは異なり、(間質型のように)「粗大」となりがちなので「明らかに良性」と判断できます。
ここから癌(が原因で起こる)石灰化の代表である「壊死型石灰化について」お話しします。
○ 壊死型石灰化の成り立ち
乳管の壁を構成する「乳管細胞が癌化」
↓
その「癌細胞」が乳管内に増殖し充満
↓
中央の癌細胞が(栄養不足で)壊死
↓
壊死した癌細胞にカルシウムが沈着して「乳管内に壊死型石灰化」ができる
○ 壊死型石灰化の増加とマンモグラフィー
・正常乳管
正常乳管
勿論マンモ(右)に異常無し
・石灰化の発生
石灰化の発生
石灰化が1個出現
この段階では要精査にはなりません。
・石灰化の増加
石灰化の増加
石灰化が(狭い範囲に)3個出現
ここで「石灰化要精査(Ⅲ)」となります。
★この段階では勿論「エコー」でも「MRI]にも写りません
究極の「早期発見」のチャンスと言えます。
○ 石灰化1 のまとめ
この章のメインは乳腺には、実に様々な原因で石灰化が起こること。
「石灰化があるって言われた≠癌の疑い」ということ(石灰化の原因の99%以上は乳癌以外)
それでは、「マンモグラフィー所見」として、どのような場合に「要精査(カテゴリーⅢ以上)」となるの?
①分泌型石灰化の中で「狭い範囲に複数(集簇性が強いという)の石灰化」があるもの
②壊死型石灰化
と、なります。
逆に言うと…
③間質型石灰化や④(分泌型石灰化の中でも)「広範囲のもの」や「集簇性が弱い(まばら)」
は、検診結果に「石灰化」の文言はあるけど要精査にはならないんだね?
その通り。
③の場合には検診結果に「石灰化(良性)」と記載してあることも多く、
④の場合には検診結果に「石灰化(1年後経過観察)」となっていることも多いよ。
◎ 予告
「石灰化」は3章くらいにしようと考えています。
次回以降のテーマとして
「石灰化と癌の拡がり」について
・「早期乳癌=広がりが狭い」という誤解を解く
・「突然大きなしこり」の原因のひとつとしての石灰化(を伴う非浸潤癌)
「ST-MMT]について
・積極的に行うか? (安易に)経過観察とするのか? 何故医師によって判断が異なる?
・何故、「薄いから取れない」「奥だから取れない」と言われるのか?
・実例(他院で「取れない」といわれたもの)